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2016-07-04

【ほぼ毎】トリンケーロ、ステーファノ レニャーニ (2016年7月)

Trinchero

『ほぼ毎月つくり手紹介』7月は、5月より弊社直営店“da Dada”からヴィナイオータに転属となりました石橋が担当します。すでにお目にかかっている方もはじめましての方も、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

7月はピエモンテ州の「トリンケーロ」と、リグーリア州の「ステーファノ レニャーニ」です!

★A-iuto!、A-Yuzuki!だけではありません!すべての品種、キュヴェが高いレベル『トリンケーロ』

僭越ながら、da Dada(以下Dada)とヴィナイオータ倉庫、両方の現場を体験している身として、Dadaにてお客様にワインをサービスした際の好意的なリアクション、そしてその後のお持ち帰り率の高さと、ヴィナイオータ倉庫から皆様の元へと旅立っていく本数に最もギャップを感じている私的造り手ランキング1位がこのトリンケーロ。(ちなみに同率1位にムレチニックがいます)

おかげさまで「A-Yuzuki!」は大変な好評で、現在庫ももう少しで完売。白はすべて欠品中という状況なのですが、Yuzuki以外の赤を出荷する機会がDadaでの体感と比べると多くないことに本当に驚きました。。。「すべての品種、キュヴェが高いレベル」というと、飲まれたことがない人は少し疑ってしまうかもしれませんが、本当にどれもものすごく美味しいんです!、、、とはいえかなりの数のキュヴェを造っておりますので、ご参考までにDadaで実際にあったエピソード等を交えてご紹介いたします(※赤字部分。各ワインの説明は太田によるものです)。

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グリニョリーノ 2012 <赤> (品種:グリニョリーノ100%)
近年リリースされるエツィオのグリニョリーノは、毎年毎年自己ベストを更新している気がするのですが、12年は、とある“高み”に到達したワインだと思います。グリニョリーノというブドウの個性、特性を掴み切って、醸造、ボトリングのタイミングを決めたワイン、はっきり言って傑作です。
※“薄旨なワインが好きだけど、イタリアワインであまり好みのものに出会ったことがない”というお客様にグラスでご紹介したところ、お食事後なんとケースでお買い上げいただいたことがあります。

トラビック2011 <赤> (品種:メルロー100%)
どれも素晴らしく美味しいトリンケーロのワインの中で、ある意味最も(見た目的に)地味なのかもしれませんが、極端な硬さは皆無で今飲んでも、置いておいても楽しいワインだと思います。
※11年ということもあって、果実味あふれる味わい。組み合わせを考えずに楽しめる普遍的な美味しさのあるワインと思います。

ロッソ デル ノーチェ 2 (03, 04, 06) (品種:バルベーラ100%)
前回のヴァージョン、97&98&99&01があまりにも気に入ってしまったエツィオ、今回は03を中心に04と06をブレンドしました。お味のほうたるや… 全ての要素が強いにもかかわらず絶妙なバランスで成立しています。濃いのに恐ろしい飲み心地のワインです。ヴィーニャ デル ノーチェの現行ヴィンテージよりも古いのにお値段はお安め、最高のワインかと!
※到着直後の試飲ではスタッフ一同から歓声があがりました。濃いのにザクザク、最高です!グラス一杯の価格と味わいとのギャップに驚かれる方が本当に多いです。

ロッソ パルメ 2013 <赤> (品種:ブラケット100%)
各品種、各キュヴェ、そのどれもが高いレベルにあるため、どうしても注目度が低くなってしまうワインが出てきてしまいます…。その筆頭格がこのロッソ パルメ。香り、口当たり、余韻すべてに艶めかしさがあると言いますか…ザクザク行けちゃいます!
※“華やかだけど甘くないものを”というリクエストをいただいたときにお勧めすることが多かったです。一杯飲んだあとの反響(その後のおかわり、お持ち帰り)が一番大きい印象のあるワインです。

フレイザ ルンケット 2012 <赤> (品種:フレイザ100%)
フレイザは恐ろしいほどのポテンシャルを秘めていると思うのですが、注目度の低さではトリンケーロの中でも1-2を争う感じです。かなり乱暴な言い方になりますが、そこら辺のネッビオーロでは全然太刀打ちできないだけのテンションがあります。野性味あふれるタンニンが解きほぐれるまでに、膨大な時間がかかる印象のトリンケーロのフレイザですが、2012はエツィオの醸造センスが冴えまくりです!もちろんしっかりタニックなのですが、軽い!2012年のブドウの質、そして2012ヴィンテージのエツィオ トリンケーロの特徴とでもいうべき、エレガンスがこのワインにも備わっています。
※これまたものすごく美味しいのですが、本当に出荷する機会が少ない。。。是非一度ブラインドで飲んでいただきたいです。

バルベーラ ダスティ ヴィーニャ デル ノーチェ 2007,2008 <赤> (品種:バルベーラ100%)
カーゼコリーニのバルラと双璧を成す最強のバルベーラ、ヴィーニャ デル ノーチェ(以下VDN)ですが、07は、97年に並び立つすんばらしい年で、リゼルヴァとしてリリースされたVDNの99年栗樽7年熟成Ver.のボトリング後、同樽へと入れられ、6年間熟成させていたもの。果実、酸、タンニン、余韻、あらゆる点において規格外ですが、不思議と調和も取れているワインです。08は、全ての要素を07よりも1サイズずつ小さくしたワインと言えるかと。どちらも今飲んでも十分に楽しいワインですが、07はこの先長~~~~~い間成長を見守るべきワインです。
※07を初めて飲んだ時はあまりの美味しさにしばらく黙ってしまいました。ただ現時点での飲み心地に限定すると、みずみずしさのある08に軍配があがる気がして、グラスでも08を開けることが多かったです。

ノビウス 2010 <赤> (品種:ネッビオーロ100%)
バローロやバルバレスコのあるランゲに比べると、粘土質でより肥沃な地質を持つアスティということもあり、施肥をしなくてもアルコール度数の高い、凝縮した果実味を持つワインができると考えるエツィオは一切の肥料を撒かず、ボルドー液以外の化学的な薬剤に頼らない農業を行っています。09よりは肉感的ではありませんが、ランゲのネッビオーロと比べると、やはりボリューミーです。
※焼いた肉をご注文のお客様から、“これに合うワインを!”と言われ迷わず選ぶひとつがこちら。10年はリリース直後少し閉じた印象がありましたが、時間とともに開いてきております。是非!

【トリンケーロについて】
トリンケーロは、アスティ県で一番最初にDOCワインの自家元詰めを行うための登記をした造り手で、現当主エツィオが3代目に当たります。当初から、自然環境の最大限の配慮を払った農業を心がけ、セラーでも人為的関与を極力避けたワイン造りを理想としてきました。彼がワイナリーの仕事をすべて任された時点では40haもの畑を所有していたそうなのですが、品質の高いワインを造るのには広すぎる!!ということで、もっとも条件の良い畑10haほどを残して、他は全て売却ないし賃貸ししてしまいます。

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(ヴィーニャ デル ノーチェの畑)

残した畑の中でも、最も重要な2区画が、ワイナリーに隣接した畑、ヴィーニャ デル ノーチェとノーチェに隣接するバルスリーナ。ノーチェは、1920年代に、バルスリーナは、30年代にバルベーラが植えられた畑です。バルベーラが主要品種ですが、その他にもなんと9種類のブドウを栽培していて、白以外は全て単一品種でリリースさせていますので、ワイナリーの規模を考えると、非常に多種類のワインを造っていると言えます。さらに、リリースされる全てのワインが、他の造り手の追随を許さないくらいのクオリティとテンションを備えています。その高いレベルの“トリンケーロ スタンダード”は、どのようにして維持されているかというと、答えは簡単。納得できないものはボトリングしないのです!!揮発酸が高くなりすぎたものはお酢屋さんに、揮発酸は高くないけどワインとして少しでも腑に落ちないことがあったらバルク売りをしてしまうそうで、あるとき訪問した際、翌日にお酢屋さんが来ることになっていて、8000リットル(!!!)渡すと言ってた時には、目が点になりました…。

どのワインもがあまりにも普通に凄すぎるので、逆にありがたみ感に欠けてしまうのか、個々のワインに対する注目度が散漫になっている時があるような気がします。年々ブドウの栽培面積を減らしていますので、まとまった本数が手に入るのはあと数年ってところではないでしょうか…。

★好きが高じて専業農家に。日本人のFB友達ダントツNo.1!(笑) 『ステーファノ レニャーニ』

Legnani

保険のエージェントだったステーファノ、食べる事、飲むことが大好きで、噂のレストラン、酒屋、ワイナリーなどを訪ねるのを週末の楽しみとして、人生を謳歌していました。15年前くらいのとある日、“変なワイン”の試飲会があると聞きつけ、参加することにします。その晩招待されていた造り手はといいますと、ラ ビアンカーラのアンジョリーノ、ラディコン、カステッロ ディ リスピダのアレッサンドロという、非常に濃い面々(笑)。

彼らのワインは、それまでにステーファノが飲んできたワインとは全く異なり、当時の彼の味覚的には難解かつ動揺を誘うもので、素直に“美味しい!!”とは思えない…。ですが、造り手3人の、自身の進んでいる道に対する確固たる信念、確信、自信に満ちた表情にオーラのようなものを感じたそうです。雷に打たれたような気分を味わったその晩、家に帰ってすぐにワイナリー名&ワイン名をメモして、彼らのワインを探し求めるようになり、アンジョリーノ達が主宰する自然派ワインのサロンにも通い始め、毎週末、そこで出会った造り手や、その造り手から紹介された別の造り手を訪ね歩く生活が始まります。(ここでステーファノも書いているのですが、この当時、造り手からの口伝だけが、同じようなフィロソフィを持つ別の造り手に行き当たる唯一の方法でした…。僕にとってのマッサヴェッキア、コステ ピアーネ然り。)

どんどんどんどん彼らのワインが好きになり、彼らとの友情を謳歌し、彼らと一緒に過ごす時間が増えるにつれ、話題はワインそのものから畑へと移行していくようになります。畑の話をする時の彼らの目の輝きぶりを見るにつけ、徐々にジェラシーのようなものを感じるようになったそう(笑)。自身が食やワインの生産現場で見てきたもの、昔ながらの知恵であったり、味わいなどを、より多くの人と共有したいと考えるようになり、Serenissima Accademia del Gusto、訳すと“晴れ晴れした(清明な、ピュアな、裏表のない)味覚アカデミー”というグループを作り、いろいろな生産者を招いてセミナーを企画し、真っ当な食、ワインの啓蒙活動を数年に渡り精力的に行いますが、それでも何かが満たされないとステーファノは思うようになります。

そのあたりから、彼が住むサルザーナに所有する土地、それももともとはブドウ畑だった場所の利用方法を真剣に考え始め、役所へ赴き、ブドウを植える許可をもらいます。2004年に土地を綺麗にし、ブドウを植える準備をし、2005年にブドウ樹を植え、ブドウ栽培家としての生活を始め、2008年からワインを造り始め、2012年には保険の仕事も完全にやめ、専業農家となり現在へと至ります。

まだワインを造り始めて10年と経っていないのですが、すでに恐ろしいところにまで来ていると思うのは僕だけでしょうか? 想いの強ささえあれば、経験の少なさを克服することができるということなのかと。もちろん、短期間に最短距離を走り抜けるためには、アンテナの高さ、貪欲さ、観察力、気付き、謙虚さなどは凄い重要にはなりますが…。

legnani

(ステーファノと“お嬢さん”たち)

誰のワインを飲んで、自分でワインを造る事を志すことにしたかという話をしましたので、彼がどんなフィロソフィで畑&セラーで仕事するのかは、明らか過ぎると思いますので、ここでは割愛させていただきまして、簡単なワインの説明だけを(笑)。1ヘクタールの畑では、ヴェルメンティーノのみを栽培し(ブドウの樹のことを“お嬢さん”と呼んでいて、それはもう親バカすぎる可愛がりようです)、仕込むワインも1種類だけなのですが、ボトリングのタイミングによって、2種類の名前でリリースされています。のタンクの下側の澱に近い部分をポンテ ディ トイとしてボトリングせずに、小さなタンクへと移し換え、8月まで澱と共に熟成させたのちにボトリングしたものがル ガルーというワイン。

ponteditoi

ポンテ ディ トイ 2014 <白> (品種:ヴェルメンティーノ100%)
醸造は、5日間の皮ごとの醗酵、ステンレスタンクでの醗酵&熟成、ボトリング時に最小限度の酸化防止剤を添加。発足当初から造られているワインで、ステーファノ自身、ワインは冬の寒さと夏の暑さ(もちろん30度とかではありません)の両方を体験させてからボトリングするのが理想的なのでは?と考えていたのですが、生産量も少なく、極端にリスクを冒すことができないため、収穫翌年の3月にボトリングされていました。2011年ヴィンテージのタンクの下側の澱に近い部分をポンテ ディ トイとしてボトリングせずに、小さなタンクへと移し換え、8月まで澱と共に熟成させたのちにボトリングしたものがル ガルーというワイン。ステーファノは、それなりに大きな差を両者の間に感じているようで、毎ヴィンテージ毎に1か月ずつ、ポンテ ディ トイのボトリング時期を遅らせ(つまりル ガルーに近づけ)、将来的にはル ガルーを生産しないつもりなのかと。
※個人的に、卓上に白身の刺身があると飲みたくなるのがこちら。還元傾向も落ち着いてきており、夏を越えるとさらに味が乗ってきそうです。是非!

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