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2019-05-23

ヴィナイオータ かわら版 ~佐藤編 その弐~

佐藤の“飲んでもらいたい”ワイン紹介!

ヴァルポリチェッラ ターゾ 2011(Villabellini )

いつもお世話になっております。入社6年目を迎えまして、いつの間にか入社15年目の岸本に次いで2番目の古株となりましたつくば本社の佐藤です。ヴィナイオータ入社時に1歳になったばかりだった次男も今春にピカピカの1年生となりました。時の過ぎるのは本当に早いものです。

今回は、惜しまれつつも2015年に引退した女性醸造家、チェチーリア トゥルッキの残した唯一無二のヴァルポリチェッラ『ターゾ』から【2011年】をご紹介します!

2011年に開催された第1回目のヴィナイオッティマーナ。2010年の暮れにヴィナイオータのワインと出会った私は、「こんな楽しそうなイベントがあるなんて!!」と、前日までに社長オータのブログで造り手紹介を熟読し、勇んで東京会場へ向かったのでした。

初めて出会う造り手たち、憧れていた造り手やまだ飲んだ事の無い造り手も沢山。とにかく全てが新鮮で感動的でした。楽しい時間はあっという間に過ぎ、時間的に最後の一杯!というタイミングで私が選んだのが、まだ飲んだ事の無かったヴィッラベッリーニのターゾでした。

オータの造り手紹介を読んで是非飲みたい!と思っていた造り手の一人で、私にとって初めてのヴァルポリチェッラ。当主チェチーリアは静かにブースに佇み、その目は優しく微笑みながらも、凛とした強さを感じさせ、妙にドキドキしたのを覚えています。他のヴァルポリチェッラを飲んだ事がなかったので比較はできませんでしたが、力強さの中に優しさを感じさせるその味わいは、まさに目の前のチェチーリア本人の佇まいと一緒でした。

自身の年齢的なことや、子供たちにワイナリーを継ぐ意思がなかったという理由により、2015年に惜しまれつつもワイナリーを売却。2013年と2014年は病害や悪天候のためターゾは生産されませんでしたので、2012年がターゾの最後のヴィンテージとなります。弊社で現在オンリストしているのは、2010年、2011年、2012年の3ヴィンテージ。もちろんどの年も個性があってそれぞれお楽しみ頂けます。少し前まで、私はエレガントな2010年をお客様におすすめすることが多かったのですが、ここに来て2011年の雰囲気がグンと出まして、是非このタイミングでみなさまにご紹介したい!!と。

2011年は3ヴィンテージの中で最も外向的なワインで、豊かな果実味・しっかりとしたボリューム感があり、それでいて飲み疲れしない軽やかさを兼ね備えています。香りやアタックは甘やかでありながら、バランスのとれた酸となめらかなタンニン、後に続く長く心地良い余韻。いつの間にかグラスが空になる、そんなワインです。ご紹介の文章を書くに当たり、改めて2011年を時間をかけて飲んでみましたが、抜栓直後からスルスルと飲めてしまう心地よさがありながら、2日目、5日目と絶妙に雰囲気を変えながら丸みを帯び、10日経っても落ちる雰囲気は微塵も無く、最後まで安定して楽しむ事が出来ました。合わせた料理も、焼き肉、麻婆豆腐、野菜のお浸し、スパイスカレー、てんぷら等々、様々なジャンルと組み合わせてみましたが、どのお料理ともケンカすることなく、懐の広さを感じさせます。

ターゾのエチケットには、ヴィンテージごとに詩が書かれているのですが、2011年の赤いエチケットには、フランス語でこう書かれています。

『さあどうそ。
これはワインではありません。
これは愛です。』

愛する人への贈り物へもぴったりですね!

以前よりターゾのファンです!という方はもちろん、まだターゾを飲んだ事が無い!という方には是非!!この機会にチェチーリアの残したターゾをお試しいただきたいです!

~ヴィッラベッリーニ~

ヴィッラベッリーニのオーナーであったチェチーリア トゥルッキの一家は、ヴェローナの街でホテルを経営し、彼女自身は建築家兼ガーデンプランナーとして仕事をしていた。

1980年代半ば、ヴェローナ郊外のヴァルポリチェッラのゾーンで1700年代に建てられた屋敷と6ヘクタールの土地からなる、ヴィッラ ベッリーニを購入。ヴィッラ ベッリーニの敷地は、四方を石壁に囲まれ、森、庭園、1600年代に仕立てられた乾式の石壁で作られた緩やかな段々畑、泉などがある荘園のような場所で、当初は、建物を修復&改装してホテルにしようと考えていたが、荘園内にもともとあったブドウ畑、そしてワイン造りに魅せられていき、1990年からワイナリーとしての生産を開始。

ワイナリーを始めた当初は、アマローネ、ヴァルポリチェッラ、レチョート デッラ ヴァルポリチェッラを生産していたが、ある時期から、ガイドブックなどでの評価も高かったにもかかわらず、アマローネという世界的にネームヴァリューのあるワインの生産をやめてしまう。ヴァルポリチェッラのゾーンで、アマローネを造らない造り手はおそらく彼女だけだったのではないだろうか。

その理由は、彼女自身が中途半端に残糖分のある高アルコール度数のワインを毎日飲みたいと思わなかったから。ワインはワインとして単独で楽しむものではなく食事と共に楽しむべきもので、できることなら毎日でも飲めるものであって欲しいという彼女の思いがアマローネの生産をやめるきっかけとなった。

ヴァルポリチェッラというワインの生産工程の中で採用される特徴的な手法の一つにリパッソがありますが、リパッソを施したワインは、その痕跡があまりにも前面に出てしまい、ヴィンテージごとの個性をワインの中に見出すのが非常に困難となり、それ自体ヴィナイオータがワインに求めるものとはかけ離れてしまうため、太田がこのゾーンのワインを敬遠する理由となっていました。そんな驚きや意見をチェチーリアにぶつけてみると、彼女も同じように考えていて、だからリパッソはしないんだという答えが返ってきたのです。

ターゾという名前は、ヴェネトの方言で “無言” を指し、彼女自身こんな文章を書いています。

「理想のワインを探しているうちに、(自分にとっての)真実に出会った。観察し、耳を傾け、感じること、そしてタイミングを見極めることを学び、ブドウ樹や季節について見識を深めること…(自然な)ワイン造りのための秘訣であるこれらのことは、同時に、人生の秘訣でもある。真実は(ブドウの)根っこ、時間、そして我々の中にあり、ラベルの中にあるわけではなく、ターゾの静寂のみが、そのオリジンであるブドウ、畑、気候、土壌について語りかけてくれる。」 

アマローネを造らないという世間的には?な選択に対しての彼女の答えが、ターゾ、ワインであり、沈黙なのです。

ターゾ以外には、ウーヴァ パッサ(干しブドウ)という名前のパッシート(レチョート)を生産しています。ターゾ用には1ヶ月のところ、4ヶ月ほど陰干ししたブドウから造るワインで、完璧な状態のブドウが収穫できた年にしか生産されません。

<<佐藤の飲んでもらいたいワイン紹介>>
銘柄:Valpolicella Taso 2011 / ヴァルポリチェッラ ターゾ 2011
ブドウ:コルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラ、モリナーラ
造り手:Villabellini / ヴィッラベッリーニ
地域:伊ヴェネト州
希望小売価格:7,400円

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