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2007-03-02

ラ ビアンカーラ その3 PicoとSassaiaとMasieri

時々聞かれるのですが、MasieriとSasaiaとPico、厳密にどう違うのかと。特に皆さんMasieriとSasaiaの味わいの差がどこから生じるのか、一番疑問に思われるようです。

まずブドウ品種ですが、MasieriとPicoはガルガーネガ100%で、Sasaiaはガルガーネガ90%にトレッビアーノ10%。

Sassaiaにトレッビアーノを使用するのは、トレッビアーノの果実味を加わることでガルガーネガの硬質な印象を和らげ、早いうちから親しみのあるワインになるようにと考えてのことらしいです。Sassaiaに使われるブドウの畑は彼の家の近くにあるパーセルを中心に、標高150m近辺にあるとのこと。仕立てはグイヨ。彼の家の近くのパーセルが石(Sassi)がごろごろしていたためにSassaiaと呼ばれていて、ワインの名前もそうしたそうです。

Picoに使われるガルガーネガは、標高250mの3つのパーセル(Taibaneはその中の一つのパーセルの名前)でとれたブドウを使用しています。標高が高いので、Sassaia用のブドウに比べると成熟がゆっくりと進むので、よりミネラルなどに富んだブドウになるとのこと。仕立てはグイヨ。Picoはこの辺りの言葉で、”斜線の上部の点”を指し、そこから”最高のもの”という意味も持つようになった言葉から来ていて、文字通り彼の白ワインの最上級クラスの名前に使用しました。

そしてMasieriに使われるブドウは、Sassaiaと同じ畑のブドウで、彼が目指す完熟のレベルに達していないブドウと、Sassaiaの畑に隣接する、ペルゴラという棚仕立ての畑でとれたブドウを使用しています。棚仕立てにすると、収量はグイヨよりも見込めるが、ブドウ1房1房の凝縮性などは薄まってしまうようです。これにはもしかしたら棚仕立てのブドウの方がグイヨのブドウよりも地面からの距離があるために、太陽熱の地面からの照り返しを期待できないということもあるとアンジョリーノは言ってました。

棚仕立てのブドウ樹ですがグイヨのようにすべく、今年の冬アンジョリーノは思い切って伐ってしまったとのこと。彼が普段行う剪定のように細い部分ではなく、太い幹の部分を伐った訳ですから本当に大変だったようです。10本や20本ではないですからね。

Masieriも区画の名前で、”石壁に挟まれた坂道”という意味で、実際に石壁のある急な坂道の脇に棚仕立ての畑があります。

で、醸造面での違いですが、どのワインも醗酵の初期段階は開放醗酵槽を使用し、皮や種ごと行います。彼は醸しについて、培養酵母も酵素も使わないで醗酵を円滑に進めるために野生酵母を有効に活用する必要があり、皮の周りについている酵母を液体に十分に移してあげるために必要な手法と考えているようです。

醸し(マセレーション)の期間ですが、特に決まりがあるわけでなく、外気温によって変わるそうです。圧搾するタイミングは、皮が炭酸ガスに押し上げられて、浮き上がってきたのを確認した時。標高が低い畑でとれるSassaiaとI Masieri用のブドウはPico用のブドウよりも早く熟し、おおよその収穫時期は9月中旬から10月始めあたり。その時期はまだ外気温が高いので、マセレーションの期間は長くても1日。

それに対してPicoのブドウは10月の中旬から11月始めに収穫されるため、その時期の外気温の低さから野生酵母の活動が鈍いため2日くらい醸した状態にするようです。

2006年の秋、”俺が行くまでブドウ残しておいて”とお願いしたら、本当に残しておいてくれて、10月24日TaibaneのPico用のブドウをみんなで収穫したのですが、その日はとても暑く、午後収穫を終え、除梗・プレス後開放醗酵槽に入れられたブドウは夕方にはプチプチ音がしだしていて、次の日の朝には圧搾していました。

圧搾後、残りの醗酵をMasieriは全てステンレスのタンクで行い、Sassaiaは半分をステンレス、残り半分を3000リットルの大樽で、Picoは1500リットルの大樽と使い古しのバリックで行います。

澱に還元臭が出ない限り移し変え作業(樽から樽、ステンレスからステンレス)を行いません。醸造から熟成期間、どのワインにも一切SO2は使用せず、ボトリング前に若干量を添加します。当然ながらSassaiaの無添加ヴァージョンはボトリングの際にも一切添加を行いません。

2006年ヴィンテージはアンジョリーノにとって本当に素晴らしい年だった(曰く、2006年程まっ黄色に熟した、健全なガルガーネガを見た事がないとのこと)ので、かなり面白いことをしようと考えてるようです。実際にそうした段階で皆さんには報告させていただきますね!

という感じで、特に醸造面での違いは小さいということが分かって頂けたと思います。つまりそれほどブドウの品質(熟度、凝縮度など)が、ワインの個性や品質に影響を与えるということなんですね。

【Pico Cruについて】
ピーコに使われているガルガーネガは、標高250mにあるタイバーネ、ファルデオ、モンテ ディ メッツォという3つの区画で栽培され、醸造も畑ごとに行われています。2006年同様に2008年も各クリュの個性が際立っていると判断したアンジョリーノは、再び個々にボトリングすることにしました。

タイバーネ:
標高200m、南東向きの1.6ヘクタールの畑。 樹齢25年。多量の粘土を含む肥沃な火山灰質で7段の急斜面をテラス仕立てにしている。 実は日当たり、方角的にはこの畑のシチュエーションは特別良いとはいえないとアンジョリーノは話す。

ファルデオ:
標高250m、南東・南西向きの1.5ヘクタールの畑。樹齢28年。 なだらかな起伏のある広い2段の造りで粘土は少なく、シリカと玄武岩を多量に含む痩せた土壌。

モンテ・ディ・メッツォ:
標高120m、南東向きの1.7ヘクタールの畑。樹齢6年。 豊富な粘土とミネラル分に富む非常にポテンシャルの高い畑だが、最近になって手入れを始めてからまだ均衡がとれておらず、 本来の力を発揮しだすのはまだ数年後と思われる。

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