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2021-02-03

ヴィナイオータ かわら版 ~石橋編 その五~

ピノ ネーロ2011  (Bressan)

香りには記憶を呼び覚ます力があるといいます。

街路樹の香り、潮の香り、隣家のカレーの香り… 他にも様々な香りを嗅ぐことで幼少期のことや青春時代のほろ苦い体験がふと呼び起されるといった経験をしたことはありませんか?

五感の中で、嗅覚のみが脳の大脳辺縁系という記憶や快楽、喜び、不安など情動を司る場所に直接繋がっているらしく(視覚、聴覚などは脳の違う場所を経由する)、ダイレクトに記憶や情動に作用するからではないかといわれているそうです。(「プルースト効果」というそうです。

私にとってこんな体験を毎回させてくれるワインがあります。

※スタッフ持ち回りでご紹介しているこの「かわら版」。順番が近づくと、スタッフ同士で被らないように「次、なににする?」という事前確認があったりします。今回このかわら版を書くにあたって佐藤と被る(2回前のメルマガでスキオッペッティーノを紹介)ことはわかっていたのですが、ブレッサンのワインがあまりにも素晴らしいのでしつこく推し続けたいと思います。

江戸時代以前の文化(いわゆる”シャモ”による)がない北海道で生まれ育ったせいか、観光で訪れた京都の寺社文化に魅せられてしまい、20代の頃は「青春18きっぷ」を活用して頻繁に京都を訪れていました。

視覚的には、欄間にいたるまでの彫刻の細かさ、美しさに唸らされたり、お堂や庭の雰囲気も宗派によって荘厳さを誇示するようなものもあれば、石庭や枯山水に代表される引き算の美しさがあったりと、とにかくそのバラエティの豊富さや脈々と受け継がれてきた美やオーラに圧倒された記憶があります。

ここまでは写真や文献でもわかる情報なのですが、実際のお寺ではお香が焚かれています。お香の匂いそのものだったり、煙たい感じだったり、畳の香りと入り混じった感じだったりが焼き付いて、近い香りを嗅いだときにその頃の記憶が呼び覚まされるのです。

一度でもブレッサンの赤を飲んだことがある方は良くお分かりになるかと思いますが、グラスに注いだ途端に立ち昇る香木を思わせる香り。この香りを嗅ぐたびに当時のことを思い出し、慌ただしい時間を過ごしていても少しゆったりとした心持ちになれるような気がします。

また、以前旅館を借りて行われた試飲会があった際、打ち上げでブレッサンのピノ ネーロを飲んだのですが、一同「畳の香りと妙に合うね」と顔を見合わせた記憶があります。食べ物とのマッチングについては意識しても、空間の香りとの親和性を考えたことはあまり無かったので、大変印象に残る出来事でした。

日本で脈々と受け継がれてきた香りとの親和性の高さを持つ「日本の心を持つフリウリの男」フルヴィオが醸すピノ ネーロ。鴨や鹿などの血のニュアンスや焦げ目の感じなんかとも最高に合うと思います。「畳の部屋ではブレッサン!」これだけでも覚えてください。

香りには記憶を定着させる効果があるともいわれています。記憶に留めたい特別な席の1本にもピッタリではないでしょうか。今日も香りが当たり前に感じられる幸せに感謝して。

≪石橋の飲んでもらいたいワイン紹介≫
銘柄:Pinot Nero / ピノ ネーロ2011
造り手:Bressan / ブレッサン
地域:伊 フリウリ ヴェネツィア ジューリア州
ブドウ:ピノ ネーロ
希望小売価格(税抜) : 6,000円

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