Lorenzoが伝えたかったこと。
彼らが帰国して早1か月、、今更感もありますが、、、3月9日に来日しましたロレンツォ コリーノ(カーゼ コリーニ)のセミナーにご参加、ご協力くださった皆様、ありがとうございました。8日間の滞在で詰めに詰め込まれたスケジュールでしたが、最終日まで意外と元気なロレンツォの姿にホッとしながらも、僕たち日本人と話をする時間に重点を置いた今回の来日を大変有難く思いました。
東京セミナーは140名、大阪セミナーは116名とどちらも超満員となりまして、カーゼ コリーニのワインの試飲がなくともここまで沢山の方にお越しいただけたことに驚くと同時に、彼の話から少しでも何かをつかみ取ろうとされるお客様の気持ちを嬉しく思いました。本当にありがとうございました。
大阪会場にはなんと小学6年生の女の子が、、仲の良い酒販店さんのお嬢さんなのですが、4月から中学生にあがり、将来は農業関係の仕事につきたいと考えているそうです(すごい!!)。セミナー中もしっかりとメモを取りながら話を聞いていたのが印象的でしたが、ロレンツォの話が終わり彼の元に駆け寄る彼女の真剣な表情、、写真を撮りたいわけでもサインが欲しいわけでもないんです。分からないはずのロレンツォの言葉を必死に身体に入れようとしていました。。。
そのときに、ロレンツォが彼女に伝えたこと。
「あなたは今とても若くて、生きている中でこれからたくさんの事柄が起こるでしょう。その多くはあなたにとって大変な事(苦労する事)で、大変でない事はほとんどないかもしれません。でもその大変さから目をそむけないでください。1つ1つと向き合って歩いて行ってください。なぜなら『それがあなたの人生』だからです。あなたは若くて美しい。僕はあなたの人生も美しいものになると思っていますよ。」
こんな言葉でした。ツアー中何度もロレンツォが「Bella(美しい)」と言うんですが、僕もしばらく一緒にいるうちにロレンツォが言ってる「美しい」が外見的な美しさだけを指すものではなく、その内側にあるものまで含めていること、彼女に対しては「この日、この場所に来ることになった気持ち」、そこに対する彼女の中の葛藤まで全てを含めて「美しい」という表現をしたと確信しました。
ロレンツォと2人で話しているときに小さなリンゴを渡されました。突然ポケットから出てきたリンゴに驚いた僕の目をじっと見ながら「見てごらん、少し痛んでいるね。でも悪い事ではないよ、これも君のリンゴの一部だよ。全部含めて、君の人生なんだよ。全部含めて美しいんだよ。」とロレンツォ。子供の頃にお母さんに抱きしめられたときの様な気持ちになりました。
この2つのエピソードで彼は全く同じ話をしています。そしてロレンツォは若い12歳の彼女に対しても、不幸や大変さを排除したような子供向けの上辺だけの言葉ではなく、人生の先輩としての言葉、大人同士として気持ちを伝えました。それこそが彼の精神であり、愛情なのだと心底思います。
僕も若いときはワイン醸造に関するテクニックばかりを追いかけていましたが、、ワインの世界で働いて19年、今思うのは、ワインにとって最も大事なものは「造る人の精神」である、こと。つまり、精神(身体の内側から湧き上がる想い)を自分の中で突き詰め、それを現実世界で形にするための技法を自分で生み出し、それを失敗しながらも磨き込んでいくことが、自分の畑や自分の想いをワインで表現するための一番の早道なのではないか、ということです。そう、大変な部分を全て含めて自分の人生であり、そこから目をそむけない、ロレンツォも言ってくれています。
そして微生物にも、畑で生きる生き物にも、天候にも、ブドウにも、会場に来てくれた皆さんにも、初めて会った12歳の女の子にも愛情を持つことがロレンツォの精神の根幹にあり、そこから自分なりの葛藤、失敗を繰り返しそれでも突き詰めてきて生みだされたものが現在のカーゼ コリーニのワインであること、ここに到達するまで彼も彼の人生と向き合う以外に近道はなかったことを、改めて皆さんとヴィナイオータのスタッフにお伝えしておきたいと思います。