3年前に、盟友サノヨーコが書いてくれたアリアンナ オッキピンティの紹介文を改めて読んでみましたが、今ではあの当時よりも更に有名に、もはやイタリアのナチュラルワイン界のアイコンとでも呼ぶべき存在になり、そのせいで一部では3年前以上に妬み嫉みの対象になっているような気が(笑)。
ワインを造り始めてから10年ちょっとで、ここまで分かりやすく大きな成功を収めていることを内外に知らしめている造り手は、ことナチュラルな造りを志向する人たちの間では前例がないかもしれません。
2013年には自叙伝(30歳で!!!)が出版され、5/1の労働者の日には、TV中継もあるようなローマで行われた有名ミュージシャンも参加するコンサートで大観衆を前に”農民マニフェスト”を読み上げたり、最近ではニューヨークタイムズでもワインを絶賛され、フェイスブックでは10.000いいね!を超え…。
ワイナリー的にも、新しい畑を購入し、そのそばにとんでもなくかっちょいいセラーを建設し、隣接した廃屋と化していたパルメント(伝統的な大型のワイン醸造施設。50人以上は入れようかという、足で踏むための巨大なステージと発酵槽、馬がひいていた木製のトルキオ(圧搾機)、発酵から熟成に使用される大樽を擁する熟成庫まで、すべて天然石で作られている)を改修し、彼女の新しい住居にしようとしていて…もう対外的には成功者以外のなにものでもないアリアンナ。
造るワインはもちろん素晴らしく、普遍的な味わいを持ち合わせていて、それが一番の要因ではあると思いますが、親友であるラ ストッパのエレナをして、”天才的”とまで言わしめる彼女の卓越したコミュニケーション能力が、彼女に更なる成功をもたらしているように僕には思えます。
頭の良さに加えて、飾らない素直な性格であったり、生来の人懐っこさが、その能力に一役買っているのでしょう。
繊細な感性を持ち、サノヨーコがいうところの時に詩的、だけどごくシンプルな言葉で構成されている彼女の話は、多くの人の腑に落ちやすい(共感、合意を得られやすい)ということなのかなぁと。
周りからは成功者扱いなアリアンナですが、本人に驕ったところなど微塵もなく、他者の自分に向けられているイメージなどどこ吹く風とばかりに極めて自然体の振る舞いで…。
おまけに美女とくれば…そりゃ成功するに決まってるじゃないですか!!!(笑)
これでなんで妬まれなきゃいけないんでしょうか?
彼女が裕福家の出であることが、きっかけにはなっているかもしれませんが、今の成功を引き寄せたのは彼女自身のプロとしてのパフォーマンスですよね??
商業的な成功を最終目標とせず、自分が生まれ育ったヴィットーリアというテリトリーを表現、内包したワインを造り、土地の伝統、文化、そしてワインの素晴らしさをより多くの人に知ってもらいたい、そのためには畑でもセラーでもベストを尽くし、試飲会や他の公共の場でも熱く語りかけ、その彼女の熱が彼女の想いを他者の心まで運び…。
メッシもイチローも、自分が大好きな事をより上手になりたいという一心で人一倍の努力をして上手になり、その副産物として経済的成功も収めただけの話で、最初からそれを目標としてきたわけではありませんよね?
他者目線では、成功と言うと経済的な部分だけに目が行きがちになってしまいますが、本来あるべき人生の成功とは、その人の精神的充実度で計られるべきなのではないでしょうか?
自身の生業に対する飽くなき探究心、情熱などを持ち続けることに”成功した”人が、(それらを持ち続けた)結果として手にする、あくまでも真っ当な経済的成功(対価)は、安定、長続きするかもしれませんが、経済的な成功が当初からの目標であったり、当初は熱いものを持っていたはずなのに、やっていくうちにいつしかそれを忘れ、経済的なものを求めるようになってしまった場合、その成功は長続きしないものなのかなぁと思ってみたり…。
もちろん、好きなこと、情熱を傾けられることを仕事にできているということが前提になりますが…。
その仕事を始めた時の気持ちを忘れないことって、すごく大事なことなのでしょうが、すご〜く難しいことでもあるのでしょうね…。
僕も頑張ろっと!
新しいセラーの隣で改修中の方でなく、現在アリアンナが住むパルメント。奥のソファーがあることろが収穫してきたブドウを足で潰していたシンクで、その手前の穴が醗酵槽でした。インテリア雑誌で見かけてもおかしくないくらいお洒落なお家です。
旧セラーで試飲用のワインを入れるアリアンナ。ボトリングした途端、足の踏み場もないほどの状態に。
ニューセラー地上部!錆びた鉄板をわざわざ使うあたりがニクい。この後、防犯アラームがけたたましくなってしまい、大変なことに(笑)。
地下部、醗酵槽は全てセメントにしました。ステンレスだと外気の影響を受けやすく、醗酵にブロックがかかったりすることがあるとの事。
改修中のパルメント。奥がブドウを潰していたシンク、手前が醗酵槽!