Oct 24, 2014

造り手紹介 サンタ マリーア

さて、お次はモンタルチーノの実験君こと、マリーノ コッレオーニ&ルイーザ夫妻が営むワイナリー、サンタ マリーアを紹介させていただきます。

このマリーノ、飛行機が怖くて怖くて仕方がない上に、重度のヘビースモーカーの為、来日は難しいかと思っていました。ですが、この後で紹介させていただく、カンピ ディ フォンテレンツァのフランチェスカちゃんが、
「マリーノぉ、あたしと一緒に日本行こうよ!!12時間なんて、絶対あっという間よ!」
と、 数年に渡り根気強く説得してくれたことと、日本への飛行機旅の予行演習を兼ねて、去年飛行機に初めて乗り、ノルウェーに行ったのですが、思いのほか怖くな かったそうで、来日を決めてくれました!!!(タバコ問題はどうするのでしょうか?トイレで吸わないことを祈るばかりです。笑)

彼らと 初めて出会ったのは、2006年のヴィッラ ファヴォリータ(ラ・ビアンカーラのアンジョリーノのグループが主催するサロン)で、ワインにもマリーノ&ルイーザの人柄にもいたく感銘を受けた のですが、当時のヴィナイオータは、すでにブルネッロの造り手2軒と取引をしていて、新規のブルネッロの造り手をラインナップに加えるのが難しい状況でし た。
というわけで、マリーノにこんな風に聞いてみました。
「あなた方のワイン、凄い美味しいと思ったし、日本でも喜んでくれる人が絶対 いると思ったんだけど、うちの会社って小さくて、もうすでにブルネッロの造り手2軒と取引していて…。そこで質問なんだけど、友達で、日本のインポーター にワインを紹介する仕事をしているのがいるんだけど、その彼女を通して、日本のインポーターと取引することに興味ある??もちろん信用のおける会社を必ず 紹介させるから。」
返事は、“もちろん喜んで!!”ということだったので、帰国して早速、当時身重でイタリアに訪れる事ができなかった、“世界 一仕事をしないクルティエ(インポーターに造り手を紹介することを生業としている人)”こと盟友サノヨーコに渡した、“絶対にコンタクト取ったほうが良い 造り手リスト”内で、筆頭の造り手として紹介させていただきました。(クルティエのためにクルティエ的な仕事をするインポーターって…)それがきっかけ で、前インポーターさん、N.U.さんの取扱いとなったのですが、4年前からヴィナイオータが取り扱う事になりました。

彼らがワイン造り始めることになったきっかけは、なかなかにビックリです。
ベルガモ出身のマリーノ&ルイーザ、マリーノはコンピューター関連の仕事を、ルイーザは生パスタ屋さんを3軒経営していたのですが、ヴァカンス旅行でたま たま寄ったモンタルチーノという場所に惚れ込み、第2の人生を送るための場所として土地を探し始めます。とはいえ、ワインの名醸地として世界に名を轟かす モンタルチーノで、手ごろな値段の土地を探すのは本当に至難の業でした。1980年代後半のその当時でも、DOCGで認められた、ブルネッロ用のブドウを 栽培できる土地を買おうと思ったら、ヘクタールあたり8000万円ほどしたそうです。
89年にようやく、彼らの希望に副った土地を見つけ、93 年に家も完成し、住み始めます。当然のことながら、彼らが見つけた土地は、DOCGの許可がない(と思われていた)ところで、彼ら自身、ワインを造る気な ど微塵もありませんでした。ですが、94年の9月ごろ、敷地内の“森だと思っていた”所の脇道を散歩していたところ、とある栗の木の何かの蔓が絡まってい るのを発見します。それをよーく見てみると、絡まっていたのはブドウで、栗の木のてっぺんにはブドウが数房生っているではありませんか!!!!翌年、その 区画を綺麗にしてみると、900本程度が植わっていたであろう、小さなブドウ畑だったことが明らかになり、地元の農業関係の検査機関に調査を依頼すると、 ブルネッロ用の古い畑だと判明、彼らの購入した土地内に1.5ヘクタールの新しい畑(当然ブルネッロ用の!)を仕立てる許可をタダでもらう事に。1997 年に開墾し、ブドウを植え、2000年からワイン生産を開始し、2001年に本格的なセラーを建設します。2002年には、モンタルチーノから25kmほ ど離れた、カスティリオーレ ドルチャ村に1.5ヘクタールの畑を購入し、サンジョヴェーゼを植えます。

自然を愛するあまり、生まれ 故郷の街を離れて田舎に住み始めたくらいですから、当初から自然環境に負荷のかからない農法を志向します。セラーでも温度管理等も行わず、野生酵母による 醗酵、長期にわたるマセレーション、清澄もフィルタリングも行わず、ボトリング時に若干量の2酸化硫黄を添加するのみ(一部のワインは完全無添加)。究極 の目標は、2酸化硫黄完全無添加のブルネッロを造ることだとマリーノは言います。(ワイン自体ができたとしても、それをお上がブルネッロと名乗らせてくれ るかどうかは甚だ怪しいところですが。笑)

「農民としても醸造家としても、自分は全くの素人だし、年もそこそこにとっているから、毎年毎 年いろいろな事に挑戦してみたいんだ!」という、マリーノの謙虚さと旺盛な好奇心、限られた時間を無駄にしたくないという一期一会的感覚が、畑でもセラー でも様々なチャレンジへと駆り立てているのだと思います。数々のチャレンジの中でも、印象的なものをいくつかご紹介させていただきますと、

“名醸地”モンタルチーノからほど近いにもかかわらず、知名度も得られずに時代に取り残された感のあるカスティリオーレ ドルチャ村は、開発(開墾)され尽くした感のあるモンタルチーノに比べて、豊かな自然が残っています。彼の畑も周りを森に囲まれ、そこには自然界の絶妙な バランスがいまだ存在すると考えたマリーノ、ボルドー液さえも使わないブドウ栽培に挑戦します。(年によっては1-2回使うようですが、使わない時は本当 に全く)
この畑で獲れたブドウで造られるのがオルチャ ロッソで、セラーでも酸化防止剤を一切使うことなく、醸造&ボトリングを行うワインで、完全無添加ブルネッロ(畑でもそれを目指しているのだと思います)へ向けて、野心的な実験が毎年繰り広げられています。
例えば、友達のソムリエがロワールの造り手からブドウの梗には抗酸化作用を持つタンニンがあるという話を聞いてくれば、2011のオルチャ ロッソの仕込の時に除梗をしない醸造を早速試します。その梗由来の青い雰囲気が出過ぎちゃったねと指摘すると、
マリーノ「僕もそう思ってたところだよ。でも、梗っぽさを出さない方法を思いついたような気がするから、来年もまた試してみようと思うんだ。ヒサト、どんな方法だと思う?」
僕「え、収穫してすぐにプレスするのではなく、ブドウをセラーでしばらく寝かせるんじゃないの?」
マ「(真面目に驚いた顔で)その通り!なんで分かったんだい?」
僕 「それとは全然別の理由だけど、ロレンツォ コリーノは収穫したらすぐ仕込むのではなく、セラーで最低でも3-4日ブドウを休ませるんだって。そうすると梗が茶色くなるんだって言ってたんだよね。茶 色ってことは、青い梗特有の風味も出ないってことなのかなぁって思ったんだよ。」
マ「なんと!ロレンツォは知っていたという事か…だったら最初から聞いておけば良かった…。」

カスティリオーレ ドルチャ周辺では、伝統的に栗と桑の木の樽を使われていたと聞けば…ここからは彼のメールの訳を載せますね。
2006 年はカスティリオーネ ディ オルチャの畑からの初収穫の年で、ブドウはそりゃもう素晴らしくて…。ちょうどこの頃、昔(すごーい昔)この地域でワインの熟成&保存に何が使わ れていたのかを調べていたんだけど、栗と桑の木の樽が使われていたことが分かったんだ。なので、栗と桑の木でできた小さな樽を探すことにして、1つずつ見 つけてきたんだよ。栗のほうは旧ユーゴスラヴィア産で、120ユーロ(安!)で買って、自家用ワインを入れてみたんだけど、甘いカプチーノみたいな香りの 茶色いワインができあがちゃってさ…(おえっ)。に対して、桑の樽はオーストリア産のものを見つけて、価格はなんと2006年当時で960ユーロ!僕とル イーザ、ちょっとおバカなのかもしれないね…。で、その樽にオルチャ ロッソ06を48か月、一切酸化防止剤も加えることなく置いておいたんだ。そしたらワインに何て言うか、煤(すす)っぽい香りがつき過ぎちゃったんだ。味 は最高だったんだけどね。その桑の木樽由来と思しき、あまり好ましくない香りを消すために何かできないかと、モンタルチーノの友人達(年寄)に聞いてみた ところ、醗酵が終わりプレスしたてのヴィナッチャにワインを“通す”と、煤っぽい香りが取れるって教えてくれた人がいたんだ。で、2010年に、絞りたて のヴィナッチャの入っているタンクに樽からワインを出してきて入れて、一晩置いて、圧搾したワインをオークのバリックに戻してみた。数週間後に味をみてみ ると、劇的に変化していたのだけれども、まだ若干“煤”が残っていて…なので、2011年にも同じ作業をして、2012年の夏にボトリングしたのが今回の オルチャ ロッソ2006さ。当然のことながら、一切SO2は添加してないよ。

ロッソ ディ モンタルチーノの2010年でもやらかしてくれました。2バリック(計600本)の生産だったのですが、1樽は酸化防止剤完全無添加でボトリング、もう一 方は10mg(限りなくゼロと言って良い量です)だけ添加してボトリングします。この2つのワインの外見上の違いと言ったら、裏ラベルの色のみ(緑と青) で、率直な意見を聞きたいからという理由で、どっちがどっちなのかを教えてくれずに送りつけてくるという…(笑)。

自分の畑やセラー内 での仕事の仕方に留まらず、サンタ マリーアというワイナリーを有効活用して、社会とも“有機的”に関わる方法も常に模索しています。モンタルチーノの南東にモンテ アミアータという山があるのですが、その麓でも伝統的にブドウを栽培されていて、質の良いブドウが獲れるのですが、世間での認知度は皆無。なので、ブドウ 栽培農家はネゴシアンにブドウを買いたたかれてしまう…。高樹齢の樹が多く残る畑で、誠実な農業をしていても、名のないところのブドウは安く買われてしま うという現状に心を痛めたマリーノ、知り合った農家のブドウを取引価格の倍(それでも安い!)で買って、仕込んだワインを、2012年はアンテオ、13年 はロッソ トスカーナという名前でリリースさせます。

セラーでテイスティングって時にも、
「昼食で激しく飲み食いして疲れちゃったから、ヒサト、みんな連れて適当にセルフサービスでやっておいて。」とか、
「こ のセラーは今、完全に君たちのものだ!だから、ワインのテイスティングも自由に、好きなだけやってくれたまえ!僕は、外にタバコを吸いに行かなくちゃいけ ないので、ちょっと失礼するね。」とか、まー自由で、肉体的にも精神的にも無理をしない自然体を貫き、屈託なくて、常に思いやりにあふれ(イタリア人で、 彼ほど他者の立場を慮った発言を、常に、そしてさりげなくできる人を僕は知りません)…あ、これって彼のワインそのものじゃないですか!!

カンピ ディ フォンテレンツァの記事で書きますが、フォンテレンツァとサンタ マリーアのワインの間にある個性の差異は、造り手そのものに由来しているんだなぁと、会って、話しをして、ワインを飲んでもらえれば、皆さんも腑に落ちてもらえると思います。

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仲睦まじいマリーノ&ルイーザ

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すんばらしいロケーションにワイナリー&畑はありまして、

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ごくたまーに真面目にワインの話をし、

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訪ねた時は、必ず宴が催されまして、

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料理上手すぎるルイーザ!

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前日の宴の戦果(笑)

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2枚目とほぼ同じアングルの写真!!!

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