【新入荷】2016年9月 その1
イタリアから帰国後、全くもって平常を取り戻せていないオータです。
子連れ、それも3人を連れての旅は、大人だけの旅の3倍は疲弊するということを学習しました…。とはいえ、僕たち(特にオータ妻)の労苦を慮り、そしてこの無謀な企てに対して最大限の敬意を払ってくれ、考えうる限りの心尽くしのおもてなしで各地の造り手が迎えてくれたおかげで、この程度の疲弊具合で済んだのだとも思っております…。上の2人にとって、いろいろ思い出に残る旅となったのなら良いのですが…。
造り手的には、3番目の行動力(落ち着きのなさ)と怖れ知らずさ加減(無謀さ)にかなり驚嘆したようで、フルヴィオ ブレッサンからは“虎”、パオロ ヴォドピーヴェッツ&ヴァルテル ムレチニックからは“地震”というありがたいニックネームを頂戴しました。僕自身まだこの旅で見たもの、感じたことの整理ができていないのですが、皆さんにもボチボチご報告できたらと考えております。
それでは9月の新入荷案内第1弾行きまーす!
ちょうど僕たちが訪ねようと思っていた日が留守中(彼氏とヴァカンス旅行!)ということで、会うことができなかった元気ねーさん、アリアンナ オッキピンティからはSP68のビアンコ&ロッソの2015年ヴィンテージが待望の入荷です!!
2015年の夏、特に7月が酷暑だったらしいのですが、あまりの暑さ&乾燥でブドウ樹が自らの身を守るためにブドウに栄養(糖分)を与えない時期もあり、ブドウの成熟スピードが太陽に恵まれている割に遅く、収穫のタイミングを見計らうのが非常に難しかったそう。赤に関しては、例年に比べるとタニックではあるものの、同時に素晴らしい酸もあるそうでアリアンナ自身凄く満足しているそうです。白は偉大な飲み心地を持ったヴィンテージとのことです!!
上記2ワインに加え、スペシャルキュベ、イル フラッパート2013 デーチマ ヴェンデンミア(“10回目のブドウ収穫”の意)も届いています。通常のフラッパートよりも樽での熟成期間を1年長くとったワインになります。生産本数1330本で、1本1本ナンバリングされています。
イル フラッパートというワインに込める想いをアリアンナはこう書いています。
“イル フラッパート、それは私が住みブドウ栽培をしている土地、私が呼吸している空気、そして私自身の想い、それらの息吹を感じるワインを醸してみたいという少女のころからの夢から生まれたワイン、ほろ苦く、生々しく、そして優美…。そしてそれらこそ、ヴィットーリアとイブレイ山地の持つ特性でもあり…。
イル フラッパートは多くの点で私自身と酷似している。恐れ知らずで、独特で、扱いづらい…。そしてフラッパートというブドウ品種は、ヴィットーリアという土地での歴史も古く、それゆえそのルーツ伝統を愛しているとも言え、それと同時に自身を進歩させるために新たな試みに挑戦するだけのポテンシャルを秘め、(自身の)元々の個性を見失う事なく洗練される術も知っている。
イル フラッパート2013デーチマ ヴェンデンミアは、10回目の収穫を記念して造られたスペシャルエディションで、コントラーダ ボンボリエリのシングルヴィンヤードから収穫されたブドウが使用されている。”
モンタルチーノの実験君、マリーノ コッレオーニのサンタ マリーアからは4種類のワインが届いています。
白を好んで飲む奥さんルイーザのために造り始めたビアンコ アンソニカは2015年が。トスカーナ最南部の海にほど近い町、カパルビオの信頼する農家から買い付けたアンソニカで造られるワインになります。淡い印象があった2014年と比べると、アルコール度数的にも2%ほど高くなっていますが、非常にスムーズな飲み心地がすでに備わっています。デイリーな白ワインの品揃えが慢性的に貧弱な弊社ですので瞬殺してしまうのではないかと…。
マリーノがロッソ トスカーナ用のブドウの買い付けているモンタルチーノの南にあるアミアータ山の麓の農家が売り困っているブドウがあるとマリーノに相談をします。品種を聞いてみたところ、ヴェルメンティーノという答えが…。一般的にヴェルメンティーノは、リグーリアからトスカーナにかけての沿岸部やサルデーニャ島の沿岸部各所など、海にほど近い場所で栽培される品種ですので、内陸の、それも標高がそこそこに高い地域で栽培されたヴェルメンティーノに興味を持ったマリーノ、二つ返事で買うことにします。ヴィンテージは2015、約200リットルの生産量です。ワインに関するコメントは、入荷数があまりにも少ないので差し控えさせていただきます(笑)。
残したブドウの凝縮感を上げるためにグリーンハーベストしたサンジョヴェーゼで仕込むロゼ、ロザート サンジョヴェーゼは2015が届いています。上記白ワイン以上にサクサクした飲み心地かもしれません!
そしてブルネッロは2011が!素晴らしい天候に恵まれた年で、ワイン自体も非常に調和がとれたものとなっていて、タンニンなどもボリューミーなのにキメが細かいので早い段階から楽しめるワインです。この年はリゼルヴァも造っているのですが、これがまた…実験君の実験君たるゆえんを皆さんも1年後に再認識することになるのかと。お楽しみに!
スーパーナイーブ農民詩人醸造家哲学者パン屋で天才鬼才なジャンフランコ マンカのパーネヴィーノからも3ワインが入荷です!
ビッルケの2013年が再入荷です。遅摘みしたブドウのモストを加え2次醗酵を促すというこのワイン、2013年ヴィンテージは同年のモストでは発泡せず、2014年の収穫時に全てのボトルを開け(!!)、目分量でワインを捨て、そこに2014年のモストを再添加してようやく発泡しました。2度にわたってモストを添加したこと、2014年の冬が暖冬だったこともあり澱(酵母)が酒石と一緒に沈まず、重量的に軽い澱が舞うワインとなっています。
ジャンフランコとしては、澱を避けて飲んでいただきたいそうで、澱がワイン全体に回る前にデキャンターに移し替えてお楽しみくださいとのことでした!なにしろ目分量でモストを入れていますので、ボトルによっては噴く可能性もありますので、キッチリ冷やしてくださいね!!
パーネヴィーノの2015年ヴィンテージは非常にタフな年となりました…。事件が起きた次の日(9/6)に僕の送られてきたメールの訳を載せますね。
“書きながらも、昨日起こったことを思い出すだけで手が震えてくるよ。
竜巻、サイクロン、暴風雨…なんて呼んだらいいのか分からないのだけど、ともかく拳くらいの大きさの雹と共に嵐が訪れて、ものの20-30分で全てを台無しにしてしまったんだ…。 ダ ダダにカメリエーレないし調理補助のようなポスト、2枠空いてないかい???”
そのメールの1か月後に僕自身の目で見た光景は本当に衝撃的でした。車のボディにある、明らかに丸いものが当たってできた無数の凹み、雹が直撃して折れてしまったブドウの枝、本来ならまだ樹についているはずの葉っぱは全て地面に叩き落とされ、樹によっては次の年に出すはずの新葉を出していたり…。
雹の深刻な被害というのは、被害を受けたその年だけにとどまらず、次の年以降にも確実に影響を与えます。一部のブドウ樹は死んでしまうでしょうし、死なないまでも重傷を負ったブドウ樹を救ってあげるためのドラスティックな剪定など…当然のことながら、従来通りの収量を期待することなどできません。そして今年の春に行った際にはモスカートが1本の樹から夥しい数の芽を出しているのを見かけました。ブドウ樹的にも、前年に受けた死を予感させるような事件がもたらしたトラウマが、子孫を残すために多くの芽を出させたのではないでしょうか…。
実に9割以上のブドウをこの雹で失ったジャンフランコですが、奇跡的に樹上に残っていたブドウをかき集めて、場合によっては地面に落ちていたものも拾いつつ、2種類のワインを仕込みました。どちらのワインもその名もズバリ、サバイバー(生存者)と言います。今回入荷のサバイバー ロザートは、全ての黒ブドウ品種を収穫直後にプレスして、モストのみで醗酵を行わせたロゼワインとなります。もう1つのサバイバー、ビアンコは次回入荷となります。
2014年ヴィンテージは合計6種類の赤ワインを醸造(すでにピカデとスキノセウがリリース済、3種類はラベルの完成待ち、1つはリリースされることはなさそうです…)したのですが、それらのプレスワインをブレンド、熟成させたものが今回入荷のBox’e Croxu (ボジェ クロジュ)です。イタリア語にすると“La voce della buccia(皮の声?)”。名前の由来がまたややこしく…。彼の解説を訳しますと、こんな感じになります。
“ “皮の声”は、とある架空の記事のタイトルみたいなもの。
Pressという言葉は、多くの国でプレス(絞る、絞り機)とプレス(出版関係)と両方の意味で理解されている。
ワインに関する事も含め、プレス(ジャーナリズム)が上っ面(本質、真意からはかけ離れた)の、分かり易く、そして荒削りな事ばかりを語ることと、
プレス(ワイン)が、皮という表面的な部分(の個性が強く出ている事)、明らかで荒々しい味わいの要素を持ち合わせている事をかけた名前になっているんだ。”
そしてワインの場合は、“プレス(ワイン)”が中身(ワイン本体?)を守るのに役立つのに対し、プレス(ジャーナリズム)は…が裏に流れるメッセージなのかと。
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