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2016-05-10

【新入荷】2016年5月 その1

Radikon

荷造りも全くしていませんが、5時間後には羽田に向かうバスに乗らなければいけないオータです(笑)。今回は3週間でフランス、ロンバルディア、ピエモンテ、カンパーニア、カラーブリア、ラツィオ、サルデーニャを周ってきます。僕自身、いつどこで本案内文が書き終えることになるのか、いささか楽しみでもあります…。

前回の案内で、ヒトは失敗からしか学ぶことができず、モノであれヒトであれ、それらがなくなってからでないとその尊さに気が付けないほどに愚かだったりする…などと書きましたが、またしても強烈な教訓警鐘が自然界から熊本を中心とした地域にもたらされてしまいました…。被害に遭われた方には心からお見舞い申し上げますし、1日でも早く平穏な日常が戻ることを願うばかりです。ヴィナイオータとしても、今後どんな事ができるのかを考えていきたいと思います。

こういった自然の猛威を目の当たりにした際、「災害も、豊かな恵みも、実は同じ力によってもたらされる」という、とある方の言葉を思い出します。おそらく誰 しもがこの事実を認識しているはずなのに、自分にとって都合の良い事だけが都合の良い状況で起こり続けるのを強く願うあまり、都合の悪い事も同様に起こり 得るという事に気が付いていなかったようなふりをする…そんな風に思うのは僕だけではないと思います。

長雨が続けばそれを嘆き晴天を求め、日照り続きの後の雨は恵みの雨などと呼んだり…同じ雨である事には変わりはないにもかかわらず…。

パーネヴィーノのジャンフランコが以前こんな事を言っていました。

「ワインの世界では、”平均的な”とか”例年通りの”収量とか言ったりするけど、それって一体なんなんだろう?本当なら、多少にかかわらず自然界から恵みを賜れる事自体が奇跡なんだと考えるべきなんじゃないだろうか?」

自然とヒトの関係性は、釈迦と孫悟空のそれと酷似していて、自分は強大な力を持っていると過信している孫悟空(ヒト)ですが、実は釈迦(自然、地球)の前では無力に等しい…。自分(ヒト)都合の目線視点では、その全容を捉える事など不可能なくらい巨大で複雑なものが存在し、その存在は決して僕たちの思惑、想像、予想通りに動くわけではないという事を忘れないようにする事こそが、僕たちヒトが辿り着くべき永遠のテーマと言えるかもしれません。

前回書いた事と重複してしまうのですが、主体的に生きている風な僕たちヒトも実は生かされているんだと思えた時、何気ない日常にさえも感謝の念を感じられるようになるのではないでしょうか。

それでは5月の新入荷ワインのご案内をさせていただきます!!相変わらず倉庫はパンパンです!!!!ちゃんと日程通り入荷させるためには皆さんのご協力が不可欠です!!では行きます???

「いやー、最近の誰々の造るワイン、ホント美味しいですよね!近年の誰々の進歩には目を見張るものがありますよね。」
などど言われる事が時々あります。その際挙がる名前の筆頭は、やはりラディコンな気がします。

「はあ?何言っちゃってるわけ??」と言い放ちたい気持ちをグッとこらえ、オブラートに何重にも包み込んでこんな事を伝えるようにしています。

“ワインが美味しくなった”という事象を考える際、登場人物は造り手、ワイン、飲み手の3人。

謙虚に、誠実に、常に問題意識を持ちながら、畑やセラーで仕事をしている造り手ならば、その時その瞬間の良心、考え、信念に従い、その瞬間のベストを尽くすはずですから、仮に天候条件に恵まれなかった年であっても、ちゃんと”その年なりの美味しさ(個性)”を備えたワインを出してくるはず。何かを知りに行く ためにリスクを冒し、その結果造り手的に納得できない味わいになってしまい、廃棄処分ないしバルク売りされてしまったものは、僕たちの視点(目線)からはその存在(売られた、廃棄されたという事実)さえも認識される事もありません。

苦労、挑戦、苦悩を厭わない造り手ならば、年を経て経験場数を重ねることで、ブレることなく自身の理想のワイン像を具現化できるようになるでしょう。そして、その”ブレずに具現化する”事を腕を上げると表現するのならば、ラディコンも含む大半のヴィナイオータの造り手は、僕と取引を始めた当時よりも確実に腕を上げています。

ワイン自身も時間と共に成長(熟成)しますし、特にそれが”生きたワイン”であった時には、想定外のスピード(遅いことも、そして早いことも…)で、全く予想もしないような変貌を遂げることがあります。

そして当然の事ながら飲み手の側も、時間と機会数を重ねる事で見識を深めていくわけですが、不思議と多くの人が自分自身の視点(ワイン観)、味覚嗜好が時間&経験と共に刻々と変化していること、そしてそれと同時に個々人の総体である共通認識(メディア等も含む)さえもドラスティックに変化しているという事実に気が付いていないような気がします。

マッサヴェッキアのワインが入荷と同時に瞬殺するようになったのはここ数年の話ですが、その当時瞬殺しなかった理由は数年前の彼らのワインがイマイチだったか らでも、造り手の腕が今ほどのものではなかったからでもなく、一部の熱狂的なファンを除き、飲み手側のマッサヴェッキアという造り手への信頼、愛情、確信が輸入量(僕の造り手への愛情、覚悟が反映した…)をボリューム的に超えることがなかった…つまり、変わったのは造り手じゃなくて世間の認識(どうやら売れてるらしい、美味しいらしいという噂も含め)なのではないでしょうか?

もともとは”変態ワイン”のウルトラ代表格だったラディコンのワインも、去年は白だけで7000本以上(750ml換算)が売れまして、この本数自体ちゃんと飲まれていなかったら絶対に達成できない数字だと僕は考えています。昨今オレンジワインとかいう、あまり意味を成してない言葉が市民権を得つつありますが、今現在ラディコンのワインに変態という枕詞を使う人が極めて少なくなったのは一体何故なのでしょう?ラディコンは1997年ヴィンテージ以降オレンジ一筋(笑)なのですが…。

と、前置きがバカみたいに長くなってしまいましたが、本当に本当に新入荷ワイン案内行きます!

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息子サーシャのアイデアで生まれた父スタンコのワインへの入門編的存在のスラトニック(シャルドネ&ソーヴィニョン)とピノグリージョの2013が届いています。2012も危険な飲み心地でしたが、よりリッチな2013も素敵です。瞬殺必至です。ほぼ同量が年内に再入荷予定です。

オスラーヴィエ&リボッラ2004&2005の現地在庫を完全駆逐しましたので、06を持ってきましたぁ!天候に恵まれた06&07にとって、約2年(3年??)リリースが遅れたことは、非常に有益有効だったと思います。06はパワフルですが、切れ味も鋭く素晴らしい飲み心地を備えています。数年ぶりにヤーコットもヴィナイオータのラインナップに復活です!

今のようなラインナップを志向するようになった当時(2001年頃?)から2010年くらいまで、僕の中にあったものは未知なる世界への純粋な興味と彼らの哲学理念に対する多大な賛同の意が主で、今ほどのレベルではワインそのものの事を信じ切れていなかったような気がしています。彼らの言っていることが至極真っ当で、世間で常識とされていることの方が変だと思っていましたが、その当時のオータ目線からは、「本当にこれで大丈夫なのだろうか?造り手のその選択は果たして正しいのだろうか?」と懐疑的にならずにはいられないワインがいくつかありました。そんなワインの中で、僕が一生忘れることがないワインが3つあります。

1つはマッサヴェッキアのアリエント02で、初めてマルヴァジーアが使われるようになった年。もう2つはラディコンの02と03の白全般。アリエントに関しては、ヴェルメンティーノの鋭さ、ミネラル感に魅せられていた僕的にはアロマティックなマルヴァジーアが入った事でワインが若干軽薄になった気がし、02のラディコンは雨がちな年でブドウの品質的には力がない年なのにもかかわらず樽での熟成期間を1年以上長くし、全生産量を酸化防止剤完全無添加でボトリング、さらに750ml&1500mlから500&1000mlへとボトルのサイズを変えるというわざわざ人生をややこしくしなくても…的選択をしたヴィンテージで、03は酷暑の影響でやたら濃いブドウができたため醸造的にも攻めた造りをした結果、揮発酸がただならぬ量生成され…。アリエントは問題なく美味しかったですし入荷本数も少なかったので瞬殺しましたが、ラディコンの02と03の売れ行きは、僕自身の懐疑心と同期するように、01が入荷した時ほどの勢いはなくなり…。ですが!!!!!!どのワインもリリース後4~5年の時を経て、僕の認識がいかに浅はかだったのかを完膚なきまでに思い知らせてくれました。アリエントは、雨がちな年だったことでアロマが先行していただけで、熟成とともにヴェルメンティーノのニュアンスが優勢になり、まるで酸化していたかのような02のラディコンは果実を取り戻し(つまり酸化ではなく還元していたという ことで…)、03も揮発酸バリバリのヤンチャ振りはどこへやら、雄大な雰囲気をたたえた大人なワインに…。

この度、セラー最深部に眠るバックヴィンテージを分けてもらえることになりましたぁ!!!!!!今更言うまでもありませんが、イタリアないし諸外国の方々の分を残す気など毛頭ありません(笑)。今回は比較的手前にあったオスラーヴィエ03が入荷です。そりゃもうメッチャクチャ美味しいです!

“時間軸を超越した”という名に恥じないだけの壮大さ持ち合わせたワイン、フオーリ ダル テンポの01が届きました!前ヴィンテージの2000年は暑い年だったこともあり、膨大な果実がある規格外のボリューミーさを持ったワインでしたが、今回の01は強く、しなやかで、深い!値段に怯まず大量に購入してきましたので、たっくさん飲んでいただけますと幸いです。

そして、赤ワインがぬあんと3種類届いています!まずメルロー01が??すべての要素が完全装備されたフルスペックワインとしか言いようがありません。

僕以上にこのワインのリリースを心待ちにしていた人はいないと断言できるワイン、モードリ03が満を持して登場です!Modriはスロヴェニア語でのピノ ネーロの呼び名。ラディコンは、ピノネーロをスロヴェニア側に所有する畑で以前から栽培していたのですが、収量が少なかったり単体で仕込む意味のあるテンションがないと判断して、メルローと混醸ないしブレンドされていました。なんと言いますか…ホント美味しいんです。こちらも社運を賭け大量に購入しちゃいました。

フリウリの赤の土着品種でネッビオーロやサンジョヴェーゼと並び立つような尊大さを備えたブドウは?と問えば、ラディコンだけでなく多くの造り手がピニョーロだと答えると思います。Pignoloは「小さなことにこだわる」とか「面倒な、厄介な」という意味があり、その名に違わず栽培も難しい上に、恐ろしくタニックでバランスが取れるまでに膨大な時間を必要とする品種です。今回入荷したのは2004年。5年の樽熟成ビンで6年寝かせてからのリリースとなりました。IGTのため、ブドウ品種をラベルに表記することができず、Pignoloの複数形でPignoliという名前で、ブドウだけでなく造り手自身も厄介なヤツという意味が込められているのかと。次回入荷予定はありません。

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