【ほぼ毎】アルベルト アングイッソラ、ラ ヴィショラ (2016年4月)
今我々の大きな課題は、素晴らしいワインをつくっていながらも、まだ陰に隠れてしまっているつくり手達を、どのように皆様にご紹介するかという事です。
「ヴィナイオータって全然在庫がないのでは!?」と最近よく言われるのですが、全くそんなことはありません!ご紹介したいワインがたっくさんあって、我々もうずうずしています。まだ出し切れていない情報をまとめて、皆さんに知っていただく機会を積極的に作りたいと思っています。
そこで、毎月1~2生産者にスポットを当てて、ヴィナイオータのスタッフが順番に持ち回りでご紹介していきます。
名付けて・・・“ほぼ毎月つくり手紹介”!!!(略して“ほぼ毎”)
第1 回目の4 月は、エミリア ロマーニャ州の「アルベルト アングイッソラ」と、ラツィオ州の「ラ ヴィショラ」を、気持ちはいつまでも新入生!でもすでに老眼鏡が手放せない、つくば本社の萩野(はぎの)が担当させていただきます。
★『ピノ ネーロに人生を賭けた男』 アルベルト アングイッソラ
エミリア ロマーニャ州西部のピアチェンツァ。その南西部の「Case カゼ」という場所に1998年に畑を購入したアルベルトは、ワインづくりの魅力に憑りつかれ、脱サラしてワインにすべてを賭けた、熱き醸造家です。その情熱は、自らが経済的に厳しい中でも熟成にしっかりと時間をとってリリースするという姿勢にも現れています。それは2009 年に日本との取引が始まった時点で、2002 年のワインがまだ熟成中であったという事からも伺え、私たちも最初から彼のワインを素晴らしい状態で味わうことが出来、ポテンシャルを知ることが出来ました。普通、ワインをつくり始めたらお金をまわすことを考えるでしょうから、何を優先させるべきかしっかりと理解していたのでしょう。
畑が530m-560m の高地にあった事から、ピノ ネーロのみでワインづくりをすることに賭けました。友人で「ラ ストッパ」の醸造担当を務めるジューリオ アルマーニ氏の協力を得て、2000年から「ラ ストッパ」のセラーを借りて(2009 年まで)ワインづくりを始めました。ジューリオが個人でつくる「ディナーヴォロ」は白ワインであるのに対して、自分は赤ワインを選んだのでした。やはり人の繋がりって大きいですね。しかしそれを決断し、モノにした彼もすごい!!
ピノネーロからスタンダードラインのカゼと、選りすぐりのブドウを長期間マセレーションした、カゼ リーヴァ デル チリエージョの 2つのワインをつくっていましたが、2011年には耕作放棄された、樹齢の古いバルベーラやボナルダなどの土着ブドウが植わった畑を借りて、白ワインも含めたラインナップを増やし、その地域の文化に根差したワインづくりを始める事が出来ました。現地で好んで飲まれる微発泡ワインもつくっています。またそれと同時に、大きな決断をします。勤めていた会社を辞め、ワインづくりのみで生きていくことを決意しました。
そのブドウや土地の個性だけでなく、彼の考えや生き方がどのようにワインに現れているのかを思いながら飲んでみると、違った一面が見えるのではないでしょうか。ワインづくりへの興味から始まり、ワインのみで生きていくという覚悟をするに至る。エレガントな中にも芯の強さが見えます。年ごとにすごい成長を見せる彼のワインは、毎年新しいワインが届くたびに楽しみです。
カゼビアンコ 2014 <白>
アロマティックなブドウとニュートラルなニュアンスのブドウのブレンドですが、絶妙に調和しています。乳酸を思わせる濁りがあって、まったりと優しい味。でもかなり攻めてますよ!
トレ ヴィーエ 2012 <赤>
高樹齢のバルベーラとボナルダ。派手さはないものの、熟したブドウの甘みをしっかりと感じ、とても親しみやすいです。気軽に飲めるワインですが、奥行きと複雑さがしっかりあります。現状、微発泡はほぼ感じられません。
カルカロット 2013 <赤>
実は「トレ ヴィーエ2013」なのですが、その名前が使えなくなったのか(?)、こちらに変更。ブドウの味がピュアでクリアー。2012 よりも芯の強さを感じます。
カゼロッソ 2012 <赤・微微発泡>
「トレ ヴィーエ」と元々のブドウは同じですが、瓶内での発泡を促すために、少し残糖がある状態で瓶詰め。ところが2012 は軽やかでフレッシュ感はあるものの、発泡がごくごくわずかです。
※カゼとカゼロッソは別のワインですので、ご注意ください!
カゼ 2013 <赤>
毎年驚くべき進化を見せる、ベーシックなピノネーロ。輪郭がくっきりとしていてエレガント。まるで欠点のないワインですが、くっきりとしたブドウの味は、親しみやすいです。
カゼ リーヴァ デル チリエージョ 2012 <赤>
トップキュヴェの畑名入りは、芯が強くてポテンシャルを感じさせる集中力があります。長期熟成に向くワインですが、2012 年は柔らかさのあるヴィンテージですので、今飲んでも分かりやすいです。
★『優しくて頼りになる親父』 ラ ヴィショラ
ローマからナポリ方面へ車で1時間半ほど。ピリオというエリアは、パッセリーナからつくる白ワインと、チェサネーゼからつくる赤ワインが中心となりますが、有名なワイナリーがあまりないこともあってか、日本ではお目に掛かることが非常に少ないです。
まさに“農民”を地で行く色黒で無骨な顔立ちのピエロは、奥さんのローザと2 人の娘達との4人家族。現在彼が所有する畑(標高330m)は2ha で、ローマでの会社勤め(測量士)を今も続けている為、平日の畑仕事はローザが手伝っています。
私(萩野)が、前職の時代に知り合ったのですが、2008 年にヴェローナ郊外で行われているナチュラルワインのサロンでテイスティングをしていた時に、ブースの前を通りかかると、1 種類の赤ワインだけをテーブルに置いている、真っ黒に日焼けしたおじさんと目が合いました。顔はいかついのに、人懐っこそうな目がキラキラしていたので、すごく気になったのです。彼、ピエロ マッチョッカのワインを試飲してみると、極端な強さと極端な優しさが同居している、なんとも不思議なワインでした。でもよく考えると、このおじさんを見た第一印象と同じだなと。当時は樽の香りが強かったのですが、ブドウのポテンシャルと旨みを強烈に感じたことを覚えています。
ところが聞いてみると生産量があまりに少なく、地元で完売している為、売るワインが無いと。「じゃあ、何しにここに来とるんや!」という言葉をぐっと飲み込み、それでもその数日後にローマで半日の時間を空けて、ピエロを訪問することにしました。その当時わずか1ha の畑では、ビオディナミを実践し、調合剤を定期的に使用していましたが、必要以上に何かを入れることは避け、基本的に瓶詰めまで完全に亜硫酸無添加です。つくっているワインは赤1 種類だけで、少なくとも2 年先までは買えないという事でしたので、気長に待つことにしました。
その翌年、待たせて本当に悪いので、白ワインを少しだけ買ってもらえるようにしたという連絡がありました。実はセラーの中で、ダミジャーナ(大きな瓶)で熟成させていた自家消費用の白ワインがめちゃめちゃ美味しかったのですが、それを瓶詰めしてもらえるという事でした。旨みたっぷりで魅力的に濁った白ワイン。それが奥さんの名前を付けたドンナ ローザ。
赤ワインはその1 年後にようやく日本に入荷し、現在は畑が2ha に増え、2011 年からは近所の農家からブドウを買ってつくる「ヴィチナーレ」をリリース。赤は現在では樽のニュアンスもほぼ無くなり、素朴で親しみやすくて口に入れた時にはアグレッシブさと独特の風味がありますが、時間とともに旨みをまったりと感じて気持ちよくいつまでも飲めそうな感じです。抜栓後時間が経つことで(目安は数日~2週間)違った魅力が感じられますので是非お試しください。時間が経ったものは特に、飲み始めたらやめられなくなります。毎年飲んでいても、最初に出会った時のピエロそのまんまの、優しくてもどっしりと安定感のある、家族を守る親父のようなワインです。
ドンナ ローザ 2013 <白>
奥さん“ローザ”の名前をつけた白ワイン。香りや味に華やかさはありませんが、落ち着いた味わいで、輪郭がくっきりしていてほどよい酸味と清涼感があります。
チェザネーゼ デル ピリオ ヴィチナーレ 2013 <赤>
ご近所(ヴィチーノ)の有機栽培農家から分けてもらったブドウでつくるので、少し安め。他の赤よりもタンニンが少なく、しなやかでスルスルっと飲めます。
チェザネーゼ デル ピリオ ヴィニャーリ 2013 <赤>
口に入れた瞬間から何の引っ掛かりも違和感もなくなく、生き生きとして広がりのある味わい。
チェザネーゼ デル ピリオ ユ クアルト 2013 <赤>
味わい的にはヴィニャーリに近いですが、最初の味と風味にボリューム感があります。
チェザネーゼ デル ピリオ モッツァッタ 2013<赤>
赤の中では最も強さとタンニンがありますが、この年は果実味が前に出てきていて、開けてすぐにブドウの甘味をしっかりと感じます。
どちらのつくり手も派手さはないものの、一度飲んだらまた飲みたくなるワインばかりです。是非お試しください!
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