【新入荷】2017年4月 その2
先日、家族で浜松を訪れたのですが、そこにはビオ・アツミ エピスリー浜松というまさにスーパーなスーパーマーケットがあります。品揃えのえげつない事と言ったら…オータ家、一回のお買いものでウン万円使ってしまいました(笑)。生鮮食品、調味料、乾物、お酒、そしてお弁当&お惣菜、どこをとっても全く隙のないお店で、食に興味ある人からすれば楽園のような場所です。僕たちのようなよそ者が興奮気味にあれもこれもとなってしまうのは置いておいて、近隣の住民であろう人たちがちょっと高いかもしれないけど真っ当なものを普通に購入している光景を目の当たりにして、ヴィナイオータが目指すべきところも再確認させてもらいました。本質的であったり真っ当という意味で、本来ならば“主要、重要(メジャー)”と認識されなければいけないものが、数の論理の上では少数派(マイナー)であるという状況そのものがちょっと変であるということ。メジャー(大多数)とまではならなくとも、そういったものが少しでも多くの人にとって極々普遍的なものとなり、昨日より今日、今日より明日には少しでも脱マイナーを実現できている世の中をどのように築き上げていくか…ヴィナイオータはその一端を担いたいと常々考えていますし、その方法をいつも夢想しています!!
それでは4月第2週の新入荷案内行きます!今月も濃厚ですみません(笑)!!!!
ワイン醸造の過程のいかなる場面においてもブドウ以外の何物も使用しないという、ワイナリーの根幹を成す理念的には想いを同じくする2人なのに、追い求めているワインはほぼ真逆な、シチリアのテロワリストことフランク コーネリッセンとサルデーニャのスーパーナイーブ農民詩人醸造家哲学者パン屋にして鶏を捌かせても凄いジャンフランコ マンカのパーネヴィーノからいろいろ届きました!!
まずはフランク!!白ブドウを主体に少量のネレッロマスカレーゼを混醸して造られるロゼワイン、ススカールなのですが、2015ヴィンテージはフランク自身が満足のいくものにならなかったという事でボトリングを断念します。曰く、醗酵中から還元傾向に陥りがちだったため澱引きを頻繁にしたところ、彼がロゼワインに求めるフレッシュさを失い、より赤ワイン的な味わいになってしまったとのこと…。というわけで、ススカールは次ヴィンテージが2016ということになり、今夏-秋の入荷を予定しております。ススカール2015としてはボトリングされることのなかったワインですが、味そのものに問題があったわけではなかったので、一部をコンタディーノとして仕込んだワインにブレンドし、それをコンタディーノ2015としてリリースすることに!というわけですので、とってもまとまった本数が買えることになりまして、今回はその一部が入荷しております!バンバン使っちゃってください!!!マグナムと3リットルビンも同時にリリースします!
さまざまな区画のネレッロ マスカレーゼのブレンドしたワイン、ムンジェベル ロッソは2015ヴィンテージが届いています。6月の強風により、通常の収穫量からすると3割減となった2015ですが、残ったブドウの質自体はとても満足のいくものだったそうです。キャラクターとしては、可愛らしい果実のある“ブルゴーニュ的”な雰囲気で、2012、13、14と続いた“濃厚な”ヴィンテージの後にはこれもまた良しなのでは?とのこと。
ムンジェベル ロッソのクリュものは、2014ヴィンテージから新たなクリュも加わり、計4種類が届きました。各クリュに関してですが、
・PA(Porcariaポルカリア):標高640mのフェウド ディ メッツォ地区にあるポルカリアという名の高樹齢のネレッロが植わるクリュ。他のクリュと比べるとブドウに完璧な熟成をさせるのが難しいのだけれども、それが叶ったヴィンテージにはパワーと洗練された優美さを兼ね備えたワインとなるため、クリュを名乗るにふさわしいと考えたそう。
・CS(Chiusa Spagnolaキュウザ スパニョーラ):ソリッキアータ村にある、1930年代に接ぎ木することなく植えられた畑で、標高は620mと比較的低い立地。周りを溶岩流が固まってできた岩に囲まれた土壌のためか、強いタンニンが特徴。マグマを生み出すパーセル、バルバベッキも、標高こそ違えど、同じ村の同じ土壌特性の畑。
・MC(MonteCollaモンテ コッラ):エトナ山の向かいにある、モンテ コッラの南西むきの急な斜面にテラス状にある、1940年代に植えられた畑。土壌特性がエトナ山北斜面とは大きく異なる砂質粘土土壌となっていて、濃密でヴォリューミーなワインができる。
・VA(VigneAlteヴィーニェ アルテ):フランクが所有する最も標高の高い3つのパーセル、タルタラーチ、バルバヴェッキ、モンテ ドルチェのブドウで造られる。どの畑のブドウ樹も接ぎ木をしていない。エトナ山北斜面の、標高の高い区画に自根で植えられた高樹齢のネレッロ マスカレーゼが備えるべき精確さやその偉大さを余すことなく表現しているワイン。
そしてマグマ2014も届いています!リッチにしてエレガント、そして深いとフランクが表現する、バルバベッキ区画の中でも標高の高いより小さな区画のネレッロのワイン。
さらに!!!オイルも届きました!!!!!それも全3種類、コンタディーノ、ムンジェベル、そしてマグマまで!!!!オイルのマグマっていつ以来だっけ?と思い調べてみたところ、なんと2008でした…。ちなみにですが、当時の入荷本数は16本でした(笑)。今回はそれぞれまとまった本数のオファーをもらって喜んでいたのも束の間、マグマの値段を見てビックリ、08の約2倍になっているではありませんか(笑)!!!あまりにも高すぎたので、利益乗せずにお出しします!が、その利益なしの値段を見てみなさんもビックリしちゃってください。各オイルに関してですが、
・コンタディーノ:ブランドルフィーナやノチェッラーラ ディ エトナなどの粒の比較的大きめな品種を使用。火山岩性土壌に由来する、濃さと繊細さを兼ね備えたオイル。750ml入り。
・ムンジェベル:サン ベネデット、フラントイアーナ、カロレアなどの粒が小さめの品種を使用。余韻の長さ、フィネス、スモーキーさを備えたオイル。500ml入り。
・マグマ:サン ベネデット種のみで造られるオイル。完璧な天候に恵まれた年にのみ生産される。500ml入り。※小売価格(税抜):14,000円
パーネヴィーノからは一挙6種類が入荷です!相も変わらずそれぞれのワインにストーリーがあり過ぎです。6種の詳細ですが、こんな感じとなっております。
・Survivor Grogu(サバイバー グログ)2015:ラベル左側にはVino Rosato(ヴィーノ ロザート=ロゼ ワイン)と書かれています。ご存じのように、パーネヴィーノの2015年は9月上旬の激しい雹(モノによっては拳くらいの大きさのものも…)が2-30分にわたって降り続けたせいでブドウは壊滅的な被害を受け、実に予定されていた生産量の9割以上を失ったわけですが、奇跡的に生存した黒ブドウでロゼワインを仕込み、それが前回、前々回入荷のサバイバー ロザートになります。に対して、白ブドウらしきもので仕込んだのがサバイバー ビアンコ(仮名)なわけですが、雹の影響で一部のブドウが白なのか黒なのか判別がつかないものがあったらしく、黒ブドウが混入していた時に備えて御上への申請時にはロゼワインということにしておきます。が、出来上がったワインはGrogu(サルデーニャ語で黄色)だったという…。
・Foreign Grapes(フォーリン グレープス)2015:大半のブドウを失い、当面の生活費を捻出するための方法を考えざるを得なくなったジャンフランコ、買いブドウでワインを仕込むことにします。幸いなことに、サルデーニャ島の各地に「ジャンフランコが自分のブドウを醸したら、いったいどんなワインができるのだろう?」と考えていた人たちがいまして、そんな友人たちからヴェルメンティーノ、カンノナウ、カニュラーリ(黒ブドウ)を分けてもらい、それぞれを別個に醸造します。最終的にカンノナウとカニュラーリはブレンドされまして、出来上がったワインがこのフォーリン グレープス(よそ者のブドウとでも訳せば良いでしょうか…)になります。それらのブドウが生まれた土地、その土地その年の気候、そしてブドウ樹とも親交を深めたことがないため、ジャンフランコにしては保守的なといいますか、無難な造りをしたワイン。
・Tino Rosa(ティーノ ローザ)2015:ティーノはヴェルメンティーノのティーノ。 買ったヴェルメンティーノで造った白…となるはずだったのですが、ロゼっぽい色になっちゃいました。前述のカニュラーリの醗酵が終わり、フリーランで出てくるワインを別のタンクへと移し、その直後にヴェルメンティーノにも同様の作業をしたそうなのですが、カニュラーリに使ったチューブを洗わずにそのまま使ったところ、あーらビックリ!ロゼ色のワインが出てきたという…(笑)。公式(?)的にはヴェルメンティーノ95%、カニュラーリ5%となっているようですが、小さなセラーですからそんなに長いチューブも必要ありませんので、カニュラーリの割合は1%もないはずです。
・Cretino(クレティーノ)2014:2011ヴィンテージでリリースされたタンカリカンティのマイナーチェンジ ヴァージョン。タンカリカンティはアリカンテとカンノナウで造られていましたが、クレティーノはアリカンテとボヴァーレのブレンド。タンカリカンティはワインというよりも薬草酒なんじゃないかというくらい苦みばしっていましたが、今回のクレティーノは非常にジェントル。
・Cicipi’(チチピ)2014:CCPをイタリア語のアルファベット読みするとチチピとなりまして、その読みを文字化するとCicipi…。CCPはこのワインに使われているカンノナウを産する区画Cugussi,Cortemuras,Perdacodduraの頭文字になっています。ジャンフランコ流のワインのイメージとしては、ロビンフッドが馬に乗ってコケモモの茂みに踏み入りながら森を進み、ワイン(カベルネフラン!)の入った樽をコケモモの枝で隠したかのような…との事(笑)。
・Picci’(ピッチ)2014:家の周りの畑と高樹齢の樹が植わる区画で獲れたカンノナウ。ジャンフランコ的には、バニュルスのような海に面した岩壁、塩気、地中海を想起させる様々なハーブ…だそう。
ジャンフランコは、パオロ ヴォドピーヴェッツと対極をなす天才なんだと僕は考えています。かたやヒューマニティ溢れまくっているワインを醸すことを良しとし、そしてもう一方はワインから“我”をどこまで消し去ることができるかを追い求め…ワインに対するアプローチは全くもって交わらない感のある2人ですが、互いに滅茶苦茶尊敬し合っていたりするのも非常に興味深く…。結局のところ、“する”も“しない”もどちらかを選択している時点で“している”ことになるわけで、場面場面で訪れる“する”か“しない”の選択は、その造り手のその瞬間の感性、観点、哲学、知識、経験、良心、精神状態、経済状況などに強く影響を受けたものである…ということも“自然”なことなんですよね…。これだからこういうワインって面白いのかと!!!