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2011-11-10

造り手紹介 カーゼ コリーニ その1(2011.11筆)

第8弾は教授、ことロレンツォ コリーノのワイナリー、カーゼ コリーニです!!

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バルラにて、100歳級のバルベーラとロレンツォ。ダンディーです!ロマンチストです!!そしてお茶目です!!!

教授に関しては書くこと、書きたいことがいっぱいあるので収拾つかなくなるかもしれません・・・。彼、そして彼のワインとの出会いは色々な意味で衝撃的でした。

僕とサノヨーコが大変お世話になっている、ボストン出身の女性で、イタリアワインへの深い造詣と知らない造り手はいないんじゃないかというくらいの顔を広さを持つ人がいまして、その彼女が僕たちにロレンツォを紹介してくれたことがきっかけでした。なんでも、バルベーラで酸化防止剤を全く使わないワインを造っていて、畑は恐ろしく樹齢が古く、とんでもないこだわりで農作業もしていて、etc・・・。自家消費レベルでなくワインを造っている人で、そんなにこだわってやって、高品質のワインを造っている(ボストンの女性談)のに、造り手の間で語られることがない・・・。

告白してしまいますが、ちょっと大袈裟なんじゃないの?って思ってました。そんなすんごい造り手が本当に埋もれている(世に出ない)はずがないって。2003年当時、クルティエとしての仕事を始めたサノヨーコ、ダーリオ プリンチッチをインポーターに紹介する造り手第1弾としてスタートを切ったわけですが、紹介するネタが多いに越したことはない。サノヨーコも、「しゃちょう(僕のこと)、興味ある?」って聞いてはくれたけど、やはりここはサノヨーコに任せようと、彼女と彼女の唯一の取引先でもあった某インポーターHさん(あれ、このHさん、今うちにいるような気が・・・)とが訪ねることとなりました。訪問後、2人ともかなりのカルチャーショックを受けたようで、ロレンツォの事を熱く僕に語るではないですか。

でも相変わらず疑心暗鬼な僕。アンジョリーノの家で、初めて飲ませてもらったラ バルラ1997を初めて飲んだ時の動揺は今でも忘れられません。「なんだこれ、バルベーラで造ったアマローネじゃん。(ちょっとつけ放す感じで)」というようなことをコメントしたと思います。

完熟というより、過熟させたかのようなブドウの香り、恐ろしいまでの果実味、ヴォリューム、アルコールがあるのに凄く飲み進む・・・。あたまの中では????が付いたまま、数年経った2006年秋、ついに彼と出会います。

そしたら話の合うこと合うこと!農業に関すること、ヒトと自然・・・本当に腑に落ちることばかりで、会話が楽しくて楽しくて・・・。

大量のエネルギー消費を伴う現代の大規模な農業に対して異を唱え、“持続可能な”農業の重要性を地質学を専門とする学者の立場から説き、その証明の場として、家業でもあったブドウ栽培とワイン造りを行っています。畑では年2-3回のボルドー液の散布以外は一切の農薬を使用せず、無施肥、不耕起、無除草を実践、樹齢の高い樹から、圧倒的な凝縮感、熟度のブドウを収穫している。セラーでも、人為的関与はできる限り避けるようにしており、長期間の醗酵・マセレーションを行い、できるだけ樽の移し替えも行わず、醸造からボトリングまでのどの過程においても酸化防止剤を使用しない。

とこんな感じで、畑でもセラーでも“ないない尽くし”の感のあるロレンツォ、“絶対やらないんだ!!”という感じに肩をいからせてやっていないのではなく、論理的な観点から“やらないこと自体が理にかなっている”と判断しやっていないように見受けられます。先人の教えの中にとても深い含蓄があることを経験から学び、そこに科学的な裏づけも取る・・・。僕が当初、過熟気味なんじゃないかと思っていたブドウの熟度も、彼の考える“完熟”の定義が他の人たちと全然違うところにあるということが彼と話すことで理解できました。

一般的には、糖分量と糖分と酸のバランスなどから収穫の時期を判断するのですが、彼は極端な話、種しか見ていません。ブドウを食べ、種を噛み砕いた時にカリッとナッツのような食感の時、種は茶色になっています。それが、種自体が次世代を残す準備ができた、成熟しきったという証で、ブドウ(樹であり、果実であり)が、とあるサイクルを終えようとしているサインなんだと言います。ですので、彼のワインはヴィンテージによってアルコール度数がまちまちだったりしますが、それこそヴィンテージの天候的、気候的特徴が結実したものなわけで、毎年糖分(つまり出来上がりのアルコール度数)を見ながらブドウの収穫のタイミングを決めるよりも、判断基準にブレがないように思えるのです。

カミッロ ドナーティという、パルマ近郊で微発泡性ワインを造る造り手が、「昔の人は8月には収穫をするな9月に入ってからしろと言ってたから、2009年も守ってみたら、潜在アルコール度数15%の発泡しないランブルスコができちゃって・・・。地球自体の気候が変化しているわけだから、我々も柔軟に対応すべきなのかなぁ。」と言っていたのですが、後日、ロレンツォからこの8月が指しているものが旧暦であること、つまり8月の終わりとは秋分の日をまたぐことを指し、ブドウが冬眠から目覚め、春に芽を出し、初夏から夏にかけて成長(生長?)し、秋に子孫を造る、このサイクルこそが重要なんだと先人は言っているのだと教わりました。そして彼は、秋分の日を境に、それがどんなに暑かった年であっても、日中と夜間での大きな温度差が生まれ、夜間の冷気を受けたブドウは当然のことながら日中の収穫時にも温度が低く保たれ、収穫から醸造に至るまでの過程でのネガティヴなバクテリアの繁殖を抑制できると言います。

2011年は、全イタリア的に4月は異常に暑く(30度を超えた所も)、6-7月の冷夏、8月中旬から10月上旬まで続いた猛暑・・・ブドウの糖分が上がり過ぎると多くの造り手は考え、収穫を早めるなか、マッサヴェッキアのファブリーツィオは近隣の造り手が収穫を終えていても、夜間の気温が下がるのを待ったといいます。そして気温のまだ低く、ブドウに朝露の付いている(その朝露でアルコール度数を下げることも視野に入れて!)午前の早い時間にのみ収穫をしたそうです。

あくまでも自然に逆らわない手法という制限された条件下で、個々の造り手が彼の創造性の中でベストを尽くす、いやー、本当に凄い人たちだなぁ。

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バルラの畑、リンゴの樹。ブドウ畑の中にも他の樹があることや、畑の周りに森が残されていることも重要だとロレンツォは力説します。このようなワイン造りって、筋書きのない漫才のようなものだと思うのです。

天才松本人志でもすべりかけることもあり、それを浜ちゃんの突っ込みで、総合的には面白いと思わせてしまう。

自然がボケて、ヒトが突っ込む。

ボケが冴え渡っている時は突っ込みもほどほどのテンションでいいが、ボケの切れが悪かった時は突っ込みのテンションは上げていかなければいけない。

天候的にも恵まれ、健全なブドウが獲れた時は、ヒトがセラーで施すこと、注意のかけ方はミニマムで済むのに対して、天候的に難しく、健全とは言い難いブドウの年は、畑&セラーでの仕事に細心の注意が必要になる・・・。なんだか似てないですか?

ロレンツォのやらない尽くし話に関しては、こちらにも色々書いてありますのでご興味のある方は読んでみて下さい。

お出しするワイン:
VINaiOTa(ヴィノット) 2007 ※
Achille 2007
Bricco 2003
La Barla 2007
La Barla 2006
Centin 2007
を予定しています!!

※ヴィノットはラ バルラの弟分にあたり、こんな誕生秘話があります・・・。

彼がボトリングしているワインはフリーランのワイン(醗酵槽の下のバルブを開けた時に自然に出てくるワイン)のみで、果皮がスポンジの役割を果たして残ってしまうワインはプレスもせずにそこらに捨ててしまっていることを知りました。

後に理解することになるのですが、長期のマセレーション&醗酵を行わせ、その醗酵しきったワインをプレスしないことで、ワインは澱が非常に少ない澄んだものとなります。澱が少ないわけですから、樽で熟成中にも還元することはめったになく、その為樽の移し替えの回数も減らすことができます(樽から樽へ移し替えることで、澱引きができるのと、ワインを空気に触れさせることができますから、還元からもとの状態に戻してあげることができるのですが、当然酸化のリスクも伴い、醸造・熟成期間中に酸化防止剤を使用しない造り手はできるだけ移し替えの回数を減らしたいと考えています)。といった感じで、彼の手法は非常に理にかなってはいるのですが、“捨てる”という行為に納得できない僕。

天候に恵まれた年の、健全なブドウで造るワインからはあまり澱が出ないということもロレンツォから聞かされていて、プレスしたワインはアルコール度数が若干下がる(ゼリー状の果肉部分には純粋な水分が残っているので)のを知っていたので、

僕:「ロレンツォ、自分で自分のワイン毎日、食事の度に飲みたい?」
ロレンツォ:「いや」
僕:「なんで??」
ロ:「シリアスだし、カジュアルに飲むにはしっかりし過ぎているし、アルコール分も高いし…」
僕:「だったらちょっと絞ってみたら?度数も下がるし、より普段飲みっぽいワインになるんじゃない?そして何よりも、ワインを捨てなくて済むんだし。農業の世界では持続可能って言葉に拘っているわりに、商品になり得るものを捨てるってちょっと矛盾してない?」
ロ:「うーん、しかし私にとっては絞ったのはワインでさえなく…。澱も入ってしまうから私のようにSO2を使わない生産者としては…」
僕:「ワ・イ・ンです!それに、ブドウが健全な時にはあまり澱出ないって自分で言ってたじゃん!」
ロ:「・・・・・・・・・・」

そして時は流れ2007年の秋に彼のところを訪ねてみると、セラーの奥にあった、埃を被っていたトルキオ(垂直式木製手動プレス?)がピカピカになっているではありませんか!

僕:「あれ??」
ロ:「君に納得させられちゃったから…。父が使っていたもので、私の代になってからは使っていなかったんだけど…。」
僕:「じゃあ、絞るってこと(喜)??」
ロ:「でもバルラしかやるつもりはないし、絞るって言ってもかるーくだけどね。私にとって、絞ったワインはもはやワインではな…」
僕:「イエーイ(茶化す感じで)!」

そしてさらに時は流れ2010年、他のワインとは違うということを示すべく(ロレンツォ、最後の抵抗)、全てマグナムにボトリング、造らせた張本人が責任を持って引き取るべしとのことですので、全生産量が日本に来る事になりました(今回は半分だけ)!名前は彼の父親、祖父がプレスしたワインのことをそう呼んでいたとのことで、Vinot(ヴィノット、小さなワインの意)となり、ほとんどVIINaiOTaだ!ということで、裏ラベルにはVinaiotaと書いてあります…。

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2011年4月18日、ヴィノット2010製作風景。

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