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2007-09-22

トリンケーロ-フランクとの出会い

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2001年に取り扱いが始まった造り手の1人がトリンケーロだ。

2001年のヴィニータリーでは、アンジョリーノ、ラディコン、ラ・カステッラーダ、ムレチニック、ダーリオ・プリンチッチが共同で借りているブースで、あるベルギー人と初遭遇した。アンジョリーノからは、ワインに関するハンパない見識、天才的なテイスティング能力等、噂はかねがね聞いていた・・・そう、フランク・コーネリッセンです!男前だが、非常にチャーミングというか茶目っ気がある奴というのが第一印象でしょうか。
彼がエージェントを務める造り手のワインをそのブースで紹介していて、名刺代わりにって感じで飲ませてくれたものが、現在のヴィナイオータのラインナップの中でも重要な位置にある、トリンケーロ、アッコマッソ、ラ・カラブレッタだったのでした。フランク、アッコマッソとラ・カラブレッタに関しては後日触れるとして、トリンケーロのワインですが美味しかったこと美味しかったこと!
一瞬話がそれますが、僕も名刺代わりにと、前日に造り手からもらっていたパオロ・ベアのサグランティーノ・セッコとサグランティーノ・パッシートをフランクや先生方にも飲んでもらいました。奥様方にはパッシートが受けていたこと、そのパッシートにカビの香りを感じる(もちろん当時の僕には理解不能でした)といったカステッラーダのニーコ大先生など、色々な反応があったのですが、この時のフランクの表情は一生忘れないと思います。
知らないワインを試すということで、嬉しそーーーにコルクを抜き、グラスにワインを注ぎ、ほんの軽くスワリングし、鼻をグラスに近づけ、ひと嗅ぎした直後、顔を赤くし、小さくガッツポーズをしながら、”Yes!!”。いやー本当に嬉しかったなぁ、あの反応は。香りだけで、あそこまで確信のレベルで、ワインの素性を見分けられるなんてほんと凄いなぁ、どうしたらああなれるんだろうって思ったんだった。まだ今ほど感覚的な部分では固まってなかった僕からしてみたら、まさしく天才だったし、この時点ではほぼ僕のアイドルでした、彼は。

で話を戻しますと、この当時、バルベーラを使った”良い”ワインといえば、どれも木(樽)の香りしかしないようなものばかりで辟易していたのですが、ヴィーニャ・デル・ノーチェの97年の美味しさには本当に面食らいました。ムンムンとした果実味にアルコール、それをバツンと切ってくれる偉大な酸・・・。
ヴィニータリー後、早速訪ねてみると、当主のエツィオは気さくで、快活で、自分のワインのことになるとお喋りが止まらない素敵な兄さんでした。
お互いのことをかなり理解した今では、彼のところ行ってもワインの話はセラーで試飲しているときだけで、他はバカ話ばっかり。日本人の持つ、イタリア男性のイメージを決して裏切ることのないプレイボーイで、バイクと音楽と美味しいものが好き(彼に連れて行ってもらうレストランはどこも本当に素晴らしい)。
自分のワインを絶賛する時の大袈裟な言い回しにはいっつも笑っちゃいますが、決して誇張などではなく、本当に美味しいものだけ美味しいと言う。他人のワインを飲む時も、先入観なく(多くの造り手はここから脱却できない)、いち飲み手として楽しむ。そして人のワインを本当に良く飲んでいる。これができている造り手っているようであまりいない。

トリンケーロは、バルベーラ ダスティがDOCに昇格した際(1953年だったかな?)、一番最初にDOCとしてボトリングすることを許されたワイナリーです。元々は40ヘクタール以上の広大な畑を所有していたのですが、質を高めるためには量は生産できないと考えたエツィオは、最良の区画10ヘクタールほどを残し、大半の畑を売却してしまいました。
栽培している品種も、
バルベーラ
ドルチェット
フレイザ
ブラケット
メルロー
グリニョリーノ
ネッビオーロ(2003年に、樹齢の古いドルチェットにネッビオーロを接木)

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アルネイス
マルヴァジーア
シャルドネ
と多岐にわたりますが、バルベーラ以外のブドウはそれぞれ極少量の生産になります。

バローロやバルバレスコのあるアルバ地区に比べると、粘土質でより肥沃な地質を持つアスティ地区ということもあり、施肥をしなくてもアルコール度数の高い、凝縮した果実味を持つワインができると考えるエツィオは一切の肥料を撒かず、ボルドー液以外の、除草剤などの化学的な薬剤に頼らない農業を行っています。

樹齢が15年に満たないバルベーラのワインは基本的には桶売りをしてしまいますし、2007年時点でバルベーラ・スーペリオーレでも現行ヴィンテージが2001年、クリュクラスにいたっては、97、98、99年でまだボトリングせずにタンクで熟成させているものもあるなど、普通の造り手ではまず考えられないことを多々行っています。
もともとかなりリスクの伴う造りをしてはいたのですが、ラディコンなどと付き合うようになり、さらに踏み込んだ醸造を行っています。現在では白ワインも皮や種ごと醸造します。

そこでこのワイン!

Vino da Tavola Bianco A-iuto!2005(裏ラベルには2  5と表記)

多雨に見舞われた2005年はトリンケーロにとっても難しかったヴィンテージで、収穫時には厳しい選果を余儀なくされました。そのため、もともと少量生産の白ワイン3種類も生産量が半減し、単一でボトリングしたとするとシャルドネとマルヴァジーアは1000本にも満たない量しかできないとわかったエツィオ トリンケーロは、白3種類全てをブレンドすることにしました。2006年の秋にブレンドされたものを飲んだ時、そのバランスの良さには本当に驚きました。単体ではチャーミングだが線が細いアルネイス、良年であればアルコール度数15%を超えるパワフルなシャルドネに魅惑的な香りの反面、苦味も出てしまうマルヴァジーアのブレンドは互いの持ち味を生かした素晴らしいものでした。
僕が常々、サッサイアの価格帯でサッサイアと比肩できる白を探していた事を知ったエツィオ(彼もサッサイアを愛する1人なので僕の気持ちが分かってくれたのでしょう)が、従来の彼の白(シャルドネ、マルヴァジーア)に比べ安価でこのワインを提案してくれ、わが愛息の生まれ年の2005だったということもあり、公私混同をさせたら日本一の僕は全量を買うという条件で名前まで付けさせてもらうことにしました。イタリア人に息子の名前を覚えてもらうために使っていた“Aiuto(発音的にはアユート)”という“助け、援助”(!を付けたら“助けて!”)を意味する言葉と“A Yuto”(Aはイタリア語の前置詞で、ゆうとに、の意)を掛けてみまして、ラベルのデザインはエツィオとサノヨーコが考えてくれました。

届いたのを早速飲みましたが、不思議なワインです。見せる表情が本当に豊か。温度は高めの方が好みかな。
渋いし苦いしと、強い要素があるのにもかかわらず、恐ろしい飲み心地。ラディコンのオスラーヴィエを小さくしたような感じ。
エツィオが毎晩飲んでるって言ってたけどちょっと納得。
マッサ ヴェッキアのVino da Tavola Rossoに続き、日本でしか飲めないワイン・・・我ながらいい仕事してるぞ!!

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