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2025-03-04

ヴィナイオッティマーナ 2024 Vol.2【造り手セミナー】 ボデガ カウゾン


P3_DAY2 11月25日
造り手:Bodega Cauzon (ラモン サーヴェドラ)
通訳:渡辺 雄太
担当:桑原 広樹

①造り手紹介 (00:00~)

ヴィナイオッティマーナ2024 ピリオド3DAY2(11月25日)に行われたボデガ カウゾンのミニセミナーです。スペインはアンダルシア州より当主のラモンとパートナーのダビドに来日していただきました。

ワイナリーの場所ですが、スペインのアンダルシア州のグラナダ、3000メートル級の山々が連なるシエラネバダ山脈の北側斜面、標高1000メートルから1200メートルくらいの場所に畑があります。
ブドウ栽培としては非常に標高が高いですが、地中海を挟んでアフリカということで夏は非常に暑く40度を超えることもあり、冬はマイナス10度を下回るという非常に厳しい気候の場所です。また、降水量も非常に少なく日本は年間平均1700㎜くらいですが、こちらでは250㎜しか雨がふりません。糖度も、酸もしっかりある、非常に凝縮した良質のブドウが収穫できる場所です。
アンダルシアはワインの産地としては有名ではなく、いわゆる銘醸地とはされていない場所です。シエラネバダ山脈の南側では前回のオッティマーナに来てくれたバランコ オスクーロの当主とも交流があり、ワイナリーの創業当初から彼らからのインスピレーションを受けまして、農業や醸造でも自然環境に最大限に考慮したワインづくりをしています。
現在は14品種のブドウを栽培しています。

②造り手への質問と回答

Q1.たくさんの品種のブドウを栽培していて、単一品種100%のワインもあればブレンドされているワインもありますが、どのような意図でワインの種類を造り分けているのでしょうか?

A1. 自分が好きなもの、飲みたいものを造っています。単一品種も好きなのですが、例えば今日準備しているイラディというワインは、4つの品種を混ぜています。私としてはこの4つを混ぜたら自分の好きな味が追求できるのではないかと思っています。
4つの品種を混ぜることで味に複雑さを持たせることができると考えています。もともと1ヘクタールの畑を父から受け継いだところからワイナリーはスタートしていますが、初めて自分で植えた品種でもあります。接ぎ木をしないで挿し木で株を増やすピエデフランコという栽培の仕方をしているということもあり自分の中では特別に思い入れのあるワインです。

(太田より解説:ヨーロッパで大流行したブドウの害虫、フィロキセラの被害を避けるためにアメリカ系の品種の台木に別の品種の枝を接木するのが一般的なブドウの苗ですが、彼のゾーンではフィロキセラの被害が以前からなかったとのことで、そのような栽培をしたとのことです。フィロキセラは一説によるとアンダルシアからヨーロッパに広まったとされていて、アンダルシアでは挿し木でブドウを植えるのは、たぶん、違法なはずです、、、(笑))

ただ、私の畑は砂地が多く、そのような場所にフィロキセラの害虫は来ないと確信を持ってやっています。

Q1-2. 追加の質問:自根で栽培したブドウと挿し木のブドウは同じ品種で違いはあるのでしょうか?どんな違いがあるのでしょうか?

A1-2. イタリアの醸造家で最近亡くなってしまった方なのですが、ステファーノベルティという方がいて、2011年に私の畑にきてくれたことがあって、ワインの試飲をしてもらったときに私が何も言わなかったのにも関わらず彼は、このワインはピエデフランコのブドウで造ったワインではないか?と聞いてきたので、やはり、分かる人に分かるものだと思います。
科学的には変わりはない、説明はつかないとされていますが、ピエデフランコの方がより品種の香りがでてくるのでないかと私は考えています。ですので分かる人にはわかるのだと思います。

Q2. アンダルシア地方はワインの銘醸地とはされていない場所ですが、なぜそのような場所でワインを造ろうと思ったのでしょうか?

A2.私の家族はもともとスペインの南部に住んでいました。南部は乾燥していて経済的にも貧しい地域で、家族で北の方、バルセロナに家族で移住することになりました。私は、そこでミシュランの星付きのレストランで働き始め、そこで修行をして14年間、そのレストランで働きました。その間、良いワイン、良い食事というものはどういうものか学ぶことができました。
そんな生活を送っていましたが、やはり都会の生活に慣れない自分がいてアンダルシアに戻ることにしました。
自分の土地に帰ってきたときに父親が1ヘクタールのブドウ畑をもっていたので、初めはプロの醸造家になるつもりもなくワインを造り始めたのですが、やっていくうちに、自然とつながりを持ちながら生きることが自分にとって、とても自然なことだと感じることができるようになり、今まで続けることができました。その生き方に私自身、誇りに思っています。

Q2-2 追加の質問:もともとお父さんがお持ちの畑のブドウでワインを造るというのはとても素晴らしいことだと思うのですが、一方でなかなかそれで生計を立てるというのはワインを売りやすい土地でもなかったこともあると思いますし、難しいことだったと思いますが、そのあたりのご苦労とかはありましたでしょうか?

A2-2. これからのやっていかなければいけないことになってしまいますが、私はブドウの栽培を始めて30年ほど経ったわけですが、毎年毎年の気候変動が大きな影響を及ぼしているのを感じます。ブドウの生育にも非常に大きなダメージがあります。
このままの栽培の仕方では20年後、30年後に我々のところだけではなくてヨーロッパ中のブドウが育たなくなってしまうと考えています。気候変動に対応できるようなワイン造りを進化させていくことが必要と考えていて、それらに挑戦していきたいと考えています。

Q3. 三番目の質問は今後の話を伺いたかったのですが、もうすでにお話が出てしまいましたね(笑)。気候変動に対応していくとのお話が先ほどありましたが、ワイナリーをどうしていきたいとか、ブドウ以外を栽培してみようとか、それ以外で何か今後、挑戦していこうというようなことはありますでしょうか?

A3.大事にしたいと思っていることがありまして、畑に実際に入って作業をするってことを大事にしたいです。品種ごとの細やかな栽培技術にしてもそうですし、選定した葉や枝を畑に敷き詰めて水分と炭素の保持能力を高めることなど、リジェネラティブ=アグリカルチャー(環境再生型農業)のメソッドを取り入れるなど、大地と会話をして、そこの固有種がどのようなことを求めているか、見極めていくことが大事だと思っています。ですので、今後の展望といってもそれは現時点では分からないというのが答えになります。ワイン造りについては、単位品種100%で造っているものをブレンドして造るとかそういう試みはやるかもしれません。

③まとめ

ラモンは一見、大柄で豪快な雰囲気を感じることもあるかもしれませんが、お話してみると非常に細やかで繊細な方なのだと思いました。造られているワインも決して派手ではありませんが、ピュアで洗練された雰囲気があります。丁寧で細やかな人柄が感じられる味わいだと思います。(桑原)

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