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2013-02-12

【新入荷】2013年2月 (Marco De Bartoli & Terzavia、Domaine des Miroir、Trinchero、Camillo Donati、La Collina)


日頃より格別のご愛顧をいただきありがとうございます。

2008年の夏から今の家(兼事務所&倉庫)に住んでいまして、我が家の暖房は基本薪ストーブだけなのですが、薪ストーブ初心者でした当時のオータ、使う薪の量、ちゃんと燃える薪にするのにはある程度乾燥させる必要があることなどなど、いろいろよく分かって おらず、冬をナメていました…。
その時に“ひもじさ”とは、飢えと寒さを指すのだと確信した次第です。
以降も毎年、すぐに使える薪の量が減っているのを見るたび2008年冬を思い出し、暗然とした気持ちになっていたのですが、今シーズンの僕は違います。なんと今シーズン&来シーズンの分まで用意しているのです!仕事でもこれくらい先手を打ちたいと考えているのですが、これがなかなか…。

2月の新入荷のご案内です!
寒い季節を熱く乗り切れそうな内容となっております!!
年賀状でお伝えした(届いてない方、スミマセン!)ように、フランスワインを始めることになりました。
ドメーヌ デ ミロワール と言いまして、ジュラ地方で鏡健二郎氏が奥様の真由美さんと2011年に畑を購入、ワイン造りを始めたワイナリーになります。
話は 一旦飛びます。ご存知の方も多いかもしれませんが、最も僕の琴線に触れるワインを造るフランスの造り手といえばアルザスのシュレ ールでして、10年前リースリング キュベ パルティキュリエール2000を初めて飲んだ時の衝撃は一生忘れないと思います。
ここから が凄いのですが、シュレールのワインを知るようになって数か月後、2003年のヴィニータリーの時期のとある日、ラ ビアンカーラの アンジョリーノが自宅に友人生産者を招いてピッツァパーティーをやると言うので、帰って(この時期は毎年アンジョリーノの家に泊まらせてもらっていました)みると、知らない生産者が1人…それがブルーノ シュレールでした。
そこにいた事にもびっくりしました が、イタリア語がペラペラなことに更にびっくり、なんと奥様がイタリア人だったのです!
「あー、お前がシュレールか!日本で飲んだけど、ムッチャクチャ美味しいよね!」と気軽に話しかけられる嬉しさたるや…。
アンジョリーノ、マッサ ヴェッキア、ラディコン、 ラ カステッラーダ、ムレチニック、ベア、フランクやダーリオとシュレールのレアキュベを一緒に飲んだっけ…みんな仲良かったな… ほんといい時代でした…(涙)。
その2年後の同じ時期、シュレールと一緒にいたのが彼のもとで働き始めたばかりの鏡氏で、同い年という事もあり、以降仲良くさせてもらっていました。
気遣い屋で非常に謙虚な男なのですが、凄く熱いモノを秘めていたりします。シ ュレールのところで長く働いた彼が、いつ、どこで自分のワインを造り始めるかは、業界内で話題の的だったように思うのですが、彼はその状況を冷静に眺めているように僕には見えました。
それは、「シュレールで長らく働いていた日本人が自らワインを!」とか「日 本人がフランスで頑張ってワインを造っている!!」などという同胞愛から来る色眼鏡を拒否し、「俺は俺、ワインの中身で判断してもらって結構!」と言っているかのようで…。
実際、彼がワインを造り始める前から取引を依頼していたインポーターもいたようなので すが、飲んだこともないワインを買おうとするのは、造り手に対してもお客様に対しても失礼なのでは?と僕は思っていました。
鏡氏 の人となりを知っていて、彼なら素晴らしいワインを造るに違いないと思っていたとしても、です。造り手、鏡健二郎への最低限の礼 儀として、「日本人であること、シュレールで長く働いていたこと、いち友人であるという事もとりあえずはどうでもいいわ! まずはワインを飲んでからだぁ!」と言っていたヴィナイオータが扱うことになったという…。味わい等に関しては敢えて何も言わないことにします。
ドメーヌに関する詳細ですが、鏡氏からの不器用にして実直な文章が届いておりますので、それをそのままブログに 転載してみました。→ Click!!
カミッロ ドナーティより切らしておりました泡のないランブルスコ09が再入荷です!
これで現地在庫があと9600本という事にな っているかと。今年中には全量引き取りたいと目論んでおりますので、皆さんご協力の程を!
低収量に加えて強い酸味があることから、 市場から敬遠されることになり、今では栽培する人もほとんどいなくなった土着品種フォルターナで造るワインも久々に入れてみまし た。カミッロ曰く、サラミと抜群の相性をみせるとか。土着品種の中で、最もポテンシャルが高いとカミッロが考えているのがボナルダ(クロアティーナ)で、そのブドウで造るワインは彼の師匠の名前、オヴィーディオを冠しておりましてそちらも入荷しております。
ラ コッリーナの柔らかランブルスコ、イル クアレージモも再入荷しました!
トリンケーロからは、彼のトップキュベであるヴィーニャ デル ノーチェの97、98、99、01のブレンド、ロッソ デル ノーチェが 再入荷です!
前回は生産量の半分を買う事で好条件を出してもらい、日本に届いたのが一昨年、現地在庫もとっくになくなっていると思 っていたのですが、とある日「ロッソデルノーチェがちょっと残っているけど、興味ある?」というメールが。
「もちろん!ちなみに何 本?」と質問すると、「3500本」という答えが。
…あの…それって生産量の約半分ですよね?つまり他に売ってないという事…ですよ ね…?興味を持っていたインポーターが数社いたらしいのですが、なんだかんだでうやむやになり、じゃあイタリアに売ろうかと考え た矢先に法律が変わり、裏ラベルの表記が罰金の対象になることが判り…。(大樽、長い熟成、ナチュラルな、などの証明が不可能な “抽象的”表現ができなくなったようです…。なんて面倒な世の中なんでしょうね…。)というわけで…全部買っちゃいました!
ステンレスタンクで長期間寝かせてからボトリングされたため、当初は強く還元していたのですが、今は大変素敵なことになっております。 その状態を当主エツィオの口癖を借りて表現するなら、「マジ、死ぬほど美味いから!俺のこと信じて!!」という感じでしょうか。 前回よりも更にお買い求めやすくなっておりますので是非!
ボトルによって若干発泡していることもありますが、抜群な飲み心地のヴィーニャ デル ノーチェ03が36本だけ入荷しています。そして!!久々のリリースとなりました、ソーニョ ディ バッコの2010年も届いています。
06は赤ワインと見紛うばかりの膨大なタンニンを持ち合わせていて、味わいが柔らかくなるのに少々時間がかかりまし たが、10は軽い揮発酸がワインに軽さを与えてくれています。とはいえ、エツィオはもう少しだけワインに時間を与えてほしいとも 言っていました。その真意と真偽のほどを確かめるべく皆さんも、1度じゃなくて最低でも2度、間をおいてお試しください!!
想い以外何も伴っていなかった未熟な過去の自分への、そして日本のワイン市場が以前よりも多様性を許容、享受できる環境にまで 成熟したことを証明するための挑戦とも言える造り手との取引を15年ぶりに再開させます。その名はマルコ デ バルトリ!!!!!!
大好き過ぎて仕方のない、彼らのヴェッキオ サンペーリ(以下VS)&マルサーラがヴィナイオータのラインナップに復活です!(感涙)
ラディコンを筆頭に、「これ酸化しているんじゃないの?」と言われることの多い弊社のワイン達ですが、彼らのVSとマルサーラがそれを聞いたら、「そんなの甘い甘い(酸化だ)!俺たちこそ正真正銘の酸化ワインだぁ!!そして酸化の何が悪い?」と吼えてくれるので はないでしょうか(笑)。
実際、酸化を必要以上(←ここ大事です)に悪ととらえるのは、老いを全否定するのと一緒ですよね?生ある限り遅かれ早かれ誰にでも訪れるものですし、人にとってもワインにとっても大事なのは、見た目ではなく中身の成熟具合なのではな いでしょうか?もちろん美魔女もそれはそれで凄いと思いますけど(笑)。
恥を忍んで告白しますが、15年前に購入した7種類のデ バルトリのワイン、それぞれ60本を売り切るのに5年もの歳月がかかっ たんです…唯一無二としか表現のしようのない圧倒的な個性を持つワインで、造り手としての知名度も決して低くないにもかかわらず …。
これはヴィナイオータ史上最大のトラウマとも言え、その傷自体はとうに癒え、2006年くらいから再開の意思は彼らに伝えてはいたのですが、時間ばかりが無為に過ぎ、2010年にはマルコもこの世を去ってしまいました…。
現在は彼の3人の子供(皆美男美女!) が、マルコの遺志を継ぎ、それぞれの持ち場をこなしワイナリーを運営しています。
話は再び一瞬飛びます。レ ボンチエのジョヴァンナ モルガンティから、「あんたのとこのラインナップ、私自身も含め、売るのが大変な造り手がそこまで揃っていると、もはや“難しい”じゃなくて“売るのが不可能”っていうほうが正しいんじゃない?」という有難いお言葉を頂戴しているヴィナイオータなのですが、そんな弊社をして、ワインを伝え売るという世界で最難関と位置付けているの が、デザートワインを筆頭とする食後酒、という事になると思います。
ピエモンテ州のエツィオ チェッルーティなどは、デザートワイ ン1つしか造っていないという状況も相まって、彼のワインが持つ強い説得力をもってしても、彼の生産量(そしてその結果としての 輸入量)に見合った認知が未だ得られないでいます。勿論弊社の努力不足が一番の要因なわけで、それを強く自覚しているからこそ当 面は新規取り扱いを増やさず、まず現状の造り手のワインをちゃんと売れるようにすると決めたのですが、デ バルトリの再開だけは躊躇いませんでしたし、早々に日本にとある規模のマーケットを創出してみせる!という不退転の決意で臨むつもりです。
15年前、駆け出しの僕には汲み取ることができませんでしたが、今なら容易に想像できることがあまりにもあり過ぎて…。反論を恐れ ずに断言してしまいますが、手工業的マルサーラを造る唯一の造り手ですし、彼らのVSは、酒精強化をせず、既定のアルコール度数に達していない(それでも17%以上あるんです!)という理由だけでマルサーラを名乗れませんが、どのマルサーラよりもマルサーラ (土地、ブドウ…)を表現しているワインです。
どれくらいギリギリのところで彼らが勝負をしているのかをイメージしていただけるような事柄を列挙しますと、
◇マルサーラとパンテッレリーア島に合わせて17haの畑を所有し、2012年には77000本をリリース(畑の面積からしてみたら、 ただでさえ少ないですし、500mlのボトルも含めてですので、それを750mlに換算すると70000本という事になるかと)

◇77000本のうち、約16000本(=8000リットル)がマルサーラ&VSで、セラーには、約20万リットル!(今現在の販売量から換算すると、実に25年分にあたり…)のマルサーラ&VSが樽で熟成中

◇ワイナリーを始めるにあたって、マルコが親戚から買い集めた、1903、1958年などのヴィンテージのマルサーラが未だに樽で熟成中などなど、数字だけ見ても凄いことになっているのがお分かり頂けるかと。

ポテンシャルで言うのなら、年間50000本(500mlで)のマルサーラ&VSをリリースできるだけのブドウを生産しているのですが、 30年に渡って示し続けたワインの持つ個性&品質、故マルコの強烈なカリスマ性をもってしても、その本数を売ることは非現実的で、 比較的早い段階でのコスト回収、市場でのVS&マルサーラ以上の高い汎用性を見込んで造られるようになったのが、白のスティルワイ ン3種類と赤のスティルワイン(赤は今回未入荷)でした。
膨大な量が熟成中で、売り先さえあればいつでもボトリングできるものが 多々あるVS&マルサーラの在庫をこれ以上増やさないためには、売れるくらいの量を仕込めば良いのだと徐々に考えるようになったの だと思います。ですので今現在は、VS用のワインを仕込む年にはマルサーラ用のワインは仕込まなかったり、その逆もあったり、そし てどちらも仕込まない時もあるようです。
どちらのワインも仕込まないことに決めた2009年に、長男レナートがTerzavia(テルツァヴィーア、“3つ目の道”の意)という名前の別会社を立ち上げ、スプマンテの生産を始めます。グリッロ100%で、瓶内2次醗酵を促すための糖分としては、翌々年の同じ畑で獲れたグリッロのモストを用いる徹底ぶりで、スプマンテに思い入れの少ない僕からしても凄く美味しい!!!特にVSの20年物が入った(贅沢!)リゼルヴァは凄いです…。
ノンヴィンテージでもイメージが悪くなることのないスプマンテを、VSやマルサーラを仕込まない年に造る…非常に理にかなった手法だなぁと感心してしまいました。
当初(2009年以前?)このスプマンテのプロジェクトのことをレナートから聞いた時、VSとマルサーラに集中すればいいのにと思ってしまったのですが、それがいかに無責任な見解だったのか、一連の事情を理解した時に思い知りました。良く考えればそれは、彼の新会社名の裏に込められた意味、つまり“1つ目の道”とはVSとマルサーラを指すことからも明らかだったんですよね…。
この文章を書くにあたり、いろいろな質問を彼にしたのですが、彼からの返事の最後にこんな言葉がありました。
「VSとマルサーラ、合わせて年に50000本位売れていたとしたら、何の心配事もなかったろうし、恐らく、この土地にもともとな かったタイプのワインをいろいろ造ってみようとさえ考えいなかったかもしれない。それが人為的に過剰に干渉するというのではなく、 あくまでもナチュラルな手法で、自分が手掛ける土地やブドウ品種の新たな特性を引き出してあげたものであったとしてもね…。」

伝統とは、過去のとある時期に生み出された、以降変わることのない固有のものなどではなく、各時代の個々人の良心(その良心を支えているものとは、一家の歴史、自分の生まれ育った土地への敬愛、そして現代においては科学的裏付けが取れた先人の知恵なども) によって変化しつつ受け継がれつつ、今現在にまで伝わってきたもので、常にドラスティックに変化し、時には淘汰され、変革され、 再発見再評価される可能性を秘めた流動的なものなのではないでしょうか。何が言いたいのか自分でもよく分かりませんが、伝統を守り伝えるという事自体がすでに、新しい伝統を創造しているということなのかと…。
マルコが既存のマルサーラ観さえも疑い、自身の生まれ育った場所の伝統の衰退を憂いて、それを守るために酒精強化をしないマルサーラ (?)、VSを造り始めた事自体がその時代の誰もがやっていないことだったわけですから、真新しいことのように映るかもしれま せん。ですが、1773年に偶然マルサーラに寄港し、イギリス社交界での流行を確信し、本国への輸送に耐えれるようにと約2%の酒精強化を行うことを思いついたジョン ウッドハウス本人が初めて飲み、感銘を受けたものは、酒精強化されていない“本来の”マルサーラだったわけで、その味わいはVSと酷似していたのではないでしょうか?
言い換えるなら、酒精強化することがマルサーラを生産する 上での定石(伝統)となったのにはたった200年程度の歴史(伝統)しかなく、それ以前は普通(伝統的)にVSのようなワインが造られていたということで…。
去年の秋に彼らを訪ねた時、レナートがこんなことを聞いてきました。
「ヒサト、実はマルサーラとVS、今後は20年物とか30年物とかヴィンテージ物とかやめて、一度樽にあるワインを全部混ぜて、 それぞれ一種類にしちゃおうかと考えているんだけどどう思う?この山のようにあるマルサーラとVS、親父が地図(どの樽に平均して 何年物のワインが入っているか等が書いてある紙、なにせ20万リットルですから…)を残してくれているとはいえ、あまりにも煩雑すぎるし…。それに一度全部混ぜちゃえば、味わいも均一になるわけだし…。」
当然のことながら反論というか、是非とも思い留まってほしいと言葉を尽くしたわけですが、亡き父を尊敬し、そして偉大な伝統に誇りも感じているレナートでさえ、このようにいつ心が折れてもおかしくない状態なわけです。
オータがユネスコなら、デ バルトリの カンティーナとそこに眠るワインは、即ワイン世界遺産に認定です!!この世界遺産を守るためには僕たちに何ができるか、皆さんお分かりですよね?
値段に怯まず、是非一度試してみてください。価格以上のものが皆さんの事を待っていることをお約束しますので。
ソーレ エ ヴェントは、マルサーラで獲れたグリッロ50%にパンテッレリーア島で獲れたズィビッボ(モスカート)50%で造られる ワイン。ピエトラネーラはパンテッレリーア島の樹齢50年を超える北向きの畑で獲れたズィビッボのワインで全体の1/3を樽で熟成 させたワイン。グラッポリ デル グリッロは、フェニキア人がマルサーラにもたらしたと言われている土着品種で、“マルサーラに使わ れる品種”としか世間的認識のないグリッロの品種としての個性、特性を世に知らしめるため1990年に、デ バルトリとしては当時初めて酸化的熟成を行わない造りをしたワイン。木樽での醗酵、熟成。
マルサーラ リゼルヴァ1987は、1987年にその年のインゾーリアのモストとグリッロ&インゾーリアのワイン(当然のことながら デ バルトリの)から造られたブランデーを添加し熟成させていたもの。
ヴェッキオ サンペーリ トレンテンナーレは、1980年にマルコが初めてボトリングしたヴェッキオ サンペーリの10年物で、セラーに取って置いたものを亡くなる前の2010年に全て開栓、下に溜まった澱を取り除いた後に再びボトルへと戻し(目減り分を他のボ トルのワインで補てんして)、リコルクをしたもの。

文:太田久人
85 nuovo13.02.12

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