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2020-10-30

ヴィナイオータ かわら版 ~桑原編 その四~

桑原の“飲んでもらいたい”ワイン紹介!!

ピエーデフランコ2014年 (La Calabretta)

皆さん、こんにちは。ヴィナイオータ直営 だだ農園 農場長の桑原です。

今年からお米の栽培を始めまして、先日、無事に稲刈りを終えることができました。

お米の無農薬栽培で一番のネックとなるのが除草作業なのですが、社長を筆頭に早朝の出勤前の時間帯に、比較的余裕のある社員有志で連日行った草取り作業の甲斐がありまして、無施肥でも一般栽培の8割近い収穫量がありました。

農産物を生産するということは「食料品を造る」というよりも「生き物を育てる」ことである。という至極当たり前の常識を改めて実感できる良い機会となりました。来年以降も同じ田んぼで継続して、さらに面積を拡大して続けていきたいと思います。

さて、今回私がお勧めしたいワインは、

ピエーデ フランコを日本語に直訳すると「(franco)まっすぐな、純粋な(piede)足」ですが、その意味するところは「自根」つまり台木に接ぎ木せず栽培されたブドウです。

樹齢の古い区画のネレッロ マスカレーゼの中から、理想とする姿を体現した株を選ぶセレクションマッサルで厳選された穂木を自根で植えた樹から造られるワイン。その土地に合った個体を複数選抜することで、テロワールがより表現されていくとともに遺伝子多様性も複雑になっていきます。

植物としては当たり前の自根がなぜブドウ栽培で特別視されるのか?それはみなさんご存知のとおり、フィロキセラへの対策を目的とした接ぎ木が常識となっているからです。カラブレッタの畑があるエトナはフィロキセラの被害を受けにくいとされる砂地が多く、ヨーロッパで大きな被害を受けた時期でもその被害を免れた樹や畑が多くあり、そのような畑や、そこから造られるワインはプレ・フィロキセラと呼ばれています。

自根か台木でワインの品質に影響がなく、その違いに科学的な根拠はない。ということが定説となっています。自根にこだわることはフィロキセラの活動を活発化させ、個体数を増加させる結果になり、そのこだわりは1人のブドウ栽培家が背負える責任の範疇を大きく超えるという批判的な意見もあります。しかしながら、野菜の栽培農家であった私は自らの経験より、野菜においては自根と台木に明確な味の違いがあると考えています。

私が農業を教わった師匠は毎年、自家用に自根でスイカを栽培していました。師匠が営農している地域はスイカの一大産地であり、彼も40年前に自然農法を始める前の20代の若い頃は、一般栽培では常識である接ぎ木をして農薬も化学肥料も使い、スイカを生産し生計を立てていました。そんなスイカ生産のプロであった師匠ですが、美味しい野菜は自根でないと作れないというのが持論で、スイカだけでなく他の野菜も自ら種取りをして自根の苗を育てていました。とある年に私に自根栽培の意味を教える為に、一般的におこなわれるユウガオの根に接ぎ木して栽培したスイカと、自根で育てたスイカの両方を食べさせてくれました。

どちらも同じように栽培されたスイカを、ブラインドで食べ比べをさせてもらったところ、その味には明らかな違いありました。どちらも甘いのですが、スイカの旨みというか甘味以外の美味しさを感じ、皮の近くまで美味しく食べられたのは自根栽培のスイカでした。台木の方は、一口目の甘さは強いのですが、皮に向かって食べ進めるにつれ若干のエグみというか荒っぽさを感じ、皮は厚い印象でした。個体差はあるので幾つかの個体を食べさせてもらったのですが、私はどれも共通した印象を受けました。

私の主観的な感覚が科学的な根拠になるとは思いませんが、長年スイカ栽培をしてきた師匠が、手間と時間をかけて私に教えたかったことが、全くの思い込みや迷信であるともいえないと思っています。

植物として当たり前である自根よりも人為的に別の個体を接ぐ台木の方が、その植物にとってより良い形態ということがあり得るのか?自然農法の理念は、限りなく植物の自然な生き方に寄り添うことで、健康でエネルギーにあふれ美味しい野菜を育てることであると私は考えています。今やその存在自体が貴重になってしまった自根で栽培されたブドウから造られるワインに私は惹かれずにはいられません。

すみません。話がずいぶん脱線してしまいました。お勧めワインの話に戻ります。

ピエーデフランコは、代々伝わる偉大なワインを生み出す区画において自根栽培で収穫されたネレッロ マスカレーゼ100%で造られます。2014年、エトナという理想的な天候に恵まれたヴィンテージを感じさせるブドウの熟度と、火山性土壌と寒暖差から産まれる酸味との絶妙なバランス。2016年に入荷した当初から圧倒的な存在感があったとのことですが、それから4年の歳月を経た現在、さらに素晴らしい飲み心地となっています。先週、社長オータが試飲のために抜栓してくれたのですが「これはすごい。皆さんにお知らせしなければ」と思いまして急遽、ワインを差し替えてお勧めさせていただきます。

偉大なる当ヴィンテージも残り少なくなっております。お早目の確保をお勧めいたします。

≪桑原の飲んでもらいたいワイン紹介≫
銘柄:Piedefranco 2014 / ピエーデフランコ2014
造り手:La Calabretta / ラ カラブレッタ
地域:伊 シチリア州
ブドウ:ネレッロ マスカレーゼ
希望小売価格(税抜) : 5,200円

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