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2021-04-20

【新入荷】2021年4月その2(MMC, Alberto Anguissola, La Visciola, Il Cancelliere, De Bartoli, Arianna Occhipinti)

オータは、人の注意を引くことに主眼が置かれた、ポップでキッチュでパンキッシュなデザインのワインラベルがあまり好きではありません。中でも、エロティックなものだったり、扇情的過ぎるものに関しては、造り手の意図や想いが全く理解できず…。ワインもヒトも、内なる個性で他者を惹きつけられるに越したことはなく、外見は、中身に貫かれている“あり方”(理念、哲学、考え方など)をヴィジュアル化できていることが肝要で、目立つか目立たないかは、それほど重要なことではないと思うのです。

綺麗ごとを言っているように思われちゃうかもしれませんが、オータは、造り手に“売れる”ことに一義を置いたワイン造りではなく、自然やワインへの愛、そして自身の自然観や人生観を表現するいち手段としてのワイン造りを心掛けてもらいたいと常に願っています。もちろん、全く売れなかったらシャレにもならないわけですが、造り手自身が表現したいものを表現して、それがちゃんと他者からの支持を勝ち得て、その結果として販売にも繋がるという過程を経てこそ、“魂のこもったプロダクト(ないし、魂を込めることもできちゃうプロダクト…)”の商業活動に持続性が生まれるのかと…。(本当に偉大なミュージシャンなら、CDの売り上げ枚数などを意識しながら創作活動をしないですよね?)

もちろん、ポップなラベル全てを否定しているわけではありません。パーネヴィーノのように、仮にポップであったとしてもデザインの中でしっかりとメッセージを表現できているものもあれば、逆にヴォドピーヴェッツのように、シンプルなデザインの中にも彼の哲学や想いを鮮明に投影させることに成功している例もあり…。

巷では、“センスがいい”と“才能がある”が、しばしば同義語として使われている気がするのですが、オータはちょっと違うと思っています。もちろん、筋の良さや身体能力など、“生来の”と呼んでも差し支えなさそうなセンスもありますが、内なる旅を繰り返し、いっぱい考え悩み苦しみ、独自の理念や哲学を確立し、その理念や哲学を具現化するための術を考え、そしてしっかりと実現できる人の事も、センスがあると表現してしかるべきなのかと…。(イチローなどは、後者のタイプにあたるのではないでしょうか。)

訳の分からない前置きから始まりましたが、去年強引に企画したイタリア出張で、センスの塊のような造り手に出会ってしまったんです! 実に地味でシンプルなラベルなのですが、考え抜いた人だけが表現できる、ただならぬオーラを放つワイン…。

というわけで、新規取引先のメゾン モーリス クレタのワインを含む、4月の新入荷案内第2&3弾いきます!

メゾン モーリス クレタ(以下MMC)は、建築家のアンドレア モーリスによって営まれる、ヴァッレ ダオスタのワイナリー。2010年までは、祖父から受け継いだバンクと呼ぶ区画で収穫したブドウを協同組合に売却していたのですが、ヴァッレ ダオスタの土着品種&ブドウ栽培の歴史のスペシャリストでもある友人の農学士からの勧めもあり、2011年から試験醸造を始め、2015年から正式にワイナリーとしての活動を開始、今現在は4カ所に2haほどの畑を所有しています。アルプスの麓の切り立った谷の中にあるヴァッレ ダオスタ州は、周りを高い山々に囲まれ、平地も少なく、耕作適地が限られた土地柄。ヴァルテッリーナ同様に、太陽の恩恵に与るためには、傾斜地にブドウを植える必要があるわけですが、農業界にあらゆるテクノロジーが導入されるようになった現代においては、農作業の大半を手で行わなければいけない畑は、労を惜しまない人材の不足と圧倒的に高いコストもあり、高品質なブドウを産するにもかかわらず栽培放棄が進み…。

自然、歴史、文化、伝統を愛するアンドレアは、自然とヒトの英知のコラボ作品とも言える、岩肌に張り付くようにして各所に点在する畑や、国際的な品種導入の陰に追いやられている伝統的な土着品種の維持&保護も目的として、ワイナリーを立ち上げます。農業機械が一切入れないような、作業効率の悪い地域にある畑やそこに植わる伝統品種を後世へと受け継いでいくためには、それらの優位性を示す必要がある… アンドレアは、このように考えたのだとオータは推測しています。

多様な生物(微生物、動植物)多様性を実現するためにビオディナミを実践、ブドウ樹のダメージを最小限に留める剪定方法を採用、醗酵を円滑に進めるために白ブドウ品種にも醸し醗酵を行い、醗酵中の温度管理も一切行わず、無濾過無清澄でボトリング。酸化防止剤も、ボトリング時にごく少量を添加。DOCのレギュレーションそのものに疑問を持ったアンドレア、2020年以降にリリースしたワインに関しては、DOCを名乗らず全てヴィーノ ダ ターヴォラに格下げすることにします。

アンドレアにバトンを託すまでの間、ブドウ栽培という伝統&文化を守ってくれていた先人に敬意を表すべく、彼らの名前がワイン名となっており、それぞれのワインに描かれている習字チックなデザインも、それぞれの人物に因んでいるそう。

各区画(◎)と、そこで産するワイン(●)をご紹介します!

◎BANQUES(バンク):アオスタ西部の町ケザレにある、標高640-700mに位置する1.2haの区画。

LIE(リー)2016年&2017年:ヴァッレ ダオスタを代表する白の土着白品種であるプティアルヴィンで造るワイン。5日間の醸し醗酵、ステンレスタンクで醗酵&熟成。リーは、アンドレアの父方の祖父の名前Lie-Elia Maurice(リー エリア モーリス)から。ラベルには、ヒトを連想させるデザインが施されています。パルチザンで職人だった祖父と、ワイン造りのあり方と伝統を守るという事に対するアンドレアの想いや矜持を重ねたものとなっています。2016年は72本、2017年は420本の入荷。

MIN (ミン)2018年:1700年代後半にはヴァッレ ダオスタでの栽培が確認されている黒ブドウ品種のマイオレ100%のワイン。マイオレは、ヴァッレ ダオスタの土着品種の中でもっとも早熟なブドウで、州のほぼ全域で栽培されているとの事。が!!! 書類レベルで確認されている栽培総面積は7ha(=トリンケーロのバルベーラの栽培面積よりも少ない…)だそう…。繊細な香りと柔らかな味わいがあり、後味に独特の苦みがあるのが特徴。ステンレスタンクでの醗酵&熟成。ミンは、父方の祖母Min Erminia Mondet(ミン エルミニア モンデ)から。エネルギーという言葉をよく口にするアンドレア、このワインには“生命”をイメージしたデザインが(そう言われれば、そうも見えなくもない気がしますが、なぜそう見えたかはなかなか説明しづらく…)。72本入荷。

NEE(ネエ)2018年:DOC名としては、トッレッテ シュペリウールにあたり、セパージュ的にはプティ ルージュ70%、コルナリンとマイオレを合わせて30%。ステンレスタンクでの醗酵&熟成。ネエは、母方の祖父ネーロのあだ名。“黄金比”、“調和”をイメージしたデザインが描かれています。72本入荷。

◎MONOT(モノ):州最東部にある町、ポン サン マルタンを眼下に望む(標高360-440m)場所にある、0.55haの区画。

BOS(ボス)2018年:ネッビオーロ ピコテンデロ85%、ネイレとネール ダラを合わせて15%。約1か月の醸し醗酵、1年の樽熟成の後にステンレスタンクでもう1年追熟させボトリング。ボスは、ポン サン マルタンでは古くから存在する、非常にポピュラーな名字。黒い丸が描かれているのですが、丸が月、太陽、点などを、黒がワイン造りのミステリアスな部分を象徴しているそう。

◎CLOUEO(クリウ):州最西部の、ヨーロッパで最も高い標高(1200m)にあるブドウ畑として知られている、モルジェにある0.08ha(!!!!!)の区画(アンドレアの所有する区画は標高1050m)。クリウはヴァッレ ダオスタの方言で、フランス語のClos(クロ)にあたる言葉。“閉じた”という意味が転じて、“石壁に囲まれた区画”を指します。降雪に耐えられるよう、非常に低い棚仕立てとなっており、棚を支える支柱には石柱が使われています。

VIF(ヴィフ)2018年&2019年: プリエ ブラン100%。理由は定かではありませんが、2018年はヴィーノ ダ ターヴォラ、2019年はブラン ド モルジェDOCでリリース。5日間の醸し醗酵、ステンレスタンクでの醗酵&熟成。ワイン名は、今現在アンドレアが栽培を手掛ける区画の石柱に刻まれている、そこにその石柱を設置したとおぼしき人物のイニシャルVFから。山を連想させるデザインが描かれています。0.1haにも満たない畑という事で、日本への入荷量も各ヴィンテージ42本。

モノのあるポン サン マルタンからヴィフのあるモルジェまで80km近く…。ここまで離れたエリアに畑を所有する造り手は、ヴィナイオータの中にも誰一人としていないと思いますし、このことからも、アンドレアのヴァッレ ダオスタ愛と伝統を残すための覚悟や気合が十分に伝わってくるかと…。どのワインも、凛とした佇まいがあり、(ナチュラルな)醸造方法由来のエクスキューズなど微塵もない仕上がりです。入荷本数が100本を切っている5アイテムに関しては、限定とさせていただきます!

リー(プティ アルヴィン)ですが、2018年&2019年も一緒に入荷してきておりまして、2017年が終わり次第2018年を、2018年が終わった際に2019年をリリースする予定です!

オータのピアチェンツァ地区の秘書、アルベルト アングイッソラからは、カゼビアンコ(ビアンコを名乗っていますが、造りはオレンジ!)の2019年が入荷です! ヴィンテージの特徴なのかもしれませんが、今までのカゼビアンコと比べると、ちょっとシリアスな雰囲気がある気が…。2018年以前の外向的な性格のワインもステキでしたが、その人懐っこすぎるくらいの外向的さ加減が、ワイン自体が持つ尊大さをマスキングしていたのに対して、2019年は偉大さの片鱗が見え隠れするワインになったかのような…。是非是非皆さんも確認してみてください!

カゼビアンコ2019年と一緒に純白ワイン(皮ごと醸していない)、カゼビアンコビアンコ2018年がもう2000本届きました! これで総在庫本数は3000本ほど! 価格を考えたら、ありえない味わいがあると思うので、ガンガンお飲みいただけると幸いです!

ハルサメ、カルカロット、カゼ、リーヴァ デル チリエージョもよろしくお願いします!

マイナーすぎるゾーン、想いは伝わるけどセンスがあるとは言い難いラベル(ピエロ、すまん!)、抜栓直後の地味な味わいも相まって、勢いよく動くことがないラ ヴィーショラのワイン…。ですが、抜栓数日後のワインを飲んでいただければ、どれほどのポテンシャルを秘めているのかご理解いただけるはず! そんなヴィーショラの新ワイン4つと、新ヴィンテージ1つが入荷です!

まずはクペッラ フリッザンテ ビアンコ&ロザート2018年!クペッラは、農作業で畑に行く際に農民が水筒として携行した超小型の樽の事。日本語の単語的便宜上水筒と書きましたが、当然のことながら中身はワイン(笑)。栓を取り、竹のような木製のストロー状のものを刺し、大きな口を開けつつ樽を傾けグビグビ飲んでいたようです。農民が作業の合間に飲んでいたような、軽快な味わいをイメージして造られた微発泡性ワイン。使われているブドウですが、ビアンコはパッセリーナ、ロザートはノストラーノ(前回は赤ワインとして仕込まれました)。完全醗酵させたベースのワインに冷凍保存しておいたモストを添加しボトリング、ナチュラルな瓶内2次醗酵を促したワインです。72本ずつの入荷。

近隣の信用のおける農家から買ったブドウで造るワイン、ヴィチナーレビアンコも仲間入りです! ドンナ ローザ同様に、こちらもパッセリーナ100%。今回入荷したのは2015年で、ボトリングのタイミングはドンナ ローザと一緒だったのですが、ドンナ ローザほどには状態が整っていないと判断し、リリースを1年遅らせたものになります。144本入荷。

大量入荷だったこともあり、長らく弊社現行ヴィンテージだったドンナ ローザ2015年もようやく終売しましたので、2016年をリリースします。ヴォリューミーな味わいだった2015年と比べると、2016年はフィネスやエレガンスに特徴が。240本入荷。

ヴィーショラとしては4つ目のクリュ、ユ ラッターロ2016年もリリースします! 距離的には、ユ クアルトが一番近いのですが、味わい的にはモッツァッタよりのパワフルさを持ち合わせたワインを産する区画です。72本入荷。

クペッラは、早期完売が予想されますので、ご注意くださいね!

ソッコルソ爺さんとテキパキチャキチャキなリータを中心とした、元気で底抜けに明るい大家族… そんなイル カンチェッリエーレからは、タウラージ3種類が!

ノーマルタウラージ2014年2015年を同時にリリースします! 2015年は、素晴らしい天候に恵まれたこともあり、リッチ&ヴォリューミーではあるのですが、ブドウ樹が一切のストレスを感じなかったのか、アリアーニコとは思えないほどの甘いタンニンを備えたワインとなっています。に対して2014年は、タウラージのゾーンもイタリアの他の地域同様に太陽に恵まれず、線が細く、やや神経質な性格のワインが…。タウラージとしてリリースするかを迷っていると相談されたのですが、オータの答えはいつも通り「もちろんタウラージで!」。家族愛の強い一家ということもあってか、我が愛息の生まれ年だという事も覚えていてくれまして、彼の名前の入ったワインとなっています。全くもってタウラージらしからぬ値段を提示されたので、全量買っちゃいました(笑)。今回は約半量の900本が入荷です。尊大なヴィンテージではありませんが、選りすぐりの区画のブドウを使っていますので、物足りなさは皆無、むしろ意味の解らないコスパに驚いていただけることかと!

タウラージ リゼルヴァは、2011年が終売したので、2012年をリリースします。今回ご紹介する3つのワインの中では、最も噛み応えのあるワインです(笑)。

シチリアのデ バルトリが造るスプマンテ、グリッロ メトド クラッシコ2017年のデゴルジュマンのタイミング違いVer.が入荷です(前回のは2019年、今回のは2020年と予想されます)!

デ バルトリのデ バルトリたる所以とも言えるワイン、マルサーラとヴェッキオサンペーリとブックラムのことも忘れないでええええ!

同じくシチリアの元気ねーさん、アリアンナ オッキピンティが造るネーロ ダーヴォラ、シッカーニョ2015年が終わったので、2016年をリリースします! 弊社に届いてからも2年近く寝かせたものになります(望んでやっているわけではないのですが… 涙)ので、サイコーな状態です!

*ブログ掲載時には完売しているワイン、商品がございます。予めご了承ください。

文:太田久人

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