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2021-06-02

ヴィナイオータ かわら版 ~小竹編 その壱~

ヴィナイオータ かわら版を御覧になっているみなさま、初めましてこんにちは。

昨年の頭頃よりアルバイトとして勤め始め、同年11月よりだだ商店だだ食堂の正社員スタッフとなりました、小竹拓真と申します。本題である小竹のいま「飲んでもらいたいワイン」のご紹介に入る前に、ご挨拶も兼ねて自己紹介をさせていただきます。

生まれは千葉県我孫子市。中学高校とつくば市へ6年間通学していましたが、美術芸術・デザインを学ぶために大学に進学したことを機に、2012年よりつくば市で生活を始めました。自分自身、手や身体を動かして何かを作りあげることは得意でないのですが、だからこそ、それを生業にする・自己表現とする人たちと関わりながら自分のできることを見つけたいと考えたことが、芸術系への進学を決めた要因だったかと思います。

しかしながら、いざ入学してからは体育会の部活動(競技のトライアスロンをしていました)の練習が生活の半分以上、残りは学内での学業というよりは授業課題そっちのけで、先輩たちの作品制作のアシスタントやビジュアルデザイン研究室のお仕事漬け。毎日新鮮なことが尽きず、あっという間に一年二年と時間は過ぎて行きました。結局大学には一年間の留学を含め5年間在籍し、その間お陰様で本当に様々な体験をしまして。いつしか、食と食にまつわることに携わる仕事をしたいと考えるようになりました。

そんなことに気がついたので、大学を卒業してからもデザインの世界には行かずに、自分の関心を持った、この分野の会社やアルバイトを数年間転々としていました。今回自分が取り上げる「飲んでもらいたいワイン」も、同つくば市内のチーズ屋さんで仕事をしていた時にそこで並んでいて出会った一本です。自分はチーズを仕事で扱う前までは正直ワインを飲むこと(特に理由はないので機会がなかっただけ?)は殆どありませんでした…。ですがチーズとワインは切っても切れぬ関係。その上、幾度とない全国出張の先でお会いする沢山のワインラヴァーの皆様(その節は大変お世話になりました!!本当にありがとうございました。)の人柄そのものや、ワインや食材に対する真っ直ぐさ、そしてそのワイン達に影響され、自然と興味を持ち始めていました。

そこから、より広く深く様々な「おいしい」を知りたい!知ったものを自分だけにとどめるのではなく、近くにいる人たちともっと分かち合いたい、自分のできる形でお伝えしたい、という想いから、だだ商店だだ食堂スタッフとして現在働かせていただいております。改めて、これからどうぞよろしくお願いいたします。

すみません、長くなりました。初めてのかわら版、小竹のいま「飲んでもらいたいワイン」です。

ブラン ド モルジェ ノン フィルトラート2018年 (Maison Vevey Albert)

ヴェヴェイのワインを初めて飲んだのは、おそらくワインというものが面白く楽しいと思って、自分でボトルを買って飲むようになり始めた最初の頃(といっても本当に最近)でした。選んだ理由は、アルプス山脈の麓ヴァッレ ダオスタという生産地の場所性に惹かれたこと、カントリーな雰囲気のエチケットが好みだったこと、その当時の印象ですがヴィナイオータのワインっぽくない佇まい!と感じたからです。一旦目があうと気になってしまい、これは飲んでみるしかない。と思って購入したのを覚えています。

ヴェヴェイのワイナリーは、イタリア ヴァッレ ダオスタ州の中でも、より北西部のフランス・スイス国境、スキーリゾート地でも有名なクールマイユールの少し南東に位置します。目の前にはヨーロッパ最高峰モンブラン。google map ( https://goo.gl/maps/BejTD9vKXcN3qWf97 ) で是非訪れてみてください。とっても綺麗な景色が広がっていて、そこで生まれたワインなのだろうなと思うとそれだけで好きにならずにいられませんでした。

さて、僕の好きなラジオ番組の一つに”Traveling without moving”というタイトルのものがあります。その冒頭でパーソナリティの「旅に出て、ある場所で何かを思い出す・・(中略)・・その曲を聴くとあの場所を思い出す、風の音、その風に乗ってくる匂い、光の差す角度。旅は過去と未来を含んでいる。言い換えれば旅はあなたの中にある、ここにいても旅はできる。」と語りが入って毎週の番組がスタートします。

音楽は殊更ですが、料理や味も同様だと僕は思っています。どこか出かけた時、何てことのないフツーの居酒屋でおばちゃんがだしてくれた煮物、遊び尽くしてから最後に辿り着いたラーメンとか。必ずではなくともふとした時にとあるなにかに拠って、どこかの風景や特定の瞬間が自然に思い出されます。

昨年、2020年は特にまさに”Traveling without moving”な生活を常々要求されました。何かをきっかけにどこかを思い出す、誰かを思い出す。ブラン ド モルジェは、多くとは言えないですが僕が昨年飲んだワインの中で一番、一瞬で旅に連れ出してくれたワインです。実は、大学のころ建築とインテリアの勉強で7年ほど前、20歳の時に一年間だけミラノの大学で留学をしていたのですが、現地にいるうちにできるだけ建築や美術館を回りたくて、ほぼ毎週のように長期短期関わらずたくさんの場所へ何度も旅行しました。お金は(なるべく使いたく)なく陸路でいくほうが安い場所は高速バスで移動しました。フランス、ドイツ、スイスに行くには、イタリア側からだと、必ずアルプス山脈を通過します。毎回の旅程、行ったり来たり。いろんな感情でアルプスの風景(や他の乗客たちの様子)を眺めながら移動した経験があるわけですが、このワインを購入して一人で家で飲んだ時に、それをたちまち思い出したのです。味なのか香りなのかヴィジュアルなのか正直わかりません。でもそれほどの美味しさを超えた何かがあって、自分と紐づけられた気がしました。

その時に、まだ知らない土地で知らない人が作っているワインにもそれだけ誰かを動かすほどのエネルギー;熱量があるのだなあと嬉しく、驚き、感動したのを覚えています。皆さまにとっても、旅をさせてくれるような特別なワインはありますでしょうか…もし今後機会があればぜひ教えていただきたいです。

このワインが生まれる彼らの実際のワイナリーの風景は、僕も社長太田のこの言葉達 ( https://vinaiota.com/blog/staffblog/298 ) からしか推測できませんが(行ってみたい見てみたい!)初めてのかわら版では、繰り返し好んで飲んでいるブラン ド モルジェに自分が抱いた印象について少しだけ触れさせていただきます。

開けたてすぐは元気で明るいイメージ。実際にチリチリと舌先でわずかな発泡も感じつつも、リンゴのような酸の印象が先行します。暖かいというよりも涼しくてさらっとした山からの風と、エチケットのような澄んだ空を想像します。そして数十分立ったところから香りが浮かんできて少し味わいにも厚みが出てきます。2、3日したところからは発泡も感じなくなり、少し湿度のある、蜜の印象へと変化してきます。初めに感じるハツラツさとはまた異なる、落ち着いた小熟れた雰囲気が出てきます。一週間経っても、味はヘタれることなく十分に変化を楽しんでもらえると思います。

メゾン モーリス クレタの白LIEに関しては開けたてから小熟れていて、同じエリアでも渓谷地帯のために、近くの畑でも高低差があることや水の流れが違うことも(他にも、使われる葡萄品種が同一でないこと、17年が太陽の多いVTだったことも)あるのか、比べると幾らかボリューミーに感じながらも口当たりからアフターの抜け方まで終始バランスが取れている印象を持ちました。ヴェヴェイのブラン ド モルジェに関しては入りと抜けで違った表情を見せてくれるところが個人的にポイントだと思っています。

夏口までは、すこーし冷えたところから口に含んで広がる酸味を、夏からはキリッと冷やして引き締まった軽やかな香りを、秋冬はセラーの温度から室内で少しまったりとした状態で線の幅をもたせて飲んで。年中ついつい手が伸びてしまい、繊細ですが豊かな表情があります(断言)。ぜひ通年お手元に置いていただいて試していただきたいです。。。

今飲んでも美味しい。この先にどういった変化をするのか飲みながら知りたい。どんな場所でどんな人が居るから生まれてくるワインなのか。それをふと確かめたいと思わせてくれる、飲みたくなる僕の親友のような気のおけない一本です。このかわら版が届いてほしい遠くにいる皆様と、いつか見られるかもしれない遠くのヴァッレ ダオスタのアルプスの風景を想いながら、今日も飲みます~!ヴェヴェイ ブラン ド モルジェ!

<<小竹の飲んでもらいたいワイン紹介>>
銘柄:ブラン ド モルジェ ノン フィルトラート2018
造り手:メゾン ヴェヴェイ アルベール
地域:伊 ヴァッレ ダオスタ州
ブドウ:プリエ ブラン
希望小売価格:3800円(税抜)

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