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2021-12-24

ヴィナイオータ かわら版 ~桑原編 その五~

みなさんこんにちは。ヴィナイオータ農園 農場長 桑原です。

今現在、弊社取り扱いの造り手は80以上を数え、さらに昨年来のコロナ禍においても新規の造り手をご紹介してきています。むしろこういう時こそ縮こまることなく、やるべきことをやっていこう。というしゃちょうオータの志を胸に、日々ワインをご紹介しております。

そして、新規取り扱いの造り手がいる一方、取り扱いがなくなってしまう造り手ももちろん存在するわけで、その理由は様々ですが、ワイナリーが個人事業でかつ後継者がいない状況で、残念ながら造り手本人が想定していないタイミングで亡くなってしまうケースがあります。今後も引き続き入荷するであろうワインが、突然とあるヴィンテージでぶっつり途切れてしまう。

今回、私がかわら版としてご紹介するワインの造り手は、そのケースでありますが、特に彼のぶどう栽培に対する姿勢や考え方、そして、ワインそのものに宿る魂のようなものに、勝手に共感するものを感じていた私にとって、ぽっかりと心に穴が開いたような寂寥感と申しましょうか、無常観を感じずにはいられません。

今回ご紹介するワインはチンクエ カミーニの故オッターヴィオ・サッマーロのワイン
エドゥス2012年(Edus 2012 / Cinque Camini)です。

エドゥス2012年(Cinque Camini)

同じ造り手のワイン「アレテイア2016年」を前々回の私のかわら版でご紹介いたしまして、再度のご紹介となります。その際にもお話させていただいたのですが( https://vinaiota.com/news/5230 )彼は自然に最大限の敬意を払い、あらゆる生物との調和を大切にしており、特に、土中の微生物の環境を重要視していました。

今回、かわら版を書くにあたり今も存在する彼のワイナリーのfacebookページ(AZ. Agricola Casale Cinque Camini Di Ottavio Sammarro)を見たところ、彼の最後の投稿で「ワインのボトリングと出荷がおわった!!今日からはブドウ畑と土壌微生物との対話に集中できる!!」(意訳)とのキャプションと共に、嬉々としてブドウ畑に藁と腐葉を手作業で漉き込んでいるオッターが。
おそらく微生物の食べ物と住処をつくり土中環境を整えるための作業であったと思われます。そこには、無農薬だとかボルドー液がどうだとか、そういうものを超えた自然と対話する喜びの姿がありました。

そうして育てられたブドウから醸造を経て造られる彼のワインはもちろん美味しいのですが、美味しいだけでは表現できない魅力、個性、力強さ、エネルギーを感じることができます。私は農業者でありますが、私の生産する野菜やコメも、彼のワインように生命のエネルギーに溢れ、食する人の健康と喜びの元となる食べ物を育てたいと思っています。

昨今のコロナに関する巷の話題は、変異株の感染力や若年層への広がり、ワクチンや特効薬などの医薬品のメリットやリスクの側面などが大きく取り上げられていますが、まずは、自分の免疫力やその元となる食生活や生活習慣など、感染症などの病気と対峙する際に一番の土台となる自分自身の体、健康にもっと目を向けるべきではないでしょうか?

先日、皆さんご存じの某外資系大手ハンバーガーチェーンの今年上半期の売上高と営業利益が過去最高となったとのニュースがありました。人々は自宅に閉じこもり、友人や遠く暮らす家族とも会うこともせず、たまに外出する際には雑菌だらけのマスクを長時間着用し、冷凍食品やインスタント食品、ファーストフードを食べる比率が高くなっていく、、、。これを読んでくださっている皆さんはそんなことはないと思いますが、そんな生活を是としている人も少なくないわけで、単にコロナに感染しないことだけを最重要視した生活になんの意味があるのでしょうか?それで本当の意味で健康で幸せになれるのでしょうか?何か根本的に違うような気がするのは我々だけなのでしょうか?

本質的な食とは何か?を模索する自分にとって世の中の情勢は絶望的な気持ちになることが多い日々でありますが、一歩ずつ地道に歩んでいくしかないのでしょう。

さて、ずいぶん寄り道をしてしまいました。本題にもどります。改めまして今回ご紹介するワインは エドゥス2012年(Edus 2012 / Cinque Camini)です。

カベルネ ソーヴィニョンとメルローで造られ、長期間の樽熟成を施されたのちボトリングされます。1年ほど前に試飲した時と比べ、濃厚なプルーンのような色と果実味、豊かなボディはそのままに、残糖はもちろんないのですが感覚としてほんのりと感じる甘味と若干のミネラル感もあり、全体のバランスが良く、飲み心地は全開です。樽で十分な期間熟成したからでしょうか、還元臭は全くなくクリアで、抜栓後しばらく経過してもマメ臭が発生する気配もみじんもありません。数日から2週間ほどは日々違った魅力が感じられ安定感は抜群です。

同じ造り手のワインであり、マリオッコ100%で造られた「アレテイア」ほどのタンニンの強さもなく、今まさに飲み頃を迎えていると思います。

ただそういった、ありきたりのワインの表現を超えたエネルギーというか個性というか、クサい言い方をすれば、今は亡きオッターの魂と彼の畑のエネルギーを感じることができる力強さがあります。

日々のニュースに右往左往している人にこのワインを一杯注ぎ「これを飲んで落ち着いて何が大事かよく考えようよ」と言ってまわりたい気持ちです。

※当かわら版ではEdus 2012年をご紹介しておりますがEdus 2013年も同時リリースしております。こちらも併せてよろしくお願いします。2013年が現在のところ最終ヴィンテージとなっております。

<<桑原の飲んでもらいたいワイン紹介>>
銘柄:エドゥス2012、2013
造り手:チンクエ カミーニ
地域:伊 カラーブリア州
ブドウ品種:カベルネ ソーヴィニヨン 60%、メルロー 40%
希望小売価格:4,800円(税抜)

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