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2018-10-23

スタッフ三浦の造り手訪問記 その1 チンクエ カミーニ編

みなさま、いつもヴィナイオータのワインをご愛飲頂きありがとうございます。つくば本社にて昨年3月より勤務しています三浦です。

早いもので1か月以上経ってしまいましたが、(2018年)8月24日から9月3日まで代表太田(以下オータ)と共にイタリア出張に行ってきました。
南イタリアを中心に全9生産者のもとへ訪問!(+急遽2生産者を紹介され、うち一か所は急遽訪問)。

・現在取扱いがある : ラーチノ、サヴェーゼ、カンティーナ ジャルディーノ、ルイージ テッチェ、イル カンチェッリエーレ

・取扱いほやほや、オータも初訪問 : チンクエ カミーニ、ナタリーノ デル プレーテ、近々リリース予定のS B!(イニシャルだけなら発表して良いかな。。。)

・まだ取引も未定 : ○○○、●●●、△△△ の3生産者(すべて取り扱いが決まったという噂も、、、来年リリースされる???)

取り扱いのある造り手からは「接待」という言葉を超えた歓迎。
「ようこそ、よく来くてくた!ありがとう!」言葉の奥にある、弊社勤務歴1年半であったり、関西支部長岸本命名「平成フリッザンテボーイズ」(笑)(所謂ナチュラルなワインが日本各所で飲めるようになった中でこの業界に入った世代)の私が知らない、

・今年で創業20周年を迎えるヴィナイオータという会社がこれまでやってきたことに対して
・弊社に限らず、これまでこのようなワインに情熱をささげてきた同業他社様、そして酒販店様、飲食店様、そしてなにより愛飲し、支えてくださっている消費者の皆様に対して

への想いを、慈愛に満ちた眼差しとともに感じました。

そして食事や宿、私たちのためにつかってくれた時間の密度もそれはそれは素敵なもので。

チンクエ カミーニ、ナタリーノ、SBからは、
期待であり、感謝であり、日本、ヴィナイオータと仕事をすることへの喜びのようなものが伝わってきました。またとくに魅かれたことは、各所、畑、醸造所内の案内はもちろん、その地域、街を半日~1日かけて案内してくれたこと。

私がワインと向き合う際に大事にしたい、学んでいきたいと思っている「そこで生きる人々の背景にある、その土地の文化、歴史」は、造り手にとっても伝えてほしい「ワインの向こう側(造り手からするとこっち側?)」なのだなぁと感じ、忘れることのできない時間となりました。そして帰国後は座学でもできる不勉強な点を見直さないとなぁと強く思うのでした。

お取引未定生産者の訪問においては、
「踏み込むポイントを見といて」という出発前のオータからの言葉を胸に実際の訪問、試飲、やりとり。そして帰国後のその後の話も少し聞いて。

「家族(造り手)が増えるというのは大変なことなんですよぉ、三浦さぁん」と道中オータから頻繁に言われてました(笑)新入荷の際は清き1本をお願いいたします!!

前置きが長くなりましたが、第一弾の訪問記は、HP、FBでも発表しました、新規お取引開始のチンクエ カミーニです。先日アップされた新入荷案内の記事にだいたいのことは書かれていますのでご参照下さい!

ここでは上記記事に載ってないことのご紹介となります。

造り手の自宅兼カンティーナ(プール付)門前にて、オータの「こんな豪邸に住んでんのかよ!」という突っ込みが1番面白かった思い出とともに(笑)

造り手(ワイナリー名) : Cinque Camini / チンクエ カミーニ
人 : Ottavio Sammarro / オッターヴィオ サッマーロ (愛称 : オッター)
産地(州) : カラーブリア

カラーブリアの内陸アクリの街から東に車で5~10分ほど。ちょっとした丘の上にある自宅兼カンティーナ。
今年で60歳になるオッターは「俺は40年分の経験を積んだ20歳だ!!(つまり、60歳だけど20歳くらい元気だぜ)」と笑いながら話す、陽気で、好奇心旺盛なおじちゃん。

20年前からこの故郷でもあるアクリの土地で農業を始め、現在、葡萄だけでなく、野菜、果物、レンズ豆を栽培、本人曰く「パンとパスタ以外を自分でつくっている」と。ただ動物(豚など)は後ろをついてくるのが可愛くて自分で屠畜はできなくなったとも。

その農業、醸造の手法は、誰かに教えてもらうことなく自分で失敗を繰り返し学んでいった独学、独流。そしてその考え方の基盤となっているのは、自然との共生、調和であることが話や畑、セラーの隅々から感じ取れます。
「福岡正信(自然農法の提唱者)の本は全部読んだ」と言い、有機のものであっても肥料を撒くことはせず、耕転もせず。また、根っこにチッ素供給タンクとも言える根留菌をもつクローバーの種を撒くことで、土中の窒素を保持しています。

畑は、カンティーナに隣接のピノ ネーロを主とした畑、カンティーナから車で15分ほどアクリの街を通り、西に向かった場所にあるマリオッコを主としている畑、その近くのカベルネ ソーヴィニヨン&メルロー混植の畑の3区画。どこも標高約700~800メートル。
特にマリオッコ主の区画は渓谷に位置し、谷の下方には川が流れ、南向きのなだらかな斜面と途中からちょっと急になる斜面に、葉のグリーンの強さ、ハリの強さが遠目からでもわかる葡萄の樹々が植えられています。

マリオッコが主体の畑。油断すると転がりそうな傾斜。
マリオッコの樹齢は7年ほど。

入荷案内にも掲載しているVA菌根菌によって、畑の菌の生態系が豊かであることを証明するように、自生のキノコがところどころに見られます。モリーユも生えたと(笑)
またこのVA菌根菌によって葉の緑は12月まで続くとのこと。

※菌根菌というと聞き慣れない言葉ですが、キノコの多くは菌根菌(マツタケ、アミタケ、トリュフなど)です。

葡萄畑を囲むように、野菜が植えられていて。

これらも苗を買って植えたのではなく、種巻いたら勝手に生えてくると。
野菜をもぎってかじりながら続く案内(笑)

※自生のスベリヒユ(Portulaca / ポルトゥラーカ)。この葉っぱ、美味しいんです!

畑仕事は早朝5時から。その時は犬と鷲が唯一の友達なんだ。
という話をしながら、カベルネ ソーヴィニヨン、メルローの畑へ移動。

先ほどの畑から車で数分、道路を挟んで、緩やかな斜面に樹齢20年ほどのカベルネ約1200本、メルロー約600本が植えれられています。

メルローの方がこの土地には合ってるとも。
2018年はボルドー液を二度散布しただけ。この8月下旬時点で、カベルネには病気の葉が所々見られたものの、メルローは葉も葡萄も色づき、ハリ、良好そのもの!

「トリハダが立ったらそれは良いものだ。音楽も、ワインも。」など、オッター節が次から次に出てきます(笑)

そして最後はカンティーナに隣接する畑。

ピノ ネーロが2年前の火事で焼け、現在樹齢2年半。
来年から収穫できるかも(?)。

また何か「食うか?」と勧められてる or 菜園自慢中(笑)

醸造所内は至ってシンプルで、小型のバスケットプレス、ステンレスの1トンほどのタンク、バリックが数個とアンフォラが1ケ。
品種やその時々によって、樽で1年→ステンレスタンクで1年、樽で1年→アンフォラで1年の熟成などを施すそう。
この時のアンフォラの中にはマリオッコ17年が。

ヴィナイオータの扱う他の造り手たちのこともよく知っていて。
ヨスコ グラヴネルの、農民としてのアイデンティティから受けた影響は大きいと話し、
ブレッサンの、知識、経験値に裏打ちされた一貫性や繊細さをリスペクトするとも。

その後は食事を頂きながら、食べ物に限らず、音楽、死生観などの話を夜中まで。

食後のフルーツ盛り合わせ。手前はサボテンの実!

死ぬことは怖くないけれど、苦しむことは良くない。
楽しく、快く生きていくために、何より大事なのは身体であり、その身体は食べるものからつくられている。

料理というのは最低でも昼、夜、一日2回は楽しむものだし、
アートは同じものや時を繰り返さない一期一会のようなものだと思うけれど、料理もそうだよね。

音楽や芸術への造詣の深さ、食や政治、制度、環境への問題意識の強さが会話の隅々から感じ取れます。

オータからも、
「『地球環境に良い』という言葉は、『人間が生存していくにおいて』という前提を人間が勝手につくって言っている言葉だよね。人間が絶滅したら、全ては自浄していくはずだよ。
自然からしたら人間の言う『地球環境のために~』なんて余計なお世話だと思っているよ~。」などと話をしながら。

昔、女の子からプレゼントされたワインが美味くて、ワイン造りを決意したオッター(笑)
そんなウソかホントかわからないことを言っていたけれど、
自然に生かされていること、その恩恵を授かっていることを、頭だけでなく全身で受け止め、自然への敬意にあふれた暮らしをしています。

今回の訪問で現行ヴィンテージから、古いヴィンテージのワインを頂いた中で、
味覚の上での唯一無二の個性。そして何より負担のない「楽さ」の根底をオッターとの時間の中で感じていきました。

日本に戻って新着のワインを飲んでみると、特に2016のヴィンテージは南部の葡萄の持つ力強い味わい、かつ、道中でみた南の花々を彷彿とさせるような濃くも艶やかな香り。そして11年のEdusは骨格は太くとも肩の力が抜けるような印象です!!

訪問前にオータからの話で「パーネヴィーノ以来の衝撃」「小さいパーネヴィーノ」などという言葉を聞いて、勝手に「パーネヴィーノに似ている香り、味のワイン」と解釈していました。それはカンティーナに着いてからも試飲の中でパーネヴィーノに似ている所を探すような飲み方をしていたり、、、
ただ当たり前ですけど、それは違いますよね。
考え方、向き合い方、そしてワインの輝き方(今であり、将来であり、造り手が、ワインがどう向かっていくのか)に、ある共通性があるということであって、「香りや味が似ている」ワインではないはずです。

オッターのワイン、皆様自由に飲んで感じてみてください!!

ちなみに一番右の男性は、チンクエ カミーニのスタッフではなく、アクリのリストランテ”Il Carpaccio”の料理人 Gianluigi/ジャンルイージ。
このお店の料理も自然への敬意を溢れていて、かつ旅の疲れなど吹っ飛ぶくらいいくらでも食べられるような料理。
試飲会などもオッターと2人で出向いていると。

山々に囲まれているアクリの街並み。かつては織物職人、靴職人で栄えた町アクリ。


アクリ郊外。斜面には葡萄やオリーブの木々、下方は川につながっている。

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