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2023-05-23

造り手紹介 Camillo Donati / カミッロ ドナーティ

造り手:Camillo Donati / カミッロ ドナーティ
人:Camillo Donati / カミッロ ドナーティ
産地(州):エミリア ロマーニャ
ワイン:Lambrusco、Barbera、Rosso della Bandita、Malvasia Frizzante、Sauvignon Frizzante、Trebbiano Frizzante…等
所在地:Via Costa, 3, 43035 Barbiano PR – Italia <Map>
Web:http://www.camillodonati.it/

現当主カミッロの祖父オルランドが、パルマから南に20km、ランギラーノ郊外アーロラにグロッポーネ(あまりの急斜面であったため「背中」と名付けられた)と呼ばれる小さな畑を1930年に購入したことから始まったドナーティ家のブドウ園。父アントニオはパルマのイタリア商業銀行の経理センターで働きながらグロッポーネでの仕事を手伝っていましたが、1964年に祖父が亡くなってからは一人で畑仕事を引き継ぎました。アントニオの友人で畑を手伝っていたオヴィーディオ(1923年生まれ)が、多忙であった父の代わりとなって畑やワイナリーの仕事を青年カミッロに教え、良き友人としてアドバイスし続けたことで、謙虚さを持った職人としてのカミッロの礎が築かれました。

カミッロはオヴィーディオのことを「偉大な友人であり、師」と慕い、オヴィーディオの晩年まで良い関係は続きました。カミッロの代に入り、自家元詰めを開始、1992年に初めてのワインをリリースしました。現在はバルビアーノとフェリーノに点在する標高300m前後の自社畑12ヘクタールに加え、2017年から借りているヴィディアーナの標高250mほどの5ヘクタールの畑でブドウを栽培しています。妻フランチェスカ、妹クリスティーナ、義理の弟モレノ、従兄弟、義理の父、動ける人はみんな働く文字通りの家族全員攻撃でこの地方に残る伝統的な醸造やブドウを守るために尽力しています。

●以前に掲載していた造り手紹介はこちら
造り手紹介 Camillo Donati / カミッロ ドナーティ(2016年12月版)

<ワインラインナップ>


●Malvasia Frizzante(マルヴァジーア フリッザンテ)
品種:マルヴァジーア(マルヴァジーア ディ カンディア アロマティカ)
クレタ島に起源を持つマルヴァジーア ディ カンディア アロマティカ。数世紀前にパルマ一帯に伝わったこの白ブドウは世界で最も古く、最も香り高い品種のひとつ。30~50年ぐらい前までは甘口か薄甘口のワインが主に造られていたが、現在では辛口のワインも多く造られるようになった。

特徴的な華やかな香りと、余韻にアロマティックなブドウ特有の苦みがある。合わせる料理を選ばないが、熟成させると、よりその親和性は増していく。


●Malvasia Rosa Frizzante(マルヴァジーア ローザ フリッザンテ)
品種:マルヴァジーア(マルヴァジーア ディ カンディア アロマティカ)95%、黒ブドウ5%

2006年に亡くなった母ロゼッタに捧げるため造られ始めたワイン。彼女がローザと呼ばれていたことに触発されて、辛口の鮮やかなロゼワインを造ることに。一般的には、ロゼワインを造る場合黒ブドウをベースにすることが多いが、ロゼの色を鮮やかにするためには清澄や濾過という過程が必要になってくる。それを望まないカミッロは、母ローザがとても好きだったブドウということもあり、白ブドウであるマルヴァジーアを主体にロゼワインを醸すことにした。

白ブドウを主体にロゼを造るには、黒ブドウをブレンドするほかない。いくつかの試行錯誤を経て、カミッロが理想とするマルヴァジーア ローザが2009年に完成した。辿り着いたブレンド比率はマルヴァジーア95%、黒ブドウ5%。2009年、2010年、2011年と黒ブドウの品種を変えてみたが、ワインの香りにもたらす結果はあまり変わらなかったとのこと。マルヴァジーア100%の白と比べると、ときには華やかすぎる香りがわずかに抑えられているので、食前酒にはより向くこともあるのでは。


●Malvasia Dolce Frizzante(マルヴァジーア ドルチェ フリッザンテ)
品種:マルヴァジーア(マルヴァジーア ディ カンディア アロマティカ)

カミッロのフリッザンテは、醗酵中のマルヴァジーアのモストの一部を二次醗酵用に抜き、それを後から醗酵しきったベースワインに加えて瓶内二次醗酵させることによって造られる。モストを醗酵中のものから抜いただけではそのまま醗酵が進んでしまうが、粗くフィルターをかけることにより、酵母はそのまま液体中に残るもののなんらかのストレスがかかることで醗酵が一時的にストップするという。こうすることで、アルコール度数4~6%程度の部分的に醗酵した糖度が高いモスト(甘口ワイン)が残る。

このマルヴァジーアドルチェは、そのモストの部分をボトリングしたもの。マルヴァジーアの中でも最も香り高い品種ならではの素晴らしい香りが存分に楽しめる。デザートやフルーツ全般と幅広くあわせられるが、パルマの古い伝統として大きなグラスにマルヴァジーアドルチェを注ぎ、クッキーや絶品のドライケーキを「溺れさせる」という食べ方があるそう。


●Sauvignon Frizzante(ソーヴィニョン フリッザンテ)
品種:ソーヴィニョン

ソーヴィニョンという名前はフランス語の「Sauvageソヴァージュ(野性的な)」に由来していて、片親がサヴァニャンである可能性があり、フランスのロワール地方を起源とする説が有力。パルマ周辺でも何世紀も前から個人レベルでは植えられてきたが、それを集中的に栽培しパルマの丘のソーヴィニョンのワインを生産することを決めたのはブリアン伯爵であった。1800年代にフランスからブドウを輸入、フェリノ城を中心とした広大な敷地にソーヴィニョンを植え栽培を始めた。ブリアン伯爵の直感は正しく、パルマの気候と土壌との組み合わせは理想的で高品質なワインが生み出されることとなった。

辛口に仕上げたソーヴィニョンのワインに、濾過を行って醗酵を一時的に止めた甘口のマルヴァジーアを数%合わせ瓶内で二次醗酵を行う。ソーヴィニョンはランギラーノの気候と大地に順応し、彼が栽培する白ブドウの中でも、最もリッチで圧倒的なボリューム感を持ったワインとなる。「ソーヴィニョンは熟成させて飲んでも素晴らしく美味しいよ!」とカミッロ談。


●Trebbiano Frizzante(トレッビアーノ フリッザンテ)
品種:トレッビアーノ

師オヴィーディオの畑を2004年から借りているカミッロ。その畑に植えられていたトレッビアーノ(1968年植樹)で仕込んだワインの出来に感動したカミッロは、2005年からは自分の畑にも1ha分の区画にトレッビアーノを植えた。イタリアでトレッビアーノが栽培されているのはほとんどがトスカーナなど中部の地域。エミリアロマーニャでは主に東に位置する平野部のロマーニャ地方で植えられており、パルマ一帯では品質ではなく生産量を目的に造られるブドウとして「ピケット」と呼ばれ蔑視され、ほとんど植える人はいないという。

カミッロは「季節のサイクルの中で謙虚さ、深い敬意、そしてたくさんの愛を持ってサポートするだけで、ブドウの樹がどれだけ寛大であるかを証明することができる」という。トレッビアーノはマルヴァジーアほど香りが強い品種ではないが、彼のフリッザンテは力強い香りと風味を特徴としている。


●Trebbiano Dolce Frizzante(トレッビアーノ ドルチェ フリッザンテ)
品種:トレッビアーノ
カミッロの辛口微発泡ワインは、アルコール度数が4-5%の状態で粗目のフィルターをかけ醗酵をブロックし低温で保管しておいた甘口ワインを、収穫翌春に辛口に仕上げたワインに添加してボトリングし、その甘口ワインの糖分と冬眠していた野生酵母の力を借り瓶内二次醗酵させて造られる。例年は一番生産量の多いマルヴァジーアの一部を瓶内二次醗酵用に避けるが、2021年は、春先の遅霜と夏の酷暑&乾燥により収量が通常の半分以下と激減。白のフラッグシップであるマルヴァジーアの生産量を確保すべく、二次醗酵用のモストはトレッビアーノを使うことになった。そのため、そのモストをボトリングして造る甘口も2021年はトレッビアーノで造られた。

商品名は「フリッザンテ」としているが、このヴィンテージは旺盛な瓶内二次醗酵が起こり3気圧を優に超えるガス圧があるので、厳密な区分としてはスプマンテとなる。


●Piccolo Ribelle Frizzante(ピッコロ リベッレ フリッザンテ)
品種:バルベーラ

酷暑となる年の割合が増えるイタリア、40年間で収穫時期が50日も早くなっているというデータもあるほど。普通に仕込んだらアルコール度数15%以上になり瓶内での二次醗酵が進まなくなってしまうので、そこまで糖度が高くなく酸が残ったブドウとなるように通常の収穫時期よりも2週間早めに収穫し、ロゼで仕込まれたのがこのワイン。リベッレはイタリア語で「反抗的な」「逆らった」という意味で、今まで自然のサイクルやリズムを尊重してワイン造りをしてきたカミッロの今後への意志表明というか、自然に一方的にやられないための反骨心を示している(ラベルの色は反抗を表す「青」)。

リベッレは「ワインも食事も他者と分かち合うことで楽しみが増すもの。マグナムだったら、1人じゃ開けられないでしょ?」と1500mlで瓶詰めされ、750mlに詰めたものは名前の頭に「ピッコロ(小さい)」と付けられた。赤のバルベーラと比べると香りは可愛らしく、果実感も甘やか。カミッロのラインナップの中で最も軽やかな飲み口のワイン。


●Lambrusco(ランブルスコ)
品種:ランブルスコ マエストリ

地域を代表するワイン、ランブルスコ。ランブルスコには様々な亜種があるが、彼らの畑に植えられているのはランブルスコ マエストリ。ランブルスコの栽培地域はポー河流域の肥沃な平野部が中心となっていることから、畑では仕立てを上へ高くして収量を増やすのが主流。しかし、標高約250mに位置するカミッロの畑は平野部に比べ痩せているため灌漑の必要も仕立てを高くする必要もないので、グイヨで剪定され収量が少ない代わりに凝縮したブドウが得られている。

瓶内二次醗酵に使う糖分もブドウ由来のものであるべき、という考えから収穫翌春にできたベースワインに醗酵途中で避けておいたボナルダの甘口ワインを加え、瓶内二次醗酵を促したあとリリースされる。近年は、温暖化の影響による酷暑から発泡が上手くいかないヴィンテージもあるが、スティルワインとしてもシリアスな味わいをもっており、「5年以上熟成させると夢のような味わいになる」とカミッロ。


●Barbera(バルベーラ)
品種:バルベーラ

フィロキセラが出現するはるか前の9~10世紀頃、彼らが畑を構える周辺の丘は、ほとんどがバルベーラ、マルヴァジア ディ カンディア アロマティカ、モスカート ジャッロのブドウ畑で覆われていたという。 その後、フィロキセラでブドウ畑が壊滅してしまったあとは、当時の統治者がリスクが少ない農業として丘陵地帯でもパルミジャーノ レッジャーノを生産するための酪農を推奨し、バルベーラ栽培の歴史がいったん途絶えてしまった。

歴史を知らない人からは、バルベーラはこの土地に合わないということを言われるが、カミッロは、バルベーラこそこの土地を最も表現できるブドウと考えている。奥深い香りと骨格を持ち「時間の経過とともに、言葉では言い表せない二次的、三次的な香りや風味が放たれるようになる」と、熟成してから飲むことを薦めている。


●Rosso della Bandita(ロッソ デッラ バンディータ)
品種:黒ブドウ4品種のブレンド

「追放された(あるいは“亡命してきた”)ブドウで造られた赤ワイン」という名のロッソ デッラ バンディータ。カミッロはセパージュを明らかにしていないが、土着品種ではないブドウ4品種をブレンドして造られている。かつてエミリア地方では、ワインを造る際ブドウはすべて混ぜられ単一品種でボトリングされることはほとんどなかった。祖父母の頃のように造ってみたい、という想いもありこのキュヴェは混醸で造られている。

品種ごとの個性を大事にしたいと考えているカミッロは基本単一品種で仕込むことを良しとするが、このワインに関しては「ブレンドで造られるワインに明確なアイデンティティはない。しかしそれぞれのブドウの熟度が年ごとに異なるので、同じである部分と異なる部分の差それぞれがヴィンテージごとの違いを特徴づける」と語っている。


●Bonarda Dolce Frizzante(ボナルダ ドルチェ フリッザンテ)
品種:ボナルダ

カミッロが栽培するボナルダは、ピエモンテ州北部でゲンメやガッティナーラに混ぜられるボナルダ ピエモンテーゼとは異なり、ロンバルディア州でクロアティーナと呼ばれているブドウ品種。この地方では伝統的にバルベーラに混ぜられることが多い品種であるが、香りも華やかで古くから甘口ワインとしても親しまれてきた。このワインは白のマルヴァジーア ドルチェと同様に、赤の瓶内二次醗酵用に避けておいた醗酵途中のモスト(アルコール度数2.5~5%程度)をボトリングしたもの。

通常だとアルコール度数5~6%の軽めのワインとなるはずが、、2016年ヴィンテージはなんと12.5%。かなりパワフルなワインなので、氷や炭酸で割るのもおすすめ。

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