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2023-05-23

ヴィナイオッティマーナ2022【造り手セミナー】アールペーペ

①セミナー動画 (質問コーナー|03:32~)

ヴィナイオッティマーナ2022 P4 DAY2に行われたセミナーの様子です。今回も現当主のイザベッラと、建築家のご主人エンリコの二人が来日してくれました。アールペーペは、ミラノから北西に約140km、ロンバルディア州最北部、スイスとの国境近くにあるヴァルテッリーナ渓谷のほぼ中央にあるワイナリーです。その歴史は古く、1860年からブドウ栽培とワイン生産を行い、この地域のワイン造りの発展に大きく貢献してきましたが、時代の流れの中で一度はワイナリーを売却してしまいます。しかし、イザベッラのお父さんであるアルトゥーロが40歳の時、当時のヴァルテッリーナでワイン造りの伝統が次々に失われて行く状況を目の当たりにし一念発起。ブドウ畑を買い戻し、1984年にAR.PE.PE.(自身の名前Arturoと、父母の苗字、Pelizzati、Peregoの略)を設立しました。現在は、娘のイザベッラと弟のエマヌエーレがアルトゥーロの想いを引き継ぎ、13haの畑でネッビオーロ(ヴァルテッリーナの呼び方ではキアヴェンナスカ)のみを栽培、年間約5万本を生産しています。

②造り手紹介 (01:12~)

アールペーペの造り手紹介、詳しくはこちらから。

③造り手への質問と回答

Q1. 急斜面にあるブドウ畑には当然トラクターなど入れるわけもなく全てが手作業。平地や丘陵地のブドウ畑と比べると何倍もの労力が必要とのこと。SNSを見ると沢山のスタッフさんが居るようですが、現在は何名程で仕事をしていますか?(03:32~)

A2. ひとつひとつの段々畑がとても狭く、場所によっては0.1ヘクタールもないような畑が続く。段々畑を行き来する石の階段は一歩足を踏み外せば簡単に骨折してしまうような急斜面の畑。
Arpepeの畑は1ha当たり年間で延べ1500時間かかる。平地や丘陵地だったら500時間と言われているので、つまり機械での作業が可能な畑に比べ約3倍の労働時間が必要。
現在10人のFIXの従業員がいるが、それ以外にも、折れた杭を直したり針金の緩みを直すなどの簡単な仕事は農業関係の人材派遣会社に依頼をして単発のスタッフにお願いしている。(=10名のスタッフでも手が回らない。)

Q2. アールペーペでは、かつてのヴァルテッリーナのワイン造り同様、大樽と瓶内での超長期間の熟成を行っており、最低でも2~3年、長いものはブドウ収穫から10年近い年月をかけてリリースされるワインもあります。その実現にはかなりのスペースが必要ですが、山を掘って造ったというセラーには何万本のワインが保管できるのでしょうか?(07:40~)

A2. 現在15ヘクタールの畑を所有しているが、Arpepeになる前の、イザベッラの祖父・曾祖父の時代は50ヘクタール以上の畑を管理していた。更に自社ブドウだけではなく買いブドウも醸していたため、岩山を掘ったところから現在は住宅地になっている部分まで全部セラーだった。現在は当時の手前部分だけを使用している。1984年にアルトゥーロがArpepeを設立し、醸した最初のワインは、6年後の1990年にようやく販売された。現在もアルトゥーロが貫いた哲学を守っているため、最低でも6ヴィンテージはストックできるスペースがある。平均して年間5万リットルのワインを造っているため、5万リットル(約7万本)x6ヴィンテージ=35万リットルのワインが常時眠っている。

Q3. 私たちはイザベッラのことを、「エレガントな女性醸造家ナンバーワン」(弊社調べ)と言っていまして、今回で4回目の来日となりますが、誰に対しても常に笑顔で親切丁寧に説明や対応をしてくれていて、本当にステキだなと思っています。そんなイザベッラも、ストレスを感じたり、心や体が疲れる時はあると思うのですが、そういう時はどのように元気を回復していますか?(14:14~)

A3. まず何よりも自分たちの仕事を愛しています。ヴァルテッリーナという土地の文化やそれを体現するブドウ畑を愛しています。私だけでなく家族みんながこの仕事を愛しています。好きなことをやれているのでストレスを感じづらいのだと思います。また、今回の様に、私たちの素晴らしい土地や文化を沢山の人に伝える機会、このような仕事も愛しています。 そんな中でも、心が疲れた時は、自然や静寂が好きなので、自然の中に身を置いてゆっくり歩いたりします。フレッシュな空気を吸いながら静寂の中で歩くことで気持ちがリセットされパワーチャージができます。

Q4. イザベッラとエマヌエーレの意見が合わないときは、どのように解決して行きますか?(17:57~)

A4. 家族でやっていることの最大のメリットはお互い建設的に話し合えることであり、自分のエゴや一個人の理だけを求めて意見するということがありません。幸い3兄弟の性格や得意/不得意が全く違い、お互いの持ち場が自然と出来ました。
(イザベッラは学位も持つ醸造家でもありますので)もちろん畑やワイナリーでの仕事もしますが、今回の様に外に向けてワイナリーやヴァルテッリーナの素晴らしさを伝える仕事を率先して行っています。
グイードは離れたところに住み別の仕事もしていて、ワイナリーでの仕事を直接しているわけではありませんが、コミュニケーション能力に長け、言葉を選ぶセンスがしっかりしているため、SNSでの発信やウェブサイト等の仕事を全て引き受けています。
エマヌエーレは畑やセラーのリーダーです。彼はとてもきっちりしていて指示の出し方も的確でみんなを纏めることが出来ます。不具合を見つけた時にはしっかり考えて解決策を見出します。エマヌエーレがしっかりと実務をこなしてくれることで、私は外に出て伝える仕事をすることができるのです。
こうして3人がお互いの持ち場を守ることで、アールペーペは成り立っています。

④まとめ

「アールペーペの二人すごく良い人たちで大好きになりました!」との声がスタッフからも聞かれましたが、彼らに会って話をしてもらったことで、確実に彼らのファンが増えたのではないでしょうか。彼らの、「ヴァルテッリーナの伝統を守りたい」という信念や強い想いを、お客様にも直に感じて頂けたと思います。アールペーペブースでのお客様の反応はとても良く、当日彼らのワインを購入してくださるお客様も多く見られました。イザベッラもエンリコもずっと忙しくしていましたが、二人とも常に笑顔で嬉しそうでした。今後も、彼らの想いや覚悟を多くのお客様に知っていただける様、しっかりと伝えることを続けていきます。(担当:佐藤)

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