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2018-12-06

【新入荷】2018年12月 その1(Daniele Piccinin、Podere Il Santo、Barbacarlo、Paolo Bea)

新しい倉庫(出来あがったら、その上にNewダダが!)の建設も始まったこともあり、まるで恋人同士のようにほぼ毎日銀行さんとやり取りしているオータです。彼らのお世話にならずにやっていける日を夢見て仕事をしているのですが、果たして実現するものなのでしょうか…。

先日、金沢で試飲会させていただいた時に“(だだちゃ)マメ臭&還元香(臭)”問題が議題になりました。ここ最近何人かの方からも同時多発的に聞かれたことでもあるので、この場で改めてオータの私見とこれらに対するスタンスを表明させていただこうかと。

まず、これらニュアンスが出るための製造過程での絶対条件(??)ですが、

・醸造からボトリングまでの過程で酸化防止剤を全くないしごく少量しか使わない
・熟成の過程において澱引きを全くないしほとんど行わない
・あらゆる種類の清澄・濾過処理を行わないか、異物を除去するため程度の目の粗いフィルター(酵母由来の澱などはやすやすと通過できるくらいの…)のみを使用してボトリングをしている

という事になると思います。

これらに加え、澱が沈みづらいと言われているステンレスタンクでのみ熟成が施されたものであったり、酸化的な熟成容器であるはずの木樽を使用していたとしても熟成期間が十分ではなく、一部の酵母がワイン中に溶存した(舞った状態の)ままボトリングされたワインなどは、これらのニュアンスが出易い傾向があると思います。逆に、上記3つの条件を満たしたワインであっても、木樽での熟成が長く(2~3夏を樽で過ごしたものとか)、(熟成中に)強い還元香が出た際に澱引きをしっかり行ったワインならば、出にくい気がします。

“出易い”、“出にくい”と曖昧な表現をしていますが、それは例外的ケースもある事を知っているからで、責任逃れをしたいわけではございません(笑)!

●例外1!
近年のサッサイアなどは、過去10ヴィンテージくらいを振り返ってみると、(ブドウ生育期間中に)酷暑や極端な乾燥などに見舞われた年がかなりの頻度でありました。そんな年は、パワフルな(=濃く、凝縮した)ブドウと仕事(醗酵)前にすでに疲れちゃっている(ないし数の少ない/密度の低い)酵母というちぐはぐな状況のせいで、(ブドウと酵母が)醗酵という仕事を完遂するのにとても苦労しているという印象を受けます。そして醗酵に苦しんだ年のワインは、澱がきっちり沈殿するのにも時間がかかり、例年通りの時期タイミングでボトリングしてしまうと、いつも以上に濁りのあるワインとなり、その結果として還元しやすくなる…。

澱がなかなか沈まない年なのならば、そのワインの性格特性に寄り添って、普段よりもボトリングのタイミングを遅らせればいいんじゃない?というアイデアから生まれたものが、先日リリースしたサッサイア2016のスペシャルエディションになります。

に対して、サッサイア2015年などは他の年と同条件で醸造、ボトリングされたにもかかわらず、リリース当初から酵母的なニュアンスとは無縁のワインで、それが酸化防止剤完全無添加かどうか以前にワインとして完成した感がありました(二十歳そこそこで完全に自立した立派な大人、的な…)。

アンジョリーノは2015年の事を「太陽が照るべきタイミングで照り、雨が少々あったら…というタイミングで雨が降りと、全てが理想通りに進んだヴィンテージ。醗酵もすぐに始まり、人が手をかけるまでもなく全てが円滑に進んだし、冬前には(澱がキッチリ沈んだせいで)ワインはもうボトリングできるんじゃないかってくらい澄んだ状態だったよ。」と言っていたのですが、ストレスなく育ったブドウと健全で十分な数の酵母がいたからこそスムーズな醗酵が実現し、短期間でちゃんと“大人なワイン”になったということなのだとオータは想像しております。

●例外2!!
オスラーヴィエ、リボッラ、ヤーコットといったラディコンの白は、上記3条件を大いに満たしていて、樽での熟成も4年以上と長期間に渡るので酵母もやれる限りの仕事をし切ってくれているはずだから、還元などするはずがない!とオータは信じて疑わなかったのですが、2006、2007、2008年ヴィンテージなど直近のヴィンテージは抜栓してしばらく置いておくとマメることが…。醗酵過程は超酸化的、そして樽熟成という酸化的な状況に長らく置かれたワインが、抜栓後に未だ還元状態に陥るという事実にはかなりびっくりさせられました。そして、抜栓後マメったオスラーヴィエ06を放置し、1か月後に飲んだ時の美味しさたるや!「やはりワインは生き物なのだ!」という思いを新たにしました。

逆に、マメったり硫黄のような香りが絶対に出ないワインにするためには、酸化防止剤の使用と澱引きの頻度を上げ、濾過しまくれば良いわけです。

とはいえ、酵母を筆頭とした各種微生物なくしてワイン自体存在しないわけですから、醗酵が終わった途端に彼らの事を悪者扱いするというのは如何なものかと。微生物という生命体をある程度ボトルの中に持ち込んでしまったのなら、彼ら以上に気まぐれで移り気な僕たちは、彼らがボトルの中で起こすかもしれない“気まぐれな行為”に対しても、もう少し寛大であるべきなのではないでしょうか。

ヒトとしての生ある限り、汗をかき垢が出るように、“生きているワイン”が出すこれらのニュアンスも、“ワインと酵母がおならをした”くらいに考えるというのはいかがでしょう? 「どんなに臭いおならであっても、(抜栓せずに置いておけば)いつか消え去る。」ということは、オータのこれまでの経験から断言させていただきます!ヴィナイオータ史上、最強にマメったワインと言えば、間違いなくパーネヴィーノのマリポーザ2006ということになると思うのですが、今やあまりにも危険な飲み心地を備えた、妖艶な美女に変貌を遂げております!!

そもそも、臭くて美味しい食べ物はいっぱいあるのに、なぜワインだけ、“必ず良い香り”でなければいけないのでしょうか??ブドウという果物から造りはしますが、あくまでも醗酵食品なので、微生物由来のニュアンスがあるのは至って“自然な”事だと思うのですが…。

「(ヒトは)外見よりも中身(内面)」(←過半数の人が賛同してくださることを祈りつつ…(笑))などと言いますが、ワインの色調と香りはあくまでも外見にあたり、味わいこそが中身なのではないでしょうか?(もちろん、中身&外見のどちらも美しいに越したことはないというのは、ヒトにもワインにも言える事なわけですが…。)

さらにもう一つ言えることがあるとすれば、これらのニュアンスは、造り手が“できるだけ~をしない”という選択を数多く採用したワインだけに生じるものだということ。自然環境にとどまらず、自然の摂理や流れに対しても敬意を払う(払っていると信じたい!)造り手のワインだけが持ち得る特性なわけです。

「ワインの中身と外見、どっちが大事?」問題と「造り手の自然への敬意&良心の有る無し」問題のどちらに関しても、道徳倫理的に考えたのなら、一方を支持してしまうのが“自然な”気がオータはしております…。

飲食店の方から「(グラス用に)開けたワインが途中からマメるのですが、どうすれば良いでしょうか?」といった質問を頂くことがあるのですが、答えは至ってシンプルです。

1.(抜栓後)マメる前に飲み切る。マメりそうなワインはあらかた予想がついているわけですから、グラスワインで提供するにしても瞬間的に注ぎ切れるようにサービスする。もしくはある程度の人数のグループにボトル売り!

2.“マメる事”が問題だと考えるのならば、マメりそうなワインをグラスワインで使わない。ブレッサン、ヴォドピーヴェッツ、グラヴネルのワインなど、マメらないナチュラルワインはいくらでもあります。

3.開けずに待つ。(例:今抜栓するのならば、パーネヴィーノのワインだったら万全の態勢に入ってきた2011年以前のもの、ラディコンの白なら2005年以前のヴィンテージ、サッサイアだったら2015以前とか…。)

と前置きが長くなりましたが、12月の新入荷案内行かせていただきま~す!!

<12月の新入荷その1>

【ダニエーレ ピッチニン】
ダニエレ君ことダニエーレ ピッチニンから欠品していた2016年ヴィンテージの白2種類が再入荷です!

ビアンコムーニは3300本届きまして、もう2400本現地に取り置きがありますのでガンガンお使いください!ドゥレッラで造るモンテマーグロは今回入荷の2100本で最後となる可能性大です。ガンガン開けつつも、熟成用ボトルの確保もお忘れなく!どちらも限定にはしませんが、瞬殺必至です。

ドゥレッラで造るスパークリング、アリオーネ2014とガス圧が恐ろしく高いので良く冷やして屋外抜栓をお勧めしたいピノネーロで造るローザ フリッザンテ2014(そのまま訳すと、微発泡ロゼなのですが、全然“微”ではない発泡ぶりです…。)、そしてピノ ネーロ2016もよろしくお願いします!


【ポデーレ イル サント】
オータ的“どうにかしてあげたい造り手”ランキングのぶっちぎりトップをひた走るポデーレ イル サントから3ワインが再入荷しました!

“どうにかしてあげたい造り手”と書くと、「冴えないワインを造ってるんだけど、どうにも放っておけなくて…。」とオータが思っているように思われちゃいそうですね(笑)。どうにかしてあげたいのは、彼らの私的な部分だったりするのですが、ワイナリー、農場としての根幹を成す部分でもあり…非常にデリケートで、辛い時代を彼らが生きていることを知っているだけに、ワインを動かすという事に関しては妥協なく協力したいなと考えております。そんなわけで、セラーに残っていたワインをすべて引き取ってきました!

最近「カーゼコリーニのワインが手に入らない!」という嘆き節をしばしば巷で聞かされるオータが、そんな方に是非!とお勧めしたいのが彼らのワイン。香りから読み取れる“ブドウの完熟”に関する両者の考え、圧倒的な凝縮感があるのにあくまでも軽い飲み心地(フリーランのワインだけを使用していることに起因していると思われます)など、共通項がたくさん!

ライロン08のみ420本とそれほど多くない入荷本数ですが、ノヴェチェント05、06は潤沢にございます。これからの季節、ジビエなどとも最高に楽しいワインだと思います。是非!


【バルバカルロ】
生けるレジェンド、リーノ マーガ翁率いるバルバカルロの2012年以前のヴィンテージが全て完売しましたので、届いてから2-3年寝かせていた2013&2014ヴィンテージをリリースします!

ほんの1年ちょっと前までは、恐ろしい本数のバックヴィンテージものがセラーで眠っていたのですが、ここ1年くらいの間でようやくその価値が認められるようになったのか(遅すぎるわっ!)、凄い勢いで売れてしまったそうで、そこかしこに埃をかぶったボトルがあったセラーはすっからかんに…。価格も物によっては1.5倍ほどになっていたのですが、一切ためらうことなく残っていた新旧ヴィンテージを全て仕入れまして、今現在はイタリアの港で日本への出発を待つ状態です。

合計26種類(!)で、仕入れ総額は…大変なことになっております(恐)…。そのまま値付けすると大変なことになってしまうので、今後もヴィナイオータだけが買うことになる(価格的に)条件の出ているバルバカルロ1993を多売することで調和を取るべく、他のヴィンテージのワインは極限の価格設定をしました。今回売り出すワインも、新価格が採用されております。今現在イタリアの港にあるバックヴィンテージものがすべて売り切れた暁には、1993年のワインしか再入荷の予定はありません…。終わってないのに歴史が終わってしまったような感じでなんだか寂しい…。後悔なきよう、お早目のご購入を!!


【パオロ ベア】
「最近パオロ ベアの入荷がありませんね。」と何人の方に言われたことか…。半年、いや1年以上前から、在庫の確認とオーダーを出していたのですが、つい先日ようやくセラーを出発したそう…。この便の到着を待ってからにしようと考えていた既着サグランティーノ2種類をその場しのぎ的にリリースすることにしました!

サグランティーノ パリアーロ2007は、パリアーロという区画のサグランティーノを使用したベアのスタンダードラインのサグランティーノなのに対して、2007が初ヴィンテージとなるサグランティーノ チェッレーテは、彼らがチェッレーテと呼ぶ区画の「モンテファルコで最も高い標高に植わるサグランティーノ」で醸したワインになります。標高の高さにより、ブドウはよりゆっくりと成熟し、昼夜の寒暖差により偉大な酸も付与されるはずと当主ジャンピエロは考え、今まで誰もサグランティーノを植えたことのない場所に植えてみたそうです。まだ樹齢の若い区画なのですが、2007年は天候にも恵まれ素晴らしいブドウができたため、リゼルヴァないしグラン クリュ的位置づけのこのワインを生産することにしました。

どちらもすんばらしいワインですが、この2つのワインにあるテンションの差は、飲み比べていただければ一目瞭然ならぬ一飲瞭然かと。パリアーロが180本、チェッレーテが36本のみの発売となります。瞬殺必至ですが、どちらも再入荷の予定あり、です!!美味しいですよおおおお。余談ですが、ロッソ デ ヴェオの2005と2006年には、チェッレーテのサグランティーノが使われていました。

文:太田久人
116 143 147 206 212 nuovo18.12.06

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