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2015-11-29

造り手紹介 Vodopivec / ヴォドピーヴェッツ(~2015.11)

造り手:Vodopivec / ヴォドピーヴェッツ
人:Paolo Vodopivec / パオロ ヴォドピーヴェッツ
産地(州):フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア
ワイン:Origine, Vitovska T, Vitovska H, Vitovska, Solo
所在地:Localita Colludrozza, 4 – 34010 Sgonico TS – Italia <map
Web:http://www.vodopivec.it/

見た目だけでなく中身も超かっこいい、ワインに関する一切の妥協を拒否、労を惜しまず、リスクを恐れず、若さ(絶対的な経験の少なさ)を精細に観察することでカバー…Mr.ストイックことパオロ ヴォドピーヴェッツ。

とことん努力する天才パオロ

パーネヴィーノのジャンフランコは狂気の沙汰ともいえるパオロの生き方、仕事に捧げる莫大な時間、労力を目にして、”俺には無理” と匙を投げ、スロヴェニアの巨人ヴァルテル ムレチニックはパオロの畑を見て「僕が今までで見た畑の中でいっちばん素晴らしかった!パオロが僕なんかよりも遥か先を見据えていることを見せつけられちゃった感じだよ。いや、本当に凄いよ!」と絶賛、その仕立てはレ ボンチエのジョヴァンナも新しく開墾した畑で採用し、そのジョヴァンナ、マッサ ヴェッキアのファブリーツィオをして天才と言わしめる“努力する天才”です。

トリエステ県カルソ地区のほぼ中心ズゴーニコにあるヴォドピーヴェッツ家。代々農業を営んでいますが、パオロ&ヴァルテル兄弟によってワイナリーとして本格的な生産&ボトリングを開始したのは1997年のこと。カルソという土地を表現するにあたり、ヴィトフスカこそ最良のブドウであると信じ、自ら開墾した畑はヴィトフスカのみを植えています。

カルソは、石灰岩台地で土が少ないところで、既存の畑というのは土が多かった場所か、もしくは客土(外から土を持ってくること)をしたところであったりします。彼が最初に開墾した畑も客土をしたそうですが、すごく後悔をしているとのこと。その後の畑は、土が少なくてすぐに石灰岩の岩盤に当たる所を、まずは表土を除け、削岩機のようなもので岩盤を砕き、岩ないし石状にし、除けておいた土を戻すという気の遠くなるような作業で、自ら開墾し仕立てたのです。

考え抜かれた仕立て

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とても低い仕立てになっているのは、地熱の影響でブドウがより凝縮するように、ブドウの枝が垂直方向により高く伸びることができるようにするため。ブドウ樹1本1本が3本のロウソクを置けるような燭台型になっているのは、それぞれの燭台の先に生るブドウを均質化する目的で、根からの距離をほぼ均等にするため。燭台部分が直線的になっているのは、強い風の多いカルソという地域で、折られないよう枝を針金の間に通しやすくするため。

当然のことながら一切の灌水を行わず、極稀に必要だと判断した場合にのみ牛糞をベースにした完熟堆肥を入れるが、飼料もカルソ産の一切農薬を使っていないものを与えられた、カルソで育てられた牛のものを使用。ありとあらゆる農薬を使わず、数年間はボルドー液さえも使わず、海草やミネラル、土など自然素材をベースにした薬剤のみの栽培にも挑戦。近年はこの薬剤をベースに、ボルドー液の使用は1-2回程度にとどめるようにしています。これはボルドー液の構成要素である銅が、皮に付着・残留するのを極限まで無くす(減らす)ためで、長期間の醸し醗酵を行うパオロならではの発想なのかもしれません。

ワインへのリスペクトが神殿になる

2009年には新しいセラーの建設に着手(2011年5月に完成)。壁はカルソの岩盤むき出しの状態で、セメントは天井にのみ使われ、そこに塗られた塗料も土をベースにした天然素材のもの。円が2つくっついたような形をしているのは、パオロが角(かど)のある構造を嫌ったため。大気もエネルギーもある程度均等に循環させるためには大切だと彼は言います。セラーから出て、電源を切ると、セラー内には完全に電流が流れない状態になり、これも電磁波の影響なくワインをゆっくり休ませてあげるためとのこと。ワインにここまでリスペクトが払われているセラーを僕は見たことがありません。このセラーの建設において驚くべきは、削岩機による穴掘り作業以外は基本1人でやったというのです!!このセラーはワインの寺、神殿のようなものだと彼は言います。

<パオロ ヴォドピーヴェッツ インタビュー>

【Full Ver.(1:16:32)】

【Short Ver.(03:15)】

<ワインラインナップ>

●Origine(オリージネ)
品種:ヴィトフスカ

”起源”、”原点”を意味するオリージネは、パオロが初ヴィンテージである1997年から採用してきた手法である、木桶での醸し醗酵を行なったワイン。カルソという地域でも、ヴォドピーヴェッツ家でも、長い間行われてきた醸造方法であり、地域にとっても、パオロにとっても原点と言える。

木製開放式醗酵槽で10~14日間ほど醸し醗酵させた後に圧搾、約3年間大樽で熟成。 1997〜2004年は『Vitovska』、2005〜2006年は『Vitovska Classica』として、2009年からは『Origine』の名前でリリースしている。ラベルの緑の線は、緑→木→木桶を指している。

●Vitovska T(ヴィトフスカ ティー)
品種:ヴィトフスカ

パオロが使っている樽は内側を一切焦がしていないもののため、いわゆる樽香が付くことはないが、それでも樽で熟成させることによって生まれる香りや風味があると言う。ヴィトフスカというブドウ品種の特性をフィーチャーし、よりピュアなヴィトフスカをという想いから、テラコッタという極めてニュートラルなマテリアルでのみ、醗酵から熟成までの全過程を行ったワイン。アンフォラで皮ごとの醸し醗酵と熟成、プレス後再びアンフォラに戻して熟成。TはテラコッタのTからきており、2011年からリリースしている。

2011年ヴィンテージは半年間の醸し醗酵&初期段階の熟成の後に圧搾、2年半の熟成。アンフォラでの熟成は、木樽よりも還元的な環境での熟成のため、タンニンは少し軽くても良いのかも?と考えたパオロ。2012年ヴィンテージは約半量を半年間皮ごと、残り半分を果帽が浮き上がり醗酵が始まったことが確認できた段階で圧搾し、モストを再度アンフォラに戻して醗酵熟成。2013年ヴィンテージは約1年の皮ごと醸し醗酵後に圧搾、熟成させている。

●Vitovska H(ヴィトフスカ アッカ)
品種:ヴィトフスカ

2015年に初めてモストのみで造ったワイン。アンフォラで醗酵、シュールリーの状態で翌年秋まで熟成。澱引きし、再びアンフォラへと戻して18か月熟成。イタリア(語)ではアルファベットのHは、 “無”を指し、果皮がない状態で醗酵させたのでH(アッカ)という名前に。

生まれ育ったコッルドゥロッツァ村で新しく入手した区画で、剪定もされず放置され半野生化したブドウを使用。他の区画のブドウ同様に除梗し、プレスしたブドウをアンフォラに入れていたところ、アンフォラの外にこぼれた一部の果皮が、数時間後には異様なまでに褐変していることに気が付いたパオロ。翌朝には圧搾し、モストだけを別のアンフォラに戻して醗酵。果皮がなかったためなかなか醗酵が進まず、終わったのは翌春で、そのまま澱と触れ合った状態で更に半年熟成させた。2016年秋に澱引きし、再びアンフォラへと戻して熟成させた後にボトリング。

●Vitovska(ヴィトフスカ)
品種:ヴィトフスカ

今現在主流として採用している醸造方法であり、生産量的にも最も多いヴォドピーヴェッツの”ノーマルキュベ”。地中に埋め込んだアンフォラで半年間の皮ごと醸し醗酵と熟成、圧搾した後大樽に移し約2年熟成。ラベルの小さなオレンジ色の線はテラコッタを表現しており、”アンフォラ”の記載がないのは、彼が求める醸造方法を実現するのに必要な熟成容器がアンフォラであっただけで、それをラベルに謳うのはいかがなものか?という彼なりの考えが反映されている。

2005~2009年までは屋外に埋めたアンフォラで醗酵、終了後も皮ごとの状態でふたをし、一冬を外で過ごさせ、翌春に圧搾していた。2010年はベト病蔓延で収量が激減したためこのワインのみの生産となり、初めて現セラーでアンフォラでの半年の醸し醗酵&初期熟成、圧搾後にまた再度アンフォラに戻して半年熟成という過程を行った。

●Solo(ソーロ)
品種:ヴィトフスカ

パオロの”グランクリュ”で造られたワイン。本来だったらブドウ栽培には向かないとされる、15~20cmと極めて薄い表土の直下にある、固い石灰岩の岩盤を自ら砕いて表土を戻して開墾した区画のヴィトフスカ単一でボトリング。単一畑という事でソーロ(唯一の)であり、初めてボトリングを行った2007年に弟ヴァルテルがワイナリーから抜け、パオロ一人になったという事でソーロ(ひとりの、孤立した、孤独な…)という意味も含まれている。

醸造方法はヴィトフスカと同じで、半年間アンフォラで醸し醗酵と熟成、大樽に移し約2年熟成。2004年ヴィンテージを初めて単一でボトリングし、2009年、2011~2016年と生産している。

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