【新入荷】2018年4月 その3(La Biancara、Testalonga、Monte Maletto)
ラ ビアンカーラからは、マシエリ&サッサイア&ガルガンゴ2016の現地最終在庫がそれぞれ3000本&1200本&900本届いております。
いきなりですが、サッサイアに関して2点ほど…。
■酸化防止剤無添加Ver.と添加Ver.:皆さんもご存じのように、サッサイアは年によって酸化防止剤を添加したものと添加していないもの両方を造る年と、全量無添加でボトリングする年があります。2015年が全て無添加でボトリングされていたこともあり、彼らからなんの連絡もないので2016年も全て無添加なのかなぁと思っていたのですが、(確か)3回目入荷分からは添加Ver.が…。何の前触れもなく添加Ver.に変わってしまいすみませんでした!アンジョリーノにも苦情メールを送っておきましたので、次回からはちゃんと連絡があるはずです!
■添加Ver.の還元について:さて、サッサイア2016酸化防止剤添加Ver.なのですが、ボトルによっては強い還元香があったり、粘性が高い状態になっていたりするものがあるようです。この還元と粘性、本来なら無添加Ver.にこそ起こるべき現象なのですが、2016ヴィンテージはなぜ添加Ver.に起こったのでしょうか?
添加&無添加Ver.の両方が生産される際ですが、全ての樽の上澄み部分だけをステンレスタンクへと移して、(極少量の)澱を軽く沈ませてからボトリングするのが無添加Ver.となり、そして澱に近い樽の下側部分を澱引きしつつステンレスタンクへと移し、若干量の酸化防止剤を添加し、1か月ほど落ち着かせてからボトリングするのが添加Ver.となります。
逆に、酵母が自分たちのやるべきことを比較的短期間で完遂し、その直後から冬眠(?)に入ってくれ、液体が樽の下部まで澄み切った状態になった際には、清澄を目的とした酸化防止剤添加を施す必要がなく、全量を無添加でボトリングすることができ…。
話は長くなりましたが、今回のケースでは、まだ酵母の動きが活発だったワインに加えた酸化防止剤の量が十分ではない、ないしその後待つ時間が十分ではなかったために、より多くの(=無添加Ver.以上の量の)酵母をボトルにまで持ち込むことになり、こういった現象が起きたのかと…。2007年の一部のマシエリは酸化防止剤を添加したはずなのに瓶内で2次醗酵が始まり微発泡となり、サッサイア07の添加Ver.もリリース当初は還元強かったりと似たようなことがあったっけ…。
こんなシナリオを予想していたわけではないのですが、今回に関してはアンジョリーノがオータの引き立て役になってくれそうです(笑)。まだ詳細は明かせませんが、この引き立て役という言葉が何を意味するかは、、、到着を楽しみに待っていてくださいね!
そしてラ ビアンカーラの白のトップキュベ、ピーコ2016も1800本入ってきています。こちらは、次回再入荷予定もあり、そのときにはクリュ物も出てきます!
ヴィナイオッティマーナ東京にも参加してくれた、リグーリアのテスタロンガからも新ヴィンテージのロッセーゼと絶品オイルが届いております!
ワインの総生産本数が5000本程度、という事もありまさに知る人ぞ知る的ワイナリーで、イタリアでも彼らのワインを見かけることはまずないと言って良いと思います。畑は小さなテラス状で、アルベレッロ仕立て、ものによっては樹齢100年超。全ての作業を手で行い、農薬としては硫黄だけを使用。ワイナリーは中世の街並みの残るドルチェアックアの町中にあり(外観からワイナリーであることは全く分かりません!)、そのセラーのコンパクトなことと言ったら…間違いなくヴィナイオータが取引する造り手の中でも最小規模で、500リットル程度のサイズの樽が7-8つと古い圧搾機とテーブルがあるだけ…。醸造方法もいたってシンプルで、醸造期間中は樽を縦にして醗酵槽として利用、そこに足で潰したブドウを入れ(除梗しません!)、約20日間の醗酵、圧搾後に横にした樽でワインを熟成させ、翌年8月に無濾過でボトリングし(その際にごく少量の酸化防止剤を添加)。
そして樽は再び縦に置かれて次の収穫を待つという…言うなれば、ちゃぶ台置いたらダイニングルーム、ちゃぶ台片づけて布団を敷いたら寝室…という日本の畳の部屋並みに機能性のあるセラーなのです。
ロッセーゼは決して押し出しの強いブドウではなく、若飲みすべきワインのような佇まいを持っているのですが、熟成のポテンシャルも秘めた凄い品種です。入荷本数も300本と少ないので、皆様のお手元に届く数も非常に少ないことが予想されますが、是非とも1-2本、セラーの彼方に追いやってみてください!
樹齢1000年を超えるオリーブ樹もあるという、タッジャスカ種で作られる絶品オイルは限定とはしませんが、3リットル缶で24缶のみの入荷となっておりますので瞬殺&必至です!
最後にご紹介するのは、新たに取引する事になった造り手です!
ジャンマルコ ヴィアーノという若者が創立したモンテ マレットというワイナリーになります。
ピエモンテ州のヴァッレ ダオスタとの州境にほど近いイヴレーアという街で生まれ育ったジャンマルコは、ロンドンのラムゼイを筆頭に数々の星付きのレストランでソムリエとして働いていました。その時からナチュラルワインに魅せられ、働いていたお店でも積極的にオンリストしていたそう。結婚と出産を機に故郷のイヴレーアに戻る決心をするのですが、何をするのかハッキリとは考えていませんでした。そんなある日、その当時働いていたヴァッレ ダオスタのレストランからイヴレーアに帰るために高速を走っていると、右側に見えた急峻な岩山に張り付くようにして佇むカレーマの畑に呼ばれているかのような気がしたそう(カレーマとイヴレーアは車で20分程度の距離)。その第六感に従う事にしたジャンマルコ、ソムリエとしての経験はあるけどブドウ栽培とワイン醸造の経験は皆無だったので、イヴレーアに戻ってから地元のワイナリーで働くことに。
それと同時に、知り合いからカレーマのゾーンで栽培放棄されかかっている区画があると聞けば、持ち主と借りる交渉も始めます。雇われとしての仕事をこなしながら、週末は自分が借りている畑で作業をします。使う農薬はボルドー液のみで、他の農薬は一切使わず、無施肥を実践。カレーマは、小さな段々畑で構成されているため当然のことながらトラクターなどの機械は入れないので、除草も刈り払い機で行います。今現在はカレーマに7区画合わせて0.5ha、そしてエルバルーチェ ディ カルーソのゾーンに0.38haを手掛けています。そんなジャンマルコのファースト ヴィンテージが入荷です!届いたワインは2種類で
■エルバルーチェ ディ カルーソ2016:エルバルーチェ100%の白。プレスしたブドウを低温下で一晩マセレーション、圧搾後樽で醗酵、熟成。
■バッティト ディ マレット(2015):ネッビオーロ95%、ネイレ&バルベーラ5%。約7割のブドウを除梗、残りを徐梗せずに約40日間のマセレーション&醗酵。圧搾後ステンレスタンクで半年、2年目のバリックで18ヶ月熟成。
どちらのワインも初醸造ということもあり、恐怖心に負けて培養酵母を使ってしまったのですが、2017年からは野生酵母でナチュラルな醗酵をさせているそう!今回入荷分はテーブルワインのカテゴリーでリリースしたためラベルにヴィンテージの表記がありませんが、2015年となります。というのも、、ネッビオーロがメインの赤ワインであるこのワイン、間違いなくD.O.C.カレーマのゾーンで収穫したブドウが使われているのですが、醸造した場所がカレーマの外であったためにカレーマと名乗れなかったそうです。2016年ヴィンテージから醸造場所もカレーマ内になったため、D.O.C.カレーマを取得予定とのことです。
このジャンマルコも多くの造り手からの話と、YouTubeで垂れ流し(笑)されている、ほろ酔いのオータが語るナチュラルワイン論に大いに賛同して連絡をくれた1人で、ボトリングする段になったら連絡するから、一度ワインを飲んで意見を聞かせてくれない?と以前からお願いされていたので、去年春に初訪問をしました。
えげつない畑を見せてもらい、移動し試飲が始まるわけですが、僕の意見を待つ間の緊張の面持ちのジャンマルコ、「いや、(普通に)美味しいよ。」という僕の意見に半ば拍子抜け、逆に彼の方から「樽香がもっとキツくなかったら良かったようにも思うし、(醸造の場面で)ああしてこういう風にしていたら、もっとリッチで厚みのあるワインができたんじゃないかと思うんだ。そんな意見がヒサトにもあるのなら聞かせてもらいたいんだけど。」と言ってしまったが最後、「さっきさ、ちゃんと種が熟すタイミングで収穫するって言ってたよね?じゃあカレーマでやるのやめたらいいじゃん。お前の言うこと聞いてたら、南の方がいい気がしてくるよ。ジャンマルコが理想とする美味に近い形かどうかよりも、その土地の、そのブドウの、その年の、そしてその時その瞬間そのヴィンテージの造り手の個性が表現されているかどうかの方が、ワインにとっては遥かに大切だと思うのだけど。畑でいい仕事して、セラーで極端な間違えさえ犯さなければ、一般的なレベルの美味なんて付いて来なきゃおかしいんだよ。ナチュラルワインの美味は狙うものじゃなくて、自然に表出するものなんじゃないの?」と僕に一刀両断されるジャンマルコ(笑)。
夕食を食べながら会話は進み、「もう一つ聞きたいことがあるんだけど…。俺のワイン、ヒサト的に輸入する事に興味持ってもらえたのかな?」と恐る恐る聞いてくるので、「モチロン!」と即答しました。
その次の彼からの質問は、僕が日本でもよく受ける「どのようにして造り手と取引するかを決めるのか?」というものでした。
パターンは当然のことながらいくつかありまして、
1.いち飲み手として、もともと大ファンだった。(カッペッラーノ、デ バルトリなど)
2.初めて飲んだその日に恋に落ちた。(マッサ ヴェッキア、パーネヴィーノなど)
3.何年か飲んでいくうちに徐々に理解が深まり、好きになっていった…。このケースは、造り手の進化とオータが自身の無知、不見識、見る目のなさに時間をかけて気付いていくという状況の両者ないし片方があった時に起こると考えています。(ヴィッラベッリーニ、カンティーナ ジャルディーノなど)
4.今は今で全く問題なく美味しいのだけど、進化の伸びしろが沢山あるように感じられた時、言い換えるのならその造り手の素晴らしい未来が築き上げられる過程を間近で見続けていたいと思えた時…。(ダニエーレ ポルティナーリ、イル カヴァッリーノ、イル モラリッザトーレや今回のジャンマルコなど…)
大好きなスポーツ選手やミュージシャンの事を追っていくのも、子供の進化成長を見守ることも、僕たちの大いなる悦びを与えてくれる事と通じるかもしれませんね。
再度書きますが、もうすでに十分に素敵なワインですので是非ともお試しくださいね!そして一緒に彼の進化の過程を見届けましょう!!
文:太田久人
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