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2023-05-19

ヴィナイオッティマーナ2022【造り手セミナー】イル モラリッザトーレ


①セミナー動画 (質問コーナー|03:25~)

ヴィナイオッティマーナ2022 P2 DAY2に行われたセミナーの様子です。
イルモラリッザトーレは、獣医師の(1978年生)エンリコ・フリソーネと、薬剤師の(1977年生)アンドレア ダッラ グラーナの仲良しコンビが営むワイナリーです。今回来日したのは、エンリコとエンリコのお父さんのマウリーツィオさんになります。初来日のマウリーツィオさんはこの日はお一人で東京観光に行かれておりました。獣医と薬剤師の彼らは、身体そのものが健全であることの重要性、身体が健康であることに薬に頼る必要はないと職業柄知っているので、ブドウの木の健康を追及していく上でも薬に頼らず、葡萄そのものの力を引き出す農業とワイン造りを行っております。

②造り手紹介 (0:00~)

イル モラリッザトーレの造り手紹介、詳しくはこちらから。

③造り手への質問と回答

Q1. エンリコさんは獣医とのことですが、獣医として思いれのある特別な動物はいますか?(3:40~)

A1. 馬の獣医をしています。特に競技用の馬を専門としています。ですので馬にはシンパシーや愛情を感じています。またおじいさんは、クラシックな農園を営んでいたのですが、そこではありとあらゆる動物を飼っていました。卵や鶏肉用の鶏やうさぎをはじめ、豚、馬、ガチョウ、猫も犬もたくさんいました。動物が好きになったのはそういった幼いころからの環境も一因だと思います。現在は、家で2匹の犬を飼っています。プライベートではその犬が特別な動物といえると思います。

Q2. ワイン造りにおいて理系の人と文系の人で作り方は変わるのでしょうか?(7:09~)

A2. (イタリアの高校は、日本よりもより専門性が高いそうで)化学を勉強する学校にいっていました。そこで学んだ有機化学や微生物学などの知識があったことは、ワイン造りにおいてとても有効だったと思います。ケミカルなものがどういう影響を及ぼすのかをある程度習ってきたので、そういうものはくれぐれも使ってはいけないということを頭の中でスタートラインに設定してワイン造りを始められたのは、大きかったと思います。葡萄の発酵中やワインのオフフレーバー的な香りについて、何由来なのか予測がついたり対処が出来ることも役に立っていると思います。

Q3. ラ・ビアンカーラのアンジョリーノのところにいらっしゃったのですか?(15:25~)

A3.1999年、大学1年生(19歳)のときアンドレアとアパートを借りて住んでいたとき近所のレストランでビアンカーラのPICOを飲んで大きな衝撃を受けたのがナチュラルワインとの出会いでした。こんな近所にこんな凄い造り手がいるなんてとすぐに会いに行って仲良くなり、セラーや畑での仕事を見せてもらうようになりました。それ以来、収穫などで人手が足りないときは手伝いをしたり、アンジョリーノの家族とともに食事をしたりなどするようになり、もうすでに20年ぐらいの付き合いになります。アンジョリーノのワインはまさに火花のような存在でした。それに火をつけられて今現在に至っています。

Q4. アンジョリーノから学んだことは、今のワインにどういかされていますか?(19:20~)

A4.アンジョリーノのワインが最初の出発点なのですが、そこからいろんな造り手を尋ねに行ったり、いろんなワインを飲む旅が始まりました。初めてPICOを飲んだときに感じたエモーションはどこから来るのかを知りに行く旅とも言えます。面白いのは自分たちの好奇心とワインを飲んだときに感じた感動が、いろいろな造り手のものの見方や考え方と実際のテクニカルな部分が折り重なって自分の心を動かすワインが出来ているんだということです。葡萄の中にはテリトリーやその年の天候の情報が書き込まれていて、それをできるだけ脚色することなく液体にしたものの中に、必死にそういうものを表出させようとする造り手の貪欲というか苦悩、トライアンドエラーが見え隠れするところに感動しました。そういうものをたくさん知れば知るほど思ったことは、自分たちはどういう道を辿っていけばよいのか、自分たちの出身、出自にプライドを持ちながら、ビアンカーラがガンベッラーラという土地の本来あるべき伝統を守ることとか、その土地の美しさを液体の中に表現しているように、自分達がブレガンツェというワインの生産地の近くに生まれたものとして、自分達がやるべきことこと、とるべき道は何なのかを考える結論にたどり着くのにアンジョリーノだけでなくすべての造り手が自分たちにとって大切な存在だったといえます。結局、その道の向こう側には運命とか宿命とか、天命みたいなものがあると思います。出自、ルーツ、伝統を守る、残すことが自分たちがやるべきことなのではないかと考えて、ゆっくりですが絶滅の危機に瀕しているヴィスパイオーラ、グロッペッロの土着品種を大切にする道を歩むのも彼らに気づかされたことです。

Q5. 意見の違いなどから、お二人がぶつかることは無いのでしょうか? (29:18~)

A5. 本当にいつも思うのは、波長が合っているなと感じています。楽しいことはお互い楽しいと感じられるし、好きなものは似てるし、無理せず波長があっていると思います。なのでぶつかることはないです。付き合いは20年以上経ちますがまあまあ激しい言い合いをしたのは、2,3回です。それも最終的に考えてみれば大したことじゃないよって感じになります。理想のパートナーシップを結べているのではないかと思います。それぐらいぶつかることは少ないです。

Q6 オータとの出会いの中で印象的な出来事はありますか?(31:51~)

A6.自分たちの職業柄、化学屋ということもありワインを飲んでいるときに化学的に分析してしまう傾向があるのですが、取引から何年か経ったあるとき、一緒にワインを飲んでいる際にテクニカルも大事だけど、身体の中にどう入っていくのか、身体の中に入っていった液体がどういうリアクションをひき起こすのか、液体の中にある種の熱を感じるかどうか、ヒサトがそういうことにしか注意を向けていないことにとてもびっくりしました。テクニカルのことを物凄く後回しにして、でも見ていないわけでなく、そんなのどうでもいいんだよって言えてしまうテイスターがいることに。そこには西洋的な文化と東洋的な文化の差なのかと感じてしまったぐらいでした。最初は何言ってるんだろう?って思ったのですが、よくよく考えてみると人の心を動かすのはテクニカルなことではなく、何か別なものだと気づかされ、以来、自分たちもそういうアプローチも取り入れないといけないと思うようになったのが印象的な出来事です。

④まとめ

19歳のときに飲んだワインがエンリコの人生を変えたわけですが、ワインというものは人の人生を変える液体だと改めて感じました。数々の造り手の声とワインを知り、ときには太田のような考えの飲み手にも出会い、土着品種の中でもかなり珍しい葡萄で地元の魅力を引き出す努力を惜しまない彼らの今後が楽しみだなと感じた日でした。(担当:五月女剛)

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