【新入荷】2020年6月その3(Montesecondo、Monastero di Vitorchiano、A Maccia、Il Censo、Camillo Donati)
ワインの起源(その2)
“安全な水分としてのワイン”
リンゴやブドウのような果肉部分を食べるものであれ、アーモンドやクルミのように種子の仁を食べるものであれ、料理を覚えたり農耕を始めたりする遥か昔から、果物は、我々の命を支えた重要な食糧でした。そして果物が大切な糧であったことは、なにもヒトだけに限った話ではなく、それらを食すあらゆる動物にとっても一緒だったわけで、山でたわわに生る甘い芳香を放つ果物を見つけたのなら、他の動物に先を越される前に、食べられるだけ食べていたのではとオータは推測しています。お腹いっぱい食べたのに、果物がまだたくさん残っている…そういった場合、次の日に同じ樹のところに戻ってきたところで残っている保証は全くないわけですから、ヒトは食べきれなかったものを、その場に居合わせなかった家族や仲間のためであったり、後日食べる分として、持ち帰れるだけ持ち帰ったのではないでしょうか。
ですが、糖質、タンパク質、脂質そして各種ビタミンなど、生きていくために必要な栄養素をもたらす食糧という位置づけ(もちろん、各種栄養素など古代人ないし原始人の知る由のない事ではあるのですが…)でだけ果物を摂取していたのなら、そのまま食べるだけで、わざわざ果実を潰したりなどしなかったはず。となるとやはり、潰すことで出てくる液体部分に興味があったという事に…。
水分は、ほぼすべての動物にとって必要不可欠なものなわけですが、その当時主に飲用に使用されていたであろう川や湖沼の水が不純物や微生物などを含み、身体的にも負荷のかかるものであることに、ヒトは体感的に気が付いたのではないでしょうか。もちろん、我々現代人よりは遥かに頑強で野性的だったとは思うのですが、毒性のある重金属だったり、様々な病原菌などの溶け込んだ水は、その時代のヒトにとっても十分に危険なものだったでしょう。加えて、飲用に耐える水も溜め置いておくことで“腐る”ことも体験的に学習し、それと同時に果実に含まれる水分が(果)樹によって浄化&無菌化されたものだという事にも身体が気付いてしまった…。
そういったわけで、安全な水分な上に栄養まで摂れちゃうステキな液体を確保すべく、山へ果物を大量に採りに行くことに。果実を潰し、ジュースを容器で保存していたところ、とある日、液体からブクブクと泡が出ているではありませんか(=醗酵がスタート)!恐る恐る舐めてみたところ、ちょっとシュワシュワしていて、甘く、おいしい(=飲める=腐っていない)。毎日定点観測的に飲んでいく中で、日に日に甘さは減っていくような気がするが、相変わらず腐った雰囲気がないどころか、なんだかいい気分になる…。そしてそこからまた何日か経ったある朝、容器を見てみると泡が立っていない…。飲んでみると、甘さは皆無、そして数日前よりも気持ち良くなるのがちょっと早い気が…。
オータは、こんな感じでワインが生まれたのだと考えています。
水(分)として比較的長い期間健全さをとどめる上に、気持ち良くもなれる魅惑の液体を造るのが毎年の恒例行事になり、それを続けていくうちに、果汁を搾り取った後にそこらへんに捨てていた種から芽が出て、さらに何年かすると果実が生り始める…。実際、山に採りに行くのも大変だし、他の動物に食べられてしまって全く収穫できないこともあったりするし、だったら住まいの近くで育てちゃおうか?ブドウ栽培もこんな感じで始まったのではないでしょうか。
そもそも、なぜブドウだったのでしょう? 答えは簡単。果実が柔らかく、人力でも容易に果汁を絞ることができたから。リンゴで造るシードルは、圧搾機が開発されてから、普及していったのかと。
(その3へ続く)
いよいよだだ商店がオープンしたという事もあり、オータの周りはまさにカオスな感じですが、ワインも節操がないくらいジャンジャン到着しております!というわけで、新入荷案内です!!
キャンティ クラッシコの造り手、モンテセコンドと取引を始めることにしまして、その第1便が到着です!!モンテセコンドのワインが初めて日本に入ってきたのは、2006年だったと思うのですが、実は僕が橋渡し役をしておりました。当時クルティエ的な仕事をしていた、つくばの名(迷?)物雑貨屋さん、ろばの家のママろばことフクエ ヨーコがその年のサロンに来ることができなかったため、彼女のポートフォーリオ充実のためにもせっせと試飲していたオータ、(彼女に)紹介するのに最適じゃなかろうかと思った造り手が、今回のモンテセコンドと現在弊社取り扱いのサンタ マリーアでした。どちらの造り手のワインも個人的にとても感銘を受けたのですが、当時のヴィナイオータは、キャンティだとパーチナとレ ボンチエ、ブルネッロですとイル コッレとポッジョ ディ ソット(!!!)と取引をしており、3軒目の造り手をラインナップに加えることが難しく、弊社で取り扱うことにならなかったという経緯があります。
そんなモンテセコンド、前インポーターとすったもんだあったよう(笑)で、僕の紹介から日本との取引が始まったということもあるので、弊社が責任を取ることに(笑)。
キャンティ クラッシコの生産地域の中でも、モンテセコンドのある北西部は、土地も痩せていて、低アルコールのワインを産するゾーン。当主シルヴィオ メッサーナは元ミュージシャン。シャイで、やや神経質気味なところがあるのですが、彼自身ボリューミーなものではなく、酸という神経がビシッと通ったワインが好み。
自分が理想とするワインを実現するのに最適なテロワールを持つ場所に畑があるのか、はたまたそんなテロワールを持つ畑に携わっているうちに自身が志向するものがテロワールと同化していくのか…オータ的には、プーリアのクリスティアーノ グッタローロと話した時に感じた、同質のものをシルヴィオにも見出しています。
おおらかな味わいのパーチナ、クールだけど女性的な優しさも備えたレ ボンチエに対して、細く鋭い味わいのモンテセコンド…といったところでしょうか。
ワイナリーに隣接する、標高が低く粘土質土壌の比較的温暖な区画と、住まいのある標高500mの石灰岩質土壌の区画に畑を持ち、それらをブレンドすることで、前者がワインに果実味やボディを、後者が酸やミネラルを付与しています。
今回入荷したのは6種類、詳細は下記の通りです。
●ガズィ2019:ダイレクトプレスしたサンジョヴェーゼで造られるロゼ フリッザンテ。モストの糖分と野生酵母で瓶内2次醗酵を促し、澱引きをせずにリリースされるワイン。
●ティン トレッビアーノ2018:アンフォラで半年間皮ごと醗酵&熟成を行ったワイン。
●モンテセコンド2018:サンジョヴェーゼ100%、ステンレスタンクで醗酵&熟成。
●キャンティ クラッシコ2017:サンジョヴェーゼ主体、カナイオーロとコロリーノを補助品種として使用。全体の3割ほどを、除梗せずに全房のままセメント製の醗酵槽へ。圧搾後、木樽で熟成。
●イル ロスポ2018:カベルネ ソーヴィニョン100%。除梗後、一部のブドウは即圧搾し、モストだけの状態にして、残りのブドウの入っているコンクリート製の醗酵槽へ。マセレーションも4~6と短期間にとどめ、過度な抽出を避ける。圧搾後に再びコンクリートタンクへと移され、そこで更に1年熟成させる。
●ティン サンジョヴェーゼ2017:アンフォラで6~8か月の皮ごとの醗酵&熟成を施したワイン。圧搾後すぐにボトリングされるが、1年以上ボトルで寝かせてからリリースされる。
3者3様のキャンティ(うち2つは“元”キャンティ…)を是非とも堪能してみてください!
欠品しておりました、ラツィオ州のヴィトルキアーノ修道院で造られるワイン、コエノビウム2018が再入荷、そして2019年もののオリーヴオイルも届いています。コエノビウムは、4,800本と大量入荷ではあるのですが、前回の売れ行きを鑑みると、もって数か月といったところでしょうか…。
2019年は、イタリア全土でオリーヴが不作でした!ですので、2018年産のオイルをよろしくお願いします!と、今回のオイル以外の宣伝をしてみたり…(笑)。
オリーヴオイルと聞いて、オータ的にすぐ思い浮かぶ品種は、タッジャスカ!タッジャスカといえば…はい、ア マッチャからもオイル&ワインが届いています…。ア マッチャを紹介してくれているのがパルマの鬼グルメ、オッターヴィオ。彼のところからの引き取りが、いつも間が悪い感じになってしまいまして、オイルの賞味期限までわずかな時間しか残されておらず…。今回は、2018/2019年物と2019/2020年物(リグーリアのオイルは収穫時期の関係でこのような表記となります)が同時に入荷しておりまして、2018/2019年物の賞味期限が今年の10月末という事もあり、2018/2019年物は最初から赤字上等!な価格設定とすることにしました。皆さんの清き1本をヴィナイオータとア マッチャに!!!!
おっと、ワインの紹介を忘れるところでした(笑)。新しいワインが2種類、ヴェルメンティーノ2017と陰干ししたピガートで造るパッシート、ウ パッシウ2017(ラベル上はヴィンテージ、ロットの表記ともありません!)が届いております!どちらも酷暑の2017年ヴィンテージという事もあり、リグーリアのワインらしからぬムンムンした雰囲気があります。ヴェルメンティーノは、凄い変な表現になりますが、日本酒っぽい戻り香があります!ピガート、ロッセーゼ、オルメアスコ共々よろしくお願いします!
シチリアのイル チェンソからは、プラルアール2016が2,700本再入荷しました!こちらも数か月で終わってしまう事が予想されますので、お気を付けくださいね!不安定な立ち上がりだったこともあり苦戦を強いられているペッリコーネで造る赤、ニューロ2013も是非いいいいい。
カミッロ ドナーティのマルヴァジーア フリッザンテ ドルチェ2017とバルベーラ フリッザンテ2014が終売しましたので、それぞれ2018年と2015年をリリースします!
マルヴァジーア フリッザンテ ドルチェ2018ですが、瓶内2次醗酵が上手く行きすぎたのか、カミッロのワインで体験したことがないくらいのガス圧があります!醗酵が進み過ぎた分、甘味も減り(当然のことながら、それでもちゃんと甘いです!)、恐ろしい飲み心地を備えたワインとなっています。これからの季節、食前酒として飲むのもステキかもしれません。くれぐれもよく冷やしてくださいね!
逆にバルベーラに関しては、ほぼ全く炭酸はございません(笑)。天候に恵まれた年という事もあり、アルコール度数も14.5%、なおかつ少々の残糖(発泡しなかったので…)があり…。リッチで、滑らか、本当に美味しいです!目をつぶって飲んだら、カーゼコリーニのバルラって思っちゃうかも??
ランブルスコ2016&2017、オヴィーディオ2015、マルヴァジーア フリッザンテ2018、ボナルダフリッザンテ ドルチェに関しては、卒倒しそうな在庫本数となっております。おかげで弊社棚卸金額も順調にうなぎ上り(涙)。どうか在庫減らしにご協力を!
文:太田久人
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