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2017-03-17

【新入荷】2017年3月 その3

先日京都は丹後地方に飯尾醸造さんというお酢の造り手を訪ねに行ってきました。お酢自体のクオリティもさることながら、会社(今気がついたのですが、会社って漢字を逆から書くと社会…ふ、深い…)として本当に素晴らしいお仕事をされているなぁという印象を持ちました。

まがい物を一切使わない伝統的な製法で米酢造りを行い、そのお酢の原料となる日本酒も自家醸造、そしてそのお酒の仕込みに使用するお米の一部は昔ながらの棚田で手植え、手刈り、天日干しで自社栽培(無農薬!)、田植えと稲刈りには飯尾醸造のファン(!)が援農に駆けつけ、紅イモに含まれる成分に高い薬効があると聞けば積極的に商品化したり、お酢をベースにした各種商品開発も精力的に行い、“2025年に丹後を日本のサンセバスチャンにする”という目標を掲げ7月には古民家&蔵を改築してイタリア料理店と鮨屋を開業予定…。言い換えるのなら、地域の伝統文化(ミクロ)、日本の米酢文化(マクロ)、革新、新たな文化の創出、昔ながらの造り、そしてその造りの優位性の科学的裏付け、景観保全、持続可能な農業、消費者との交流交歓、食の安全、そして未来…それらに対して意味深い仕事をされている、ということになると思います。

こう書くと、オータがそのえげつないスペックに対して賛辞を送っているように思われるかもしれませんが、僕が感心を超えて感動さえしてしまったのはどちらかと言うと、その徹頭徹尾さや伝統と革新の融合を具現化させるに至った飯尾家の誇り、確信、自信(読んで字のごとく自分を信じるという意味で)、覚悟、不退転の決意、たっくさんの想い、考え、挑戦(その陰には多かれ少なかれ失敗もあったのだと思います…)等々に対してだったりします。うちの造り手たちのやっている事と一緒じゃないですか!!!!!!そしてヴィナイオータ自身もかくありたい!

それでは新入荷案内行きます!

先日最終案内をさせていただいたパオロ ヴォドピーヴェッツのヴィトフスカ2010ですが、結局1週間ほどの間に1000本以上のリクエストをいただきました…皆さんありがとうございます!!!再三になりますが、何本かだけでもいいので5-10年くらい寝かせてみてくださいね。ぜーったいに驚いていただける…はず!

2010もめでたく終売した事ですし…、2011をリリースします!!2015年11月にパオロが来日し日本縦断ツアーをした際、各地のイベント&試飲会でお試しいただいていたのですが、ようやく正式にリリースできることになりました。その後もお客様がつくば本社にいらっしゃるたびに抜栓し定点観測を続けておりましたが、1年前よりは硬さも失せ、とても表情豊かになってきたと思います(待った甲斐ありまくり!)。そして本ヴィンテージから4番目のワインが!それぞれのワインに関してかいつまんで説明しますと、

オリージネ:オリージネは”源”、”起源”を意味する言葉。今でこそ、白ブドウ品種で皮ごとの醸し醗酵というと、なにか特別視される傾向にありますが、パオロに言わせればカルソという地域でも、ヴォドピーヴェッツ家でも、普通に採用してきた醸造方法。地域にとっても、パオロにとっても原点とも言える木桶で醸し醗酵を行なったワインを09ヴィンテージからオリージネという名前でリリースすることに。アルコール醗酵の期間中(10-14日程度)のみ醸し、圧搾したワインを大樽で約3年寝かせた後にボトリング。表&裏ラベルどちらにも緑の線が入っているのですが、緑→木→木桶を指しています。3800本生産。

ヴィトフスカ:オリージネが黒のラベルに緑の線があるのに対して、他の3ワインは白いラベルにオレンジの線が入っています。オレンジがテラコッタの色を暗喩し、地中に埋め込んだテラコッタの壺(アンフォラ)で皮ごとの醗酵&熟成を行なったワインになります。ヴォドピーヴェッツというワイナリーが今現在主流として採用している醸造方法であり、生産量的にも最も多いこのワインをヴォドピーヴェッツの”ノーマルキュベ”であると位置づけ、シンプルにヴィトフスカという名前にしています。このヴィンテージは半年間皮ごとアンフォラで醗酵熟成、圧搾後に再びアンフォラへと戻して半年間追熟させた後に2年間大樽で熟成という工程を経てボトリングされました。7600本生産。

ソーロ:世界的にも有数な石灰岩台地として知られているカルソは、土が少なく農耕を行なう上では非常に厳しい土地と言えると思います。ですからヒトは、比較的土が多い土地を選ぶなり、客土を行なうなりして農業を営んできたわけですが、このソーロというワインに使われているブドウを産する区画は、パオロが敢えて表土の少ない場所を開墾しブドウを植えたところになります。他の区画のワインとは明らかに違う質のミネラルを内包したワインです。シングルヴィンヤードのワインということで、”単独の”を意味するソーロという名前が付いたワイン。他のパオロのワインも偉大と呼んでも差し支えがないレベルだと思うのですが、このワインはそれこそグランヴァンと呼ぶべきワインなのかと。醸造方法的にはヴィトフスカと全く一緒になります。3800本生産。

ヴィトフスカ T:表&裏ラベルどちらにもオレンジで小さくTと書かれています。「ヒサトの子供達の名前を冠したワインは色々あるけれど、ヒサトをまさに献身的に支えているタエコ(オータ妻)のワインがないじゃないか!!!!このワインのTの事を、テラコッタのTだと思っているかもしれないけど、実はタエコのTなんだ。俺は、ヒサトが俺の事を強く後押ししてくれるからこそこうしてワインを造っていられると思ってるわけだけど、ヒサトが彼の仕事に全てを捧げられているのはタエコの存在があってのものだという事をちゃんと理解しているつもりだよ。だからこのTはタエコのT、いやいや本当にテラコッタのTじゃないんだってば!」と4人(3人の実子+子供並みに手のかかる夫)の育児に追われ、精神的に弱っているうちの奥さんに声を掛けるパオロ(笑)。半年間の皮ごとの醸し醗酵までは他の2ワインと一緒なのですが、圧搾後2年半もの間ずっとアンフォラで熟成させたのがこのTというワインになります。彼が使っている樽は内側を一切焦がしていないものなので、いわゆる樽香が付くことはありえないわけですが、パオロはそれでも樽で熟成させたことによって生まれる香りや風味があると言います。よりピュアなヴィトフスカをという想いから、テラコッタという極めてニュートラルなマテリアルでのみ醗酵熟成させたのがこのTというワインになります。2200本生産。

オリージネが伝統、パオロの原点そして過去を、ヴィトフスカがパオロの現在(新しい文化とも言い換えられるかもしれません)、Tがヴィトフスカという品種、そしてソーロがカルソにはなかったであろう(グラン)クリュという概念という、それぞれのワインが明確なテーマを持っているという…深すぎるし重すぎるぞパオロ…。YouTubeで閲覧できる、僕たちがパオロにしたインタビューの中でも触れているかもしれませんが、彼自身が担うべき歴史的な役割を、パオロは「超高層ビルの基礎と一階部分の建設に着手すること」と例えていました。

カルソが偉大なワインを生み出す土地であるということ、そしてヴィトフスカこそカルソを体現するためには必要不可欠なブドウ品種であるということを世界的に認知認識してもらうためには、今後100年以上かけて証明していく必要があり、そのために足掛かりを自分がつくることができたのならばそれだけで十分で、後世にヴォドピーヴェッツという名前さえ残る必要もないと彼は言います。見据えているものが常人からすると遠過ぎる気もしますが、ヒト1人の人生では辿り着けないほどの地点に目標を定めているからこそ、進み続けるのでしょうし、迷わないしブレないのかもしれません。自分がスターのように扱われることを極端に嫌うパオロですが、残念ながらそのように扱わざるを得ない気がしちゃうのは僕だけではないはず…。

パオロが2011ヴィンテージのオファーをしてきたのは確か2015年春頃で、その当時ヴィナイオータ的には現地在庫一掃したオリージネ09を絶賛販売中で、2010を売り出してさえもいませんでした。その全く売っていない2010も最低でも4000本は買うとパオロには約束をしていましたし、最終的には5000本くらいがヴィナイオータの担当になるんだろうなぁと予想もしていました。そんな感じで眼前には超えなければいけない大きな山(2010)があり、まだ全く登り始めてさえいない時分に2011のワインを4種類を合計すると約10000本にもなる本数を予約してしまう僕って…。生産本数の少ないソーロとTに関しては、生産量の6-7割くらいを押さえてしまいました!今回がそれぞれのキュベが600本ずつ入荷しまして、定点観測用に仕入れた分と合わせてそれぞれ720本ほどを販売します。

参考までにですが、ワインの開き加減を算数的に表現するなら、

オリージネ>ヴィトフスカ>ヴィトフスカT≧ソーロ

という感じになると思われます。

煽るつもりなど毛頭ありませんが、瞬殺必至です。ですが、くれぐれもTとソーロの固め打ち(笑)だけはお控えくださいませ。パオロの想いや世界観を垣間見るためには4種類全てを扱われることをお勧めいたします。(※弊社在庫は完売しました。ありがとうございます。2017/3/17)

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