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2015-01-09

造り手紹介 デ バルトリ その1(2013.1筆+2015.1加筆)

なんと造り手の来日まで1か月を切ってしまいました!!!すべて書き終えられるのか、ちょっと心配になってきました…。

トップバッターは、強烈なので行きたい!などと考えつつ、過去の資料やブログ記事などを見ていたのですが、ちょうど2年前に書いた、渾身の文章をブログにアップしていないことに気が付きました!!!!(弊社メルマガを登録している、プロの方だけが読めています)想いがあまりにも強すぎて、書いては消し、書いては消しを繰り返し、文章をまとめるのに結局2‐3週間はかかったんじゃないでしょうか。当時、入社したばかりのスタッフが、「社長、文章まだっすかね?」と、急かす感じではなく、楽しみにしてるんです的なニュアンスで言ったにも関わらず、僕の逆鱗に触れてしまったという曰く付きでもあります(笑)。

とりあえず、その1として、その文章をそのまま掲載します!!長いですよぉ。

マルコ デ バルトリは言った。

「流れに逆らい、自分に賭け、歪められた醸造業界の決まりごとに挑戦し、私の住むこの地域の持つ伝統の価値を信じ、それを自分に与えられた義務だと考え、経済的後退を顧みず、1980年に私はマルサーラという地域の典型である、“Stravecchio(ストラヴェッキオ、ここでは、長期間熟成させたワインの意)”を造るという冒険を企てた。ここにヴェッキオ サンペーリは生まれた。」

ヴェッキオ サンペーリは、フェニキア人がマルサーラにもたらしたと言われている土着品種、グリッロを使用した、従来のマルサーラの製造過程で行われているアルコール&モストの添加を行わずに、マルサーラ同様にソレラ方式で酸化的熟成を促した極辛口のワイン。

ワイン法などによって縛られた既成概念に疑問を持ち、それを壊すことで生まれた彼のワインは、マルサーラにおいては唯一アイデンティティーを確立していると言える。
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マルコ デ バルトリ

想い以外何も伴っていなかった未熟な過去の自分への、そして日本のワイン市場が以前よりも多様性を許容、享受できる環境にまで成熟したことを証明するための挑戦とも言える造り手との取引を15年ぶりに再開させます。その名はデ バルトリ!!!!!大好き過ぎて仕方のない、彼らのヴェッキオ サンペーリ(以下VS)&マルサーラがヴィナイオータのラインナップに復活です!(感涙)

ラディコンを筆頭に、「これ酸化しているんじゃないの?」と言われることの多い弊社のワイン達ですが、彼らのVSとマルサーラがそれを聞いたら、「そんなの甘い甘い(酸化だ)!俺たちこそ正真正銘の酸化ワインだぁ!!そして酸化の何が悪い?」と吼えてくれるのではないでしょうか(笑)。

実際、酸化を必要以上(←ここ大事です)に悪ととらえるのは、老いを全否定するのと一緒ですよね?生ある限り、遅かれ早かれ誰にでも訪れるものですし、人にとってもワインにとっても大事なのは、見た目ではなく中身の成熟具合なのではないでしょうか?もちろん美魔女もそれはそれで凄いと思いますけど(笑)。

恥を忍んで告白しますが、15年前に購入した7種類のデ バルトリのワイン、それぞれ60本を売り切るのに5年もの歳月がかかったんです…唯一無二としか表現のしようのない圧倒的な個性を持つワインで、造り手としての知名度も決して低くないにもかかわらず…。これはヴィナイオータ史上最大のトラウマとも言え、その傷自体はとうに癒え、2006年くらいから再開の意思は彼らに伝えてはいたのですが、時間ばかりが無為に過ぎ、2010年にはマルコもこの世を去ってしまいました…。現在は彼の3人の子供(皆美男美女!)が、マルコの遺志を継ぎ、それぞれの持ち場をこなしワイナリーを運営しています。
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現当主のレナート

話は再び一瞬飛びます。レ ボンチエのジョヴァンナ モルガンティから、「あんたのとこのラインナップ、私自身も含め、売るのが大変な造り手がそこまで揃っていると、もはや“難しい”じゃなくて“売るのが不可能”っていうほうが正しいんじゃない?」という有難いお言葉を頂戴しているヴィナイオータ(笑)なのですが、そんな弊社をして、ワインを伝え売るという世界で最難関と位置付けているのが、デザートワインを筆頭とする食後酒(?)、という事になると思います。

ピエモンテ州のエツィオ チェッルーティなどは、デザートワイン1つしか造っていないという状況も相まって、彼のワインが持つ強い説得力をもってしても、彼の生産量(そしてその結果としての輸入量)に見合った認知が未だ得られないでいます。勿論弊社の努力不足が一番の要因なわけで、それを強く自覚しているからこそ当面は新規取り扱いを増やさず、まず現状の造り手のワインをちゃんと売れるようにすると決めたのですが、デ バルトリの再開だけは躊躇いませんでしたし、早々に日本にとある規模のマーケットを創出してみせる!という不退転の決意で臨むつもりです。

15年前、駆け出しの僕には汲み取ることができませんでしたが、今なら容易に想像できることがあまりにもあり過ぎて…。反論を恐れずに断言してしまいますが、手工業的マルサーラを造る唯一の造り手ですし、彼らのVSは酒精強化をせず、既定のアルコール度数に達していない(それでも17%以上あるんです!)という理由だけでマルサーラを名乗れませんが、どのマルサーラよりもマルサーラ(土地、ブドウ…)を表現しているワインです。

どれくらいギリギリのところで彼らが勝負をしているのかをイメージしていただけるような事柄を列挙しますと、
◆マルサーラとパンテッレリーア島に合わせて17haの畑を所有し、2012年には77000本をリリース。(畑の面積からしてみたら、ただでさえ少ないですし、500mlのボトルも含めてですので、それを750mlに換算すると70000本という事になるかと)
◆77000本のうち、約16000本(=8000リットル)がマルサーラ&VSで、セラーには約20万リットル!(今現在の販売量から換算すると、実に25年分にあたり…)のマルサーラ&VSが樽で熟成中。
◆ワイナリーを始めるにあたって、マルコが親戚、近隣の農家、廃業してしまったワイナリーから買い集めた、1903、1958年などのヴィンテージのマルサーラが未だに樽で熟成中・・・などなど、数字だけを見ても凄いことになっているのがお分かり頂けるかと。
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圧巻のセラー
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こんな樽も普通にあり、
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鉄格子の向こうには、世界のお宝的ワインが!!!!

ポテンシャルで言うのなら、年間50000本(500mlで)のマルサーラ&VSをリリースできるだけのブドウを生産しているのですが、30年に渡って示し続けたワインの持つ個性&品質、故マルコの強烈なカリスマ性をもってしても、その本数を売ることは非現実的で、比較的早い段階でのコスト回収、市場でのVS&マルサーラ以上の高い汎用性を見込んで造られるようになったのが、白のスティルワイン3種類と赤のスティルワインでした。

膨大な量が熟成中で、売り先さえあればいつでもボトリングできるものが多々あるVS&マルサーラの在庫をこれ以上増やさないためには、売れるくらいの量を仕込めば良いのだと徐々に考えたことと、長期熟成に耐えるだけの力があるブドウが毎年できるわけではない事が主な理由だと思います。

ですので今現在は、VS用のワインを仕込む年にはマルサーラ用のワインは仕込まなかったり、その逆もあったり、そしてどちらも仕込まない時もあるようです。

VSとマルサーラ、どちらのワイン用のワインも仕込まないと決めた2009年に、長男レナートがTerzavia(テルツァヴィーア、“3つ目の道”の意)という名前の別会社を立ち上げ、スプマンテの生産を始めます。グリッロ100%で、瓶内2次醗酵を促すための糖分としても、翌々年の同じ畑で獲れたグリッロのモストを用いる徹底ぶりで、スプマンテに思い入れの少ない僕からしても凄く美味しい!!!ノーマルのスプマンテ以外に、複数ヴィンテージのグリッロのワインに、VSの20年物を加え、ノーマルのと同様にグリッロのモストを加え、その際に2次醗酵を促すための酵母添加も行わず(ノーマルの方には酵母添加を行っています)にボトリングしたリゼルヴァ、キュベVSは彼らにしか造りえない、本当に贅沢なスプマンテです。

先に書いた通り、その年のブドウ自体のもともとのポテンシャル、収穫時期の天候如何で、VSやマルサーラを仕込むのに相応しいブドウができるわけではありません。グリッロは、樹上で生らせておけば生らせておいただけ糖分も上がる上に、酸度も落ちないという稀有なブドウ(高いアルコールと酸があるからこそ、長期の酸化熟成が可能なわけです!!)で、VS&マルサーラ用のブドウの収穫は9月20日頃に行われ、その時点でのブドウの潜在アルコール度数(全ての糖分がアルコールになったと仮定しての度数)は15~16%にもなるそうです。に対して、スティルワインを仕込む時には、9月上旬に収穫し、アルコール度数的に13~13.5%程度に、そしてスプマンテ用のブドウは12-12.5%程度のアルコール度数になるように(度数が高すぎると、瓶内2次醗酵が起こりづらくなります)8月中~下旬に収穫しと、収穫時期を変えることで同じブドウから3つの個性の異なるワインを造っています。

ヴィンテージ的に難しい年にはスティルワインとスプマンテを仕込み、健全なブドウとその熟度を引っ張るのに理想的な天候が得られた年にVS&マルサーラ用のワインを仕込む。それに加えて、ヴィンテージ表記がさほど重要視されていないスプマンテは、生産自体がイレギュラーであっても、出荷時期と出荷量をデゴルジュマン(澱引き)のタイミングで調整できるため、造り手的にも都合が良い…スプマンテが加わったことで、パズルのピースが完全に埋まったんです!!!

当初(2009年以前?)このスプマンテのプロジェクトのことをレナートから聞いた時、ただでさえスパークリングワインに思い入れのない僕は、VSとマルサーラに集中すればいいのにと思ってしまっていました。ですが、それがいかに無責任な見解だったのか、一連の事情を完全に理解した時に思い知りました。良く考えればそれは彼の新会社名の裏に込められた意味、つまり“1つ目の道(選択肢)”とはVSとマルサーラを指すことからも明らかだったんですよね…。(第2の道は、スティルワイン)

この文章を書くにあたり、いろいろな質問を彼にしたのですが、彼からの返事の最後にこんな言葉がありました。

「VSとマルサーラ、合わせて年に50000本位売れていたとしたら、何の心配事もなかったろうし、恐らく、この土地にもともとなかったタイプのワインをいろいろ造ってみようとさえ考えなかったかもしれない。それが人為的に過剰に干渉するというのではなく、あくまでもナチュラルな手法で、自分が手掛ける土地やブドウ品種の新たな特性を引き出してあげたものであったとしてもね…。」

伝統とは、過去のとある時期に生み出された、以降変わることのない固有のものなどではなく、各時代の個々人の良心(その良心を支えているものとは、一家の歴史、自分の生まれ育った土地への敬愛、そして現代においては科学的裏付けが取れた先人の知恵なども)によって変化しつつ受け継がれつつ、今現在にまで伝わってきたもので、常にドラスティックに変化し、時には淘汰され、変革され、再発見再評価される可能性を秘めた流動的なものなのではないでしょうか。

何が言いたいのか自分でもよく分かりませんが、伝統を守り伝えるという事自体がすでに、新しい伝統を創造しているということなのかと…。

マルコが既存のマルサーラ観さえも疑い、自身の生まれ育った場所の伝統の衰退を憂いて、それを守るために酒精強化をしないマルサーラ(?)、VSを造り始めた事自体がその時代の誰もがやっていないことだったわけですから、真新しいことのように映るかもしれません。ですが、1773年に偶然マルサーラに寄港し、イギリス社交界での流行を確信し、本国への輸送に耐えれるようにと約2%の酒精強化を行うことを思いついたジョン ウッドハウス本人が初めて飲み、感銘を受けたものは、酒精強化されていない“本来の”マルサーラだったわけで、その味わいはVSと酷似していたのではないでしょうか?言い換えるなら、酒精強化することがマルサーラを生産する上での定石(伝統)となったのにはたった200年程度の歴史(伝統)しかなく、それ以前は普通(伝統的)にVSのようなワインが造られていたということで…。

去年の秋に彼らを訪ねた時、レナートがこんなことを聞いてきました。

「ヒサト、実はマルサーラとVS、今後は20年物とか30年物とかヴィンテージ物とかやめて、一度樽にあるワインを全部混ぜて、それぞれ一種類にしちゃおうかと考えているんだけどどう思う?この山のようにあるマルサーラとVS、親父が地図(どの樽に平均して何年物のワインが入っているか等が書いてある紙、なにせ20万リットルですから…)を残してくれているとはいえ、あまりにも煩雑すぎるし…。それに一度全部混ぜちゃえば、味わいも均一になるわけだし…。」

当然のことながら反論というか、是非とも思い留まってほしいと言葉を尽くしたわけですが、亡き父を尊敬し、そして偉大な伝統に誇りも感じているレナートでさえ、このようにいつ心が折れてもおかしくない状態なわけです。

オータがユネスコなら、デ バルトリのカンティーナとそこに眠るヴェッキオサンペーリを始めとするワインは、即ワイン世界遺産に認定です!!

この世界遺産を守るためには僕たちに何ができるか、皆さんお分かりですよね?値段に怯まず、是非一度試してみてください。価格以上のものが皆さんの事を待っていることをお約束しますので!!
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グリッロ!
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ヴェッキオサンペーリ!!

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