パオロ ベア その1
この造り手のワインを始めて飲んだのは、ローマで働いていたレストランで。当時はもっと青みがかっていたラベルのRosso di MontefalcoとSagrantinoPassito。Rossoは温泉卵みたいな香りが強いが飲むと案外気にならなくて、Passitoは素直に美味しいんだけど澱が異様に出てたという印象だったと思います。
この時Rossoで感じた、澱由来の還元香は今でもベアのワインに感じることはありますが、とても穏やかになってます。この”還元香”に関して多くの人は、ワインがボトル内の(ほぼ)無酸素状態で還元状態になってしまい、ワインが”閉じて”しまったという状態で出る香りと、ワインが樽ないしタンクで熟成している時に澱が出す臭いで、ワインに移ってしまったものとを混同しているように思います。前者はグラスでしばらく放っておけば本来の香りを取り戻すのに対し、後者は基本的にそのまま取れることがない。ちょうど2004年秋にイタリアに行った時、アンジョリーノ(ラ・ビアンカーラ)で、その年のSassaiaに使うトレッビアーノを飲ませてもらった時まさにその香りが出ていた。彼曰く、毎年その香りは出るものではなく、むしろ醗酵直後にこの香りが出ることは極めて稀だそうで(彼の場合、この香りが出ない限りボトリングまでの期間ずっと醗酵を行った容器に入れっぱなしにする)、この香りを感じた時は澱引きするためとワインを空気に触れさせてあげるために樽(ないしタンク)の移しかえをするらしい。その日のうちに移しかえを行ったトレッビアーノを飲んだのだがもうすでに還元臭(香でなく)はなかった。面白いことこの後行った、フリウリのラ・カステッラーダでも同様の現象が起きていて、次の日澱引きを行ってました。
ベアは熟成にもあまり木の樽を使わなかったために、この状態に落ち込みやすかったんだと思います。僕は事あるごと(毎春、彼のワイナリーで飲むワインはウルトラ還元しているのでその度)に樽を買った方がいいんじゃないかといっていたのですが、スペースの関係上今までは不可能だったのですが、最近木樽を沢山購入したので、今後はより開いた素敵なワインになると思います。
ではなぜ大量の樽を購入することできたのか?
それは新しいワイナリーが完成(ほぼ)したからなんです。
次回はベア家の人々の話、仕事を始めることになったきっかけ、そのとてつもないニューワイナリーに関してのお話を。
【新入荷】2024年8月その1(Nicolini,Mlecnik,Paolo Bea,La Visciola,Colle Florido) ヴィナイオータかわら版 ~五月女かほり編 その五~Paolo Bea(Giampiero Bea) / 豆粉・小麦粉 【新入荷】2023年10月その3(Davide Spillare,Paolo Bea) 造り手紹介 Paolo Bea / パオロ ベア 【新入荷】2023年4月その1(Pacina,Montesecondo,Monastero di Vitorchiano,Monte Maletto,Stefano Legnani,Daniele Portinari,Paolo Bea,Cantina Giardino)