toggle
2022-12-27

ヴィナイオータかわら版 ~加藤編 その五~

大きな手の平と優しい笑顔が印象的なラーチノの当主ディーノ。彼の前回来日時より、私にとってすっかりディーノは“ちょっぴり羨望の念を抱く人”なんです。

「故郷のために」ことあるごとにそう口にするディーノ。畑やセラーでの彼の姿は見たことがありませんが、志でありその姿勢にあたるものは、しっかりと彼の醸す液体から感じ取れます。

私自身、親が転勤族だったことが災いと呼ぶのか奏功というのか、新しい街での暮らしへの抵抗一つなく(社会人13年でも8度の引越・・・)、自分自身の終の棲家がどこになるのかを楽しみにしている一方で、郷土愛というものを覚えたことがありません。なので、若くして故郷への愛情を口に、そして行動にできるディーノを心から羨ましく感じたのだと思います。

さて、今回ご紹介するのは「ホボ2018 (1500ml)」。「ホボ」は英語で“浮浪者”や“渡り労働者”のような意味を持つ言葉で、1930年代頃のアメリカの季節労働者たちの自由な精神、生き方へのディーノの“小さな憧れ”から名付けられたワインだそう。その味わいも、それはもうザックザク、気の置けない仲間と飲んだ日にはマグナム瓶はすぐ空に。時間と共にしっかりと移り変わる味わいは、次のひと口が楽しみに思えるワインだと言えます。

彼の住むカラーブリアの伝統品種マリオッコの豊満な雰囲気(は感じつつ、意図した気軽さ全開の味わい)に、程よい揮発酸が可愛らしさ、人懐っこさを感じさせます。フルボトル(750ml)にワインを詰めては「 (容量が)小さすぎんねん!!」と怒られた亡きお爺さんとの思い出話を語るディーノの、ワイワイとしたレストランシーンや、家庭での何気ない一本として使って欲しいとの想いが込められています。

郷土愛に溢れた男が醸す“そうそう、こういうのがいいよね”というワイン。もう少し乱暴にものを言うと“そうそう、こういうのでいいよね”そんなワイン。

“良いワインってなんだろう”と時折考えることがありますが、まさに一つの答えはこういったワインにあるように思えます。ソムリエに希少なワインを開けてもらうワクドキもいいけれど、飲みたいときに気兼ねなく飲めるワインって、いいよね!! 放浪癖加藤の選ぶホボ2018ぜひぜひ、お試しくださいませ!!!

 

≪加藤の飲んでもらいたいワイン紹介≫
銘柄:Hobo 2018 / ホボ2018
造り手:L’Acino / ラーチノ
地域:伊カラーブリア州
ブドウ:マリオッコ
希望小売価格(税抜) :5,200円

関連記事