造り手紹介 / Pacina パーチナ
造り手:Pacina / パーチナ
人:Stefano Borsa、Giovanna Tiezzi / ステーファノ ボルサ、ジョヴァンナ ティエッツィ
産地(州):トスカーナ
ワイン:Pacina,Pachna Rosso,Donesco,La Malena,La Cerretina,La Sorpresa…等
所在地:Pacina, 7 53019 Castelnuovo Berardenga SI – Italia <Map>
Web : http://www.pacina.it/
トスカーナ州が誇る世界遺産の街シエナから東に25km、キャンティ クラッシコ地区の南端に位置するカステルヌオーヴォ ベラルデンガの郊外にあるパーチナ。彼らの農場がある土地の歴史は古く、始まりは紀元前まで遡ります。
イタリア半島の先住民族エトルリア人がこの場所に住んでいて、エトルリアのワインの神パチャ(パクナ)から取られたのがパーチナという名前の由来だと考えられています。10世紀に修道院として建てられた建物とその当時に開墾されたブドウ畑や畑、森に囲まれた60ヘクタールの敷地を、1933年に現当主ジョヴァンナの曾祖父エドアルドが買い取ったところから農場の歴史は始まります。
物理化学の教授で環境問題やエコシステムについての研究をしていた父エンツォと、環境学者として大学で働いていた母ルチアは、1972年に家族の農場へと戻ってきました。そして、それまでこの地域で普通に行われてきた農薬や化学肥料に頼らない農業が失われていく姿を目の当たりにし、自身が理想とする畑の生態系と微生物環境をパーチナで実践し、後世に残すことを決意しました。
単一の果実や作物で畑を埋めつくすのではなく様々な作物を栽培、広大な土地を使って常に休閑地を設けことで畑の地力を回復させるなど、大きなサイクルでパーチナという農場を有機的で持続可能な場所にしています。パーチナの土壌はトゥーフォ ディ シエナと呼ばれる500万年前に海であった証拠である凝灰岩から構成される砂質がメインで、粘土や丸い小石が入り混じっていることからも大地になった後に川が流れていた痕跡が残されています。
キャンティの大手ワイナリーで働いていたミラノ出身のステーファノは、同僚だったレ ボンチエのジョヴァンナ モルガンティの紹介で、後に妻となるジョヴァンナ ティエッツィと知り合いました。その後別のワイナリーで醸造責任者を務めることになりますが、パーチナで行われている農業の在り方に共感し、この農場のブドウでワインを造りたいと思うようになりました。そしてワイナリーを退職しジョヴァンナと2人でパーチナを引き継ぐ決意をします。それまで量り売りや桶売りしていたワインを1987年ヴィンテージから自家元詰めを開始、作家でもあり絵も得意だった母ルチアに描いてもらったラベルを貼り付け彼女たちの最初のワインがリリースされました。
洞窟のような地下セラーの床は、粘土に石灰を混ぜ地面に塗って叩いて作られたもので(日本で言うところの三和土たたき)、最深部は、隆起する前はもともと海だった砂質の層。壁面には、1000年以上前に修道院だった当時掘られたときの跡があったりと当時のままの姿で残されています。セラーでの仕事は5世代続く中でも変わることはなく、大きなセメントタンクで温度管理することなく野生酵母での醗酵を行い、様々な大きさの木樽に入れた後、ボトリングまでの期間(パーチナで24か月間)を一回も樽の移し替えを行なわず醗酵の続きと熟成を行い、ノンフィルターでボトリングし、瓶詰め時のニ酸化硫黄の添加も極少量のみとしています。
1987年からキャンティ コッリ セネージ(畑はクラッシコ地区にありますが申請していないためコッリ セネージでリリースされていました)でワインを販売してきましたが、2009年ヴィンテージにワイン中の二酸化硫黄量が少ないという理由で認証を落とされたため、DOCGに未来を感じられなくなり以後IGTでリリースするようになりました。2016年から二人の子供マリーアとカルロが本格的にワイナリーとアグリツーリズモの手伝いを始め、さらにマリーアの夫ロベルトも加わりパーチナの伝統は6世代目へと受け継がれようとしています。
●以前に掲載していた造り手紹介はこちら
造り手紹介 Pacina / パーチナ(2016年3月版)
<ワインラインナップ>
●La Cerretina (ラ チェッレティーナ)
品種:トレッビアーノ トスカーノ、マルヴァジーア デル キャンティ
もともとはヴィン サント用のブドウの余剰分で造られていた白ワイン。2010年ごろ植え始めた白ブドウの樹齢が高まってきたことにより生産量が増えはじめた。セメントタンクでおよそ10日程度マセレーション後、1000Lのアカシア樽と500Lの桜の木樽に移され12か月間熟成。
●Rosato (ロザート)
品種:サンジョヴェーゼ主体、カナイオーロ、チリエジョーロ
フラッグシップワインの「パーチナ」から抜き取ったモスト(セニエ)で造られるロゼワイン。醗酵途中のパーチナのタンクから最初の8時間以内にモストを抜き、別のセメントタンクに移して続きの醗酵が行われる。500Lのオーク樽で12か月間熟成。
●Pacina (パーチナ)
品種:サンジョヴェーゼ主体、カナイオーロ、チリエジョーロ
2008年までは「キャンティ コッリ セネージ」としてリリースされていた彼らのフラッグシップワイン。平均樹齢は約30年。広大な敷地を持つパーチナでは収穫は複数回行われるが、最も状態の良いブドウでこのパーチナが造られている。セメントタンクで平均6週間程度マセレーション後、大樽に移され24か月間熟成。ボトリング後さらに2年熟成してからリリース。
それまで「イル セコンド」という名前でリリースしていた区画の樹齢が15年を超えしっかりした果実を生らせるようになり、もはやセカンドラインとは呼べないのでは?ということで、2017ヴィンテージからSECONDOを並べ替えてDONESCO(ドネスコ)という名前でリリースすることに。セメントタンクで約3週間程度マセレーション後、セメントタンクとステンレスタンクで30ヶ月間熟成。
●Villa Pacina (ヴィッラ パーチナ)
品種:サンジョヴェーゼ
木樽での熟成を“サンジョヴェーゼの荒々しいタンニンを落ち着かせるための酸化的熟成を行う環境”と考えるステーファノ。通常は区画ごとにセメントタンクで初期醗酵を行ったあと木樽に移されるが、木樽に入れる前に調和が取れたものに仕上がったタンクがあった際に、木樽に移さずそのままセメントタンクで熟成を続け、酸化防止剤無添加でボトリングされるのがこのワイン。約1ヶ月マセレーション後、皮を引きそのままセメントタンクで12ヶ月間熟成。
●Pachna Rosso (パクナ ロッソ)
品種:サンジョヴェーゼ
特別な条件が重なった年に造られるリゼルヴァにあたるワイン。ヴィンテージごとに造る理由もアプローチも異なる。この地に最初にブドウを植えたエトルリア人への敬意をこめてエトルリア語でパーチナを表す「Pachna(パクナ)」と名付けられた。2016ヴィンテージは、醗酵がなかなか進まず半年間マセレーションしたまま醗酵が終わるのを待ったひと樽の仕上がりが素晴らしかったので、混ぜずにパクナとしてリリースされることになった。皮を引いたあと、オークの大樽で24ヶ月間熟成。
●La Malena (ラ マレーナ)
品種:シラー主体、チリエジョーロ
もともとはシラー100%のワインとして生まれたラ マレーナ。1993年に植えたシラーの樹がポツポツと枯れ始めたため、その歯抜けになった場所にチリエジョーロを植え、ラ マレーナもシラーとチリエジョーロのブレンドになった。セメントタンクで約2週間程度マセレーション後、オーク樽で12ヶ月間熟成。ボトリング後さらに12か月熟成してからリリース。
●Ciliegiolo (チリエジョーロ)
品種:チリエジョーロ
シラーが枯れ始めた区画の歯抜け部分に植えられたチリエジョーロ。ほとんどはそのシラー主体で造る「ラ マレーナ」にブレンドされるが、チリエジョーロが余った場合、単体でボトリングされる。約20日程度マセレーション後、セメントタンクとステンレスタンクで10ヶ月間熟成。
素直な果実とジェントルなタンニンが特徴のカナイオーロ。主に補助品種としてブレンドされるブドウで、この品種単体で造るワインはほとんど見かけられないが、カナイオーロという品種の個性をもっと把握したいというステーファノの個人的欲求から生まれた。約2週間程度マセレーション後、オーク樽で10ヶ月間熟成。ボトリング後さらに2か月熟成してからリリース。
●La sorpresa (ラ ソルプレーザ)
品種:トレッビアーノ トスカーノ、マルヴァジーア デル キャンティ
ヴィン サントとして造られているが、2003年と2006年以降は、規定アルコール度数(15.5%)に満たずヴィン サントを名乗ることができないので、サプライズ(驚き)を意味する「ラ ソルプレーザ」という名前でリリースされている。収穫したブドウを棚の上で3か月間陰干しした後、100年以上代々受け継がれてきた「ヴィンサント マードレ」(ヴィンサントの母。樽の底に溜まった澱を集めたもので、新しくヴィンサントを仕込む時にスターターとしてモストと一緒に樽に入れる)とともに30~100リットルの栗樽で自然発酵させる。布袋で濾過したあと樽に戻し約5年間熟成。
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