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2020-05-12

【新入荷】2020年5月その2(Lucie Colombain、Stefano Legnani、Francesco Brezza)

僕を知る人でしたら、オータのシュレール愛については良くご存じの事と思います。ブルーノ シュレール率いるワイナリー、ジェラール シュレール エ フィスは、フランスはアルザス地方のナチュラルワインを代表する造り手。初めてのシュレールワインが、麹町の巨匠Oシェフに飲ませてもらったリースリング キュヴェ パルティキュリエール2000年だったこと、そして2番目がその数日後に当時イタリア料理店で働いていた、現ヴィナイオータ番頭の岸本に飲ませてもらったピノ グリ レゼルヴの2000年だったことは、アルザスワインに対して当時のオータが抱いていたイメージをことごとく覆す味わいだったこともあり、17-18年前の事なのにもかかわらず鮮烈に記憶に残っています。

そんな衝撃の出会いから1~2年後、毎年春にヴェローナで開催されるワインの見本市であるヴィニーターリーの際、近所という事もあり定宿とさせてもらっていたラ ビアンカーラのアンジョリーノが、「(マッサヴェッキアの)ファブリーツィオの友達のアルザスの造り手が、俺たちに飲ませたいってことで、ワインを色々持ってきてくれているらしいんだよ。だから今晩はみんなをうちに呼んで、ローザマリーア(アンジョリーノの奥さん)にピッツァを用意してもらうから、ヒサトも早めに帰ってこいよな。」と。で、夜にアンジョリーノ宅に帰ると、すでに謎のアルザスの造り手は到着していて、ワインのボトルを開け始めている…。そしてそのラベルをよく見ると、Oシェフや岸本に飲ませてもらった造り手のものではありませんか!うおー、この興奮をどう本人に伝えればよいのか(オータはフランス語が話せません)と思っていたら、アンジョリーノが「ブルーノは奥さんがイタリア人だから、イタリア語もペラペラだよ。」というではありませんか!!なんという奇跡!それならばと、自己紹介代わりにオータにとっては衝撃のアルザスワインであったこと等をイタリア語で熱苦しく伝えます。その晩の面子ですが、アンジョリーノ、ファブリーツィオ、ニーコ(カステッラーダ)、スタンコ(ラディコン)、ダーリオ(プリンチッチ)と、口の悪い奴らばかり(笑)な上に、ブルーノもピジェ(白品種を醸したワイン)や酸化防止剤完全無添加のものなど、攻めた造りをしたワインばかりを持ってきたという事もあり、議論が白熱したのも今となっては良い思い出です…。

その後、2回ほど収穫を手伝わせてもらったり、単なる表敬訪問に訪れたりと友達付き合いは続いていたのですが、2018年の年末、家族で映画ボヘミアン ラプソディを見る直前にブルーノから電話がありまして、「ジェラール シュレール名義ではないけど、俺の造ったワインにヒサトが興味あるようなら、(ワインを)用意できるけど。」と言うではありませんか!その後の映画がオータ的に大盛り上がりだったことは言うまでもありません(笑)。それが、今回入荷しましたルーシー コロンバンのワインです!

ルーシー コロンバンは、ブルーノの幼馴染でもあるエリック コロンバンの叔母さんの名前で、ルーシーは1980年代まで彼女の名前を冠したワイナリーを経営していました。コロンバン家の誰も継ぐ意思がなかったということもあり、ワイナリーは廃業、彼らが所有する畑は貸しに出されていたのですが、2017年の契約が切れるタイミングでブルーノが手を挙げます。それもそのはず、コロンバン家が所有する畑の中には、

プェルシックベルグのゲヴュルツトラミネール

アイヒベルグのピノ グリ

シャン デ ゾワゾーのリースリング

など、ブルーノ的には垂涎の的なものがあり…。恐らくですが、近所からのやっかみには既に事欠かなかったブルーノ(笑)、そんな良い条件の畑を独り占めして更にやっかまれるのも嫌だったという事情と、コロンバン家に対する敬意を融合させるべく、エリックとエリックの兄弟と一緒に、ルーシー コロンバンという名の会社を立ち上げます。そしてエリックは、ルーシー コロンバンの役員であるのと同時に、ジェラール シュレールの従業員となり、シュレール家とコロンバン家の畑での作業に従事、カガミケンジローが抜けた穴をなかなか埋められずにいたブルーノ的にも大助かりで、彼自身セラーでの仕事に集中できるように…。

今回入荷したワインは6種類で全て2018年ヴィンテージ、うち3種類はまあまあやんちゃ、1つはやんちゃとは言いませんがやや不安定…(笑&涙)。夏の酷暑が原因なのか、ワインによっては酵母が活動をボイコットした雰囲気がありまして…。モノによっては1000本以上の入荷ということもあり、ヴィナイオータとしても売り切るまでに2年近くかかることを売り出す前から覚悟しております!

それではワインの詳細です!!

ピノ ブラン ジャルダン デ ロピタル:もともと病院があった土地の目の前にある区画のピノ ブラン。若干の残糖あり。酷暑で酵母が活発でなかったためか、アルコール醗酵が途中で止まり、バクテリア(乳酸菌)が糖分を食べて揮発酸を生成した跡が…。時間の経過とともに酸-甘味のバランスが取れてくるかと…。

シャルドネ:もともとはクレマンを造るために栽培されていたシャルドネを使用し、スティルワインを。ブルーノ曰く、シャルドネという品種を初めて醸造したとの事。味わいは極めてドライで、キレッキレな揮発酸にヴァンジョーヌを思わせる香りが漂う、今回入荷した中で最もファンキーなワイン。抜栓4-5日後くらいから、品種由来の個性が見えてくる気が…。調和が取れるまでに一番時間がかかるワインかと…。

ピノ グリ アイヒベルグ:残糖と揮発酸の具合に関しては、ピノ ブランと同程度なのですが、畑のポテンシャル由来と思われる深みがワイン本体に備わっているため、そこそこにバランスが取れている。とはいえ、本領発揮にはあと2-3年はかかるのでは?

ゲヴュルツトラミネール ピジェ:親孝行ならぬインポーター孝行その1(笑)。皮ごと醸したおかげか、アルコール醗酵中にいかなるトラブルにも見舞われなかった雰囲気があります。アルコール度数15.7%、辛口、アロマティックだけど、梗由来とおぼしき苦みが全体を引き締めている、今現在も十分楽しめ、将来もとても楽しみなワイン。

リースリング ル シャン デ ゾワゾー:概ねクリアな味わいなのですが、マメが出そうな佇まいが奥底に…。抜栓後1週間ほど定点観測をしたのですが、マメが少々出て、ボトルが空になる頃には消えていたので、(マメが)完全に出なくなるようになるまでにそれほど時間はかからないと思います。

ピノ ノワール ラングセール:インポーター孝行その2。シュレールのLN012に使われるピノの区画にもほど近い、“見晴らしの良いところ”の意味する区画。ピノ ノワールとは思えないほどの濃い色調と豊かなタンニンが、2018年がとても暑い夏-秋であったことを如実に物語っています。抜栓直後には感じないのですが、2杯目くらいを飲む頃に若干の炭酸ガスを感じ、ちょっとびっくりしました。もうすでにステキなワインですが、まだまだ伸びしろがあるという事かと。

リースリングとピノ ノワールは、入荷量がそれほど多くないので、早々に終わってしまうかもしれません。お気を付けくださいませ!



ステーファノ レニャーニ
バンブー ロード2017が欠品しましたので、2018年をリリースします!2017年ほどのボリュームはありませんが、味わいに何の濁りもなく、もうすでに楽しいワインです!もう少しで終売しそうな兄貴分ポンテ ディ トイ2015もよろしくお願いします!

文:太田久人
244 259 nuovo20.05.12

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