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2023-05-29

ヴィナイオッティマーナ2022【造り手セミナー】フランク コーネリッセン

①セミナー動画 (質問コーナー|02:40~)

ヴィナイオッティマーナ2023 P7 DAY2に行われたセミナーの様子です。フランクコーネリッセンは、シチリアのエトナ山の北側にあります。ベルギー人の元ワイン商のフランクは、2001年にワイン造りを始める前から、ワインへの半端ない見識と天才的なテイスティング能力、茶目っ気たっぷりの男前ということで界隈では有名だったそうです。今回セミナーに参加してくれているのはフランクさんと、奥様のアキ子さんです。

②造り手紹介 (00:00~)

シチリアのエトナの、南で太陽あるが、標高がある北側のために生まれる昼夜の寒暖差、微妙な海の影響、ネレッロ・マスカレーゼなどのユニークな土着品種、樹齢の古い木が残っていたなどの点に目をつけ、2001年よりワイン造りを始めます。テロワールを純粋に表現するために、何も付け加えないワイン造りをし、醸造当初より「エトナの大地を構成する火山岩を液体化したような」ワインを造り人々を驚かせます。将来はバローロのようにクリュについて語られる日がエトナにも来るはずだと、2010年代からは、標高、立地、度重なる噴火による土壌の差などバラエティに富んだエトナのゾーンを表現するために 区画ごとにボトリングしたワインも造っています。現在24hの畑になりますが、複雑な生態系を守るために、2hでオリーブや野菜なども育てています。エトナという土地の個性とポテンシャルをワインで表現する、エトナを代表する造り手です。

③造り手への質問と回答

Q1. ワイン造りを始めて20年以上なりますが、当初と変わったことはありますか?(1:03)

A1. 職人としての仕事は、初めてから徐々に経験と見識を積み重ねていく仕事だと思いますが、変わることは必要なことだと考えています。自分の性格もある部分に留まっているというよりは、前に進みたいという強い意志を持っている傾向の人間だと思っているので、たくさん変えてきたと言えると思います。例えばそれはシチリアのエトナから日本に来たりとか、ベルギーに帰ったりとか、そういった変化があることで何か新しいことに気づかされたりすることもあったりすると思っています。旅というのはある種の気づきを与えてくれるもので、気づきは新たな変化、進化を自分にプレゼントしてくれるものだと思います。昔から今で変えたことがあるとしたら、フィルタリング、濾過に関する考え方は変わりました。当初は何もしないということを良しとしていたのでフィルタリングも一切行わなかったのですが、現在はしています。なぜならばそうすることでワイン自体により精確さが増したり、ワイン自体がよりぶれず、葡萄やクリュが持つ特徴を表現するワインになると考えるようになりました。濾過をするには濾過をするための設備が必要でそれは決して安い設備投資ではないのですが、現在に至るまでとあるフェーズ毎に最小限の必要なものをひとつひとつ手に入れる形で投資をしてきて現在に至っています。

Q2. これから新しい取り組みを考えていることはありますか?(6:45)

A2. 自分やヒサトような人間にとっては人生の中だけではやりきれないアイディアがあるのではないでしょうか。やってみたいことや思いついたことがありすぎで一生かかっても実現することが出来ないタイプの人間かと思います。そういう部分については子供たちに未来を築いていく余地を与えて行くことができたらよいなと考えています。これから考えていることは、畑を大きくすることです。現在持っているクリュの栽培面積を増やすということではなくて、別のクリュを入手することを考えています。2009年ごろからクリュ毎に味が違うこと、200mぐらい離れてるところでも全然違う土壌特性があったり、出来上がる葡萄にも厳然たる個性の差があることに気が付いたときに、別々に醸造してみてどういうワインが出来上がるのか見始めたりしたわけなのですが、新たに4ないしは5つの新しいパーセルを購入して葡萄を植え始めました。きっとここからもとても面白い葡萄が出来るのではないかと考えています。

アキ子さん談:エトナの魅力というのは、フランクがブルゴーニュやバローロに例えていたように、同じネレッロマスカレーゼであっても場所によって全く味わいが違うものが出来ることです。例えば同じような標高のところでもひとつ水脈が近いところでは凄く涼しい感じのワインが出来たり、標高が高いところではエレガンスなワインが出来たり、ほとんど火山質なのですがちょっと土壌に粘土質が入ってくるようなところですとちょっと筋肉質なワインが出来たりと、かなり違う表情を見せてくれます。フランクはもう土地を買うマニアみたいになっているのですが(笑)、地元の農家の方が自分の土地のワインなんだと飲ませてくれて、それが良かったりするとすぐに欲しくなっちゃって(契)契約間際にこれ買うんだけどって契約書持ってくるんです。っていうかお金どうするの?ってよく喧嘩もするんですが、最近はピラーオという1haぐらいのところを買いまして、喧嘩しそうになったのですが、農家の方のワインを飲ませて貰って凄い良かったので、まっいいわ(笑)ってなって平和になりました。まだ先の話になりますが、美味しいネレッロマスカレーゼ100%のワインが出来ると思います。ということで、フランクは少しずつクリュを増やしていきたいという考えがあるようです。

Q3. 「2013年の夏に彼を訪ねた時、その時一番会いたいと思っている造り手として、マダム ルロアとルフレーヴの名前が挙がった時は、のけぞりそうなほど驚きました。」という太田の記事を見たのですが、現在会いたい方はいますでしょうか?(14:51)

A3. マダムルロアに関してはその後、訪問が叶ったり、彼女自身が自分の車で愛犬を連れて二日かけてブルゴーニュからエトナまで訪ねにきて来てくれました。マネージャーのような方はいるようなのですが、一人で行くから大丈夫とのことで。普通、高齢の方とコミュニケーションをとるということは簡単なことではないと思うのですが、マダムルロアに関しては当時80~85歳ぐらいだったと思いますが、まだ尽きぬ好奇心を持っていること、コミュニケーションがピンポンのようにやりとり出来ることに何より驚きました。今誰に会いたいかとというと難しい質問ですが、どちらかというと例えばニュージーランドやオーストラリアなどの若い造り手でしょうか。工業的なアプローチをする若い造り手ではなく、我々が良しとしている考え方に則っていることは最低限であるのですが、フランスやイタリアなど長い伝統の中で、もしかして凝り固まってしまっている常識を、伝統がない分あっさりとぶっ壊してくれる、自由闊達にやってきたような人たちからどういうことをやってるのかを聞くのは、自分自身も凝り固まっているかもしれない頭にいい刺激になるかもしれないとイメージできます。そういう出会いがあって会話が弾んだりすると楽しそうですね。

④まとめ

この地のポテンシャルに目を付け、20年以上に及ぶワイン造りの中で、将来はバローロのようにクリュについて語られる日がエトナにも来るはずだと思っていたことが、本当にそういうことになっているのが、ただただ凄いなと思います。いい土地と聞いたら後先考えずに買っちゃう茶目っ気もいいですねw まだまだこれからも様々なエトナの表情を見せてくれるのが楽しみです。(担当:五月女剛)

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