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2007-02-27

パオロ ベア その4(たぶん完結編)

ジャンピエロは建築家ではあるのですが、市のために働いており、建物の設計を行ったりすることはあまりしないようなのですが、彼の新しいワインセラーは彼の建築家としての集大成と言ってもいいものになると思います。
コンセプトは現代と伝統の融合ということで、伝統的な建物の構造・工法や建材などのいいところを取り込み、現在の技術革新が持つ利便性は大いに利用するといったもの。できるだけコンクリートを使用せず、環境ホルモンなどを出すようなものは一切使用しないという徹底ぶり。何がすごいのかということを項目別に列挙していくと、材料、セラー内の壁はバチカンで使用されているものと同じ産地の大理石を使用。厚さが60cmもあり、かなりの蓄熱効果が期待できる。壁厚60cm・・・もうこの時点から日本人的には理解不能です。
構造3階建てで、3階部分が彼の家の同じレベルで、1階2階は半地下になっている。斜面に建っているため、洞窟のように横からも入れるようになっていて、1階の入り口にはボトリングのトラック(イタリアにはボトリングを専門に行う業者があって、必要な機械全て積んだトラックがある)やワインを取りに来た運送業者のトラックなどがセラー内部にまで入れるようになっている。
3階は事務所、テイスティングルームとブドウをプレスするための機械が置いてある。
2階はステンレス醗酵槽と木製開放醗酵槽があり、3階からポンプを使わずに入れれるようになっている。一部3階と吹き抜けになっており、外気温の影響を受けるようななっており、これは彼の造りの哲学で”ワインは少なくとも1回は暑さを感じるべき”というものがあるため。もちろん周りは石造りなので35度とかにはならないとのこと。それ以外にボトル(に入れてから)の熟成場所もある。
1階は熟成用の木樽がある。当然のことながら2階からポンプを使わずにワインを樽に入れるため。地面は前面がコンクリートで覆われているわけではなく、樽の下部には砂利が敷いてあり、その下はむき出しの大地。湿度を調整するためのパイプと外気を取り込むためのパイプが砂利の中を通っている。
各階は階段以外にも、部屋と部屋のつなぎ目などが鉄網でできているため、空気が循環するようになっている。
セラーの最深部(奥行き的に)の壁は完全に塞がっておらず、モンテファルコの地層が見れるようになっている。

設備 事務所等の暖房には薪ストーブを使用、燃料は剪定したブドウの枝。

そのとてつもない大きさ、大理石の量を見るにつけ、とんでもなく高いのかと思いきや、一緒に購入した大樽、開放醗酵槽などを合わせても100万ユーロ(1億5千万円)。そのうち、EUからの補助金が50%程出るということでした。
彼には、このセラーを理由に今以上にワインの値段上げたらもう買わないぞと言ってあるんですがどうなることやら・・・
下の写真、石の薄い部分が60cmあります。このセラーがいかに大きいか(彼らの生産本数を考えると)想像してもらえるでしょうか。

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上の写真、彼らのパッシート用のブドウを干すための建物のそばで、ベアの畑ではないのですがたまたま見つけたので、ジャンピエロと写真を撮りました。僕が指差してるのなんだか分かりますか?カルチョーフィ(アーティチョーク)の株なんです。この辺りでは伝統的に行われてきたことで、別に空いているスペースを使っての家庭菜園というわけではなく(日本じゃないので土地はありますから)、ブドウに対してそれなりの意味があるわけで、そりゃもう昔の農民の知恵ってほんとにすごいなって思わされます。カルチョーフィという食べ物をいじったことのある人なら分かると思うのですが、花弁などを取り除き、食用にする柔らかい花軸の部分だけにすると、物凄く酸化しやすく、白い部分がすぐに茶色くなってしまいます。なので、ローマの市場とかで、すぐに調理できるようにと剥いた物を売っているところでは、処理したらすぐにレモンを絞った水の中に入れています。酸化して茶色くなるということは、鉄分が多い証拠とも言えるわけです。で、話を戻しますが、農民はブドウの葉っぱや果実から鉄分が足りないと判断した時にカルチョーフィを植えるそうです。鉄分を多く必要とするカルチョーフィを植え、花軸は食用にしたとしても畑に残った葉っぱや茎が腐って堆肥化したものには、鉄分がブドウが吸収しやすいような形で残るのだそうです。
鉄分とか今でこそ理論的に説明できることでも、昔の人たちは経験からこういうことを学んでいたわけなんですよね。すごすぎます。
下の写真はベア家のパッシート小屋です。

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