ヴィナイオータ かわら版 ~荒間編 その参~
荒間の“飲んでもらいたい”ワイン紹介!!
今回で、三回目のかわら版となります。ヴィナイオータの荒間です。つたない文章ですが、お読みいただければ嬉しいです!
今回、僕が紹介したい造り手は、パーチナ、そしていくつかある、キュヴェの中から、ヴィッラ パーチナ2015を選びました。「あるヴィンテージのある区画のワインが、木樽に入れる前に調和を取れたものに仕上がった際に、酸化防止剤も添加することなくセメントタンクから直接ボトリングされるのがこのワイン」と太田の説明にもある通り、セメントタンク内ですでに、樽による酸化的な熟成を必要としないほど味の調和がとれていたという、パーチナが作るワインの中でも特異な生い立ちをもつ一本です。うーん、どう魅力をお伝えしようかと思ったとき、やはりその造り手である、パーチナという人が、どういう人なのかを改めて文章にできたらと思いました。というわけで、導入文とだいぶテイストが違いますが笑、今回のかわら版スタートです。。。。
実際の行動に、そして何の形にも表れない思想を思想とは呼ばない。とするならばパーチナは、思想を持った造り手のように思える。そして、彼自身の思いとその行動が解離していないことにおいて、きっと彼は、誠実の人だと思う。
例えば、彼の造るワインの品質に対して、価格が安価であることを友人から指摘されたとき、それでかまわないというのが彼の答えだった。自分たち一家が普通に生活でき、子供に教育を受けさせ、年に一度のヴァカンスに行けるだけの収入があれば十分、そして、ワインが嗜好品化しすぎていることへの違和感と、自分たちの造るものは日常に寄り添うものであってほしいと思っているから、この価格で自分のワインを売るのだということだった。
また、2009年に彼らの作ったキャンティが酸化防止剤の使用量が少ないという理由からDOCGの官能検査に落とされたとき、彼のとった行動は、認定を受けるために、自分たちの考えに反して、無理に酸化防止剤を使用し、再検査を受けるということではなく、それ以降は官能検査自体を受けず、キャンティの名前を捨ててパーチナという名前でワインをリリースさせるということだった。
地に足の着いた感覚の人であり、また、反骨の人のようでもある。見え方はその見る角度によって変わる、見る側の無意識の見方や感じ方でも。でも、彼が行ってきたこと、そのひとつひとつの行動理由は、きっと、迷いはあれど、自分の感覚に嘘なく従うということなのだろうと思う。その意味で、やはり信頼できる造り手であるように思える。
飲み手が、口に含む液体だけで、その作り手を図ろうとするとき、何か感じるものがあるか、その舌先の官能的な刺激のみを持って、その本質へ迫ることができるか。そのものの背後にあるものはなにか。そして、単なる美味しい、不味いという個人の判断をこえて、結果として目の前にあるワインという形をとったものに、単なる味覚以上のもの感じることができるか、そういったものは確かにそのものの中に立ち現われるのか。自分の感性を持って、そして知ることを通して探っていく、そうして、ようやくそれは、飲み手に任されるように思う。パーチナのその人が、土地が、そして個人を超えて脈々と彼らの中に繋がってきたものが、そのワインにあらわれているか。なによりもそうしたことがありうるのかを、是非お試しいただきたいと思います。
≪荒間の飲んでもらいたいワイン紹介≫
銘柄:Villa Pacina ヴィッラ パーチナ 2015
造り手:Pacina パーチナ
地域:伊 トスカーナ州
ブドウ:サンジョヴェーゼ
希望小売価格(税抜) : 4,800円