ヴィナイオータ かわら版 ~桑原編 その参~
桑原の“飲んでもらいたい”ワイン紹介!!
アレテイア 2016(Cinque Camini)
ヴィナイオータ直営農場の農場長、桑原です。
直営農場といっても名ばかりで、会社の売上にはほとんど貢献していない部門となっていますが、現在建設中の「だだ商店 だだ食堂」における販売青果として、また、レストラン部門の食材として、いつか、弊社ワインたちとテーブル上で伍することができる野菜、米を育てたいと、日々、準備をしております。
そんな建設中の「だだ商店 だだ食堂」の庭園づくりを高田さんという方にお願いしております。
高田さんの庭園づくりは、いわば土木業界のヴァンナチュールと言えばいいのでしょうか?現代的な土木技術である山を削り、谷を埋め、コンクリートで大地を固めてしまう手法が、いかに自然環境に悪影響を与えているかについて、警鐘を鳴らし続けていらっしゃる方で、様々な講演や、国土交通省主催のシンポジウムに招へいされるなど、ナチュール土木界(そんな業界はありません、、、勝手に私が作りました)のパイオニアなのです。
高田さんは公的なお仕事が忙しく、現在は、個人のお宅や、民間の仕事はほとんどお受けできない状況とのことでしたが、皆さんご存じ社長オータの哲学と、高田さんのお考えと共通点が多く、また、だだ商店の1ヘクタールという広大な敷地を整備することは、周辺環境へ及ぼす影響も大きいということで、忙しいスケジュールをぬって、仕事をお受けしていただけることになりました。
高田さんの造園は、土の中の環境を特に重視しています。土中空間を適切に確保することで、空気、水の通り道を確保し、植物の根が張りやすい環境を整えること、そして、根が養分を土中から吸い上げるのを助ける菌根菌が繁殖しやすい地中構造にしたうえで、自然林に倣った樹種構成にした植栽を行っていきます。
それによって樹木の健全な生育を促し、人間が手入れをほとんどしなくても、自然林に近い形で命の循環がされるような庭園づくりを行っていらっしゃいます。
その考え方は、私が携わっている農業にも大いに関係しています。植物である農産物の成長は土中の栄養分だけで決まるわけではなく、環境全体で考えるべきであるということを改めて高田さんから教わりました。
ぜひ、だだ商店を訪れていただいた際には、ワインセラーだけでなく庭園もご覧いただけたらと思います。
さて、やっと本題なのですが、菌根菌にまつわるお話を高田さんから伺っていた時に思い出したのが、今回私がご紹介したいワインの造り手となります。
●アレテイア 2016【チンクエ カミーニ】
チンクエ カミーニを営んでいたオッターヴィオ・サッマーロ氏はご存じの方も多いと思いますが昨年5月に急逝しました。
生前の彼は、母なる大地に最大限の敬意を払いながら、あらゆる生物(動植物、微生物)の居場所や命をむやみに奪うことない農業、醸造を実践し、それを自ら芸術と呼び、酸化防止剤を含む一切の添加物を使用せず、きわめてナチュラルなワイン造りを行っていました。
そんな彼がブドウの栽培において重視していたのが、やはり菌根菌でした。それらは植物を宿主として土中のミネラルや養分を宿主に供給する一方で、植物から糖類を受け取る共生関係を結んでいます。菌根菌の働きが活発な植物は病害虫や干ばつにも強いことが確認されているとのことで、その働きを最大限活用したブドウ栽培を彼は行っていました。
そんな彼のワインの情報を聞く前に、とあるサロンで彼のワインを一口含んだ社長オータをして
「美味しさよりも何よりもキラリと光る魅力、個性に心を一瞬で奪われる」
と言はせしむワインを造り出していた彼が急逝したことは、残念の一言に尽きます。
私も彼にお会いして、彼の哲学を、栽培技術を、直接伺いたかったです。
マリオッコ種100%で造られたアレテイア。ドライで、タンニンが非常に豊かですが、力強さなかにもピュアで透明感があり、飲み心地の良さも感じられる味わいです。
今回開栓したところ、深い果実味、穏やかな酸味、スパイシーさは入荷時そのままに、よりまろやかに滑らかになっておりました。
次のヴィンテージである2017年までは弊社倉庫に届いていますが、それ以降のヴィンテージはどうなっているのか?現在のところ不明です。
昨年、初めて彼のワインが入荷して以来、ご注文をいただいていないお取引さまもいらっしゃるかと思いますが、改めてもう一度、お試しいただきたい造り手です。
改めて彼のご冥福をお祈りしたいと思います。
≪桑原の飲んでもらいたいワイン紹介≫
銘柄:Aletheia 2016
造り手:Cinque Camini
地域:伊 カラーブリア州
ブドウ:マリオッコ100%
希望小売価格(税抜) : 3,400円
*この文章は2020年2月末に書かれたものです。2020年5月現在とは状況が異なりますこと、ご了承ください。