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2023-05-29

ヴィナイオッティマーナ2022【造り手セミナー】コンティ

①セミナー動画 (質問コーナー|03:03~)

ヴィナイオッティマーナ2022 P7 DAY1に行われたセミナーの様子です。コンティは、ピエモンテ州の北東部、ロンバルディア州にもほど近いボーカというDOCワイン生産地域の造り手です。現在は、亡き父の遺志を継いだ3姉妹:エレナ、パオラ、アンナが、ボーカのワイン造りの伝統を守ろうと、約5haの畑でネッビオーロを中心にヴェスポリーナ、ウーヴァラーラ等の伝統品種を栽培しています。ヴィナイオータとの取引はまだ浅く、2021年10月が初入荷。今回、彼女たちにとって初めてのオッティマーナに、ワイナリーの中心となって働くエレナと、お姉さんのパオラが来日してくれました。

②造り手紹介 (00:00~)

コンティの造り手紹介、詳しくはこちらから。

③造り手への質問と回答

Q1. 太田も私たちも、バックヴィンテージのラインナップに大変驚きました。どうやってこんなに古いヴィンテージを沢山残すことが出来ているのでしょうか? どのような売り方をしているのですか?(03:03~)

A1. 父のエルマンノは、ボーカのワインが持つ熟成のポテンシャルを確信してため、毎年最低でも1000~1500本のワインを売らずに熟成用としてストックしてくれていました。今出している2003年までのワインは父が造っていたものです。
父の晩年は、まだ私たちが後を継ぐことも決まっていなかったため、畑も縮小し、ワイン生産量も減らしていったので、ワインのストック本数は減って行きましたが、今後私たちも生産量を増やし、父の時代と同じように1000~1500本のワインを取っておくことができるようにしたいと考えています。(エルマンノの時代の年間生産量は1万本ほどだったとのことで、生産量の10~15%ものワインを売らずに取っておいたということになります。)

Q2. 2012年から、この地域の伝統的な仕立てである「maggiorina(マッジョリーナ)」と呼ばれる仕立てを採用してブドウ樹を植えているとのこと。 この仕立ては機械も入れないし、効率は絶対的に悪いと思いますが、この仕立てを守る意味とは?(07:19~)

A2. ボーカというエリアが非常にマイナーなゾーンということもあり、年々栽培放棄が進んでいます。かつて、ボーカ、ガッティナーラ、ゲンメなど北イタリアのネッビオーロを栽培するゾーンの中に、最盛期には4万ヘクタールの畑がありましたが、現在その全てを合わせても700ヘクタール弱ほどに減ってしまいました。作業効率が悪いことや、戦後の工業化の波により農業離れが加速したことがその要因でもありますが、とても樹齢の古いブドウ樹の畑なども栽培放棄が進んでしまっています。そのようなブドウ畑を借りて守り続けることもしています。マッジョリーナはこの土地にしかない仕立てであり、それには必ず意味があると思うのです。まず、この仕立てでは、剪定時にブドウ樹を痛めずに済みます。そして、ボーカという湿気のあるゾーンでは、このような仕立てにすることで湿気を溜めず病害虫のリスクを減らすことができます。また、この仕立ての畑には、今では忘れ去られているような古いブドウ品種が混植されていたりしますので、そのようなブドウ品種を守ることも大切なことだと考えています。樹齢100年の畑を守ることは、古いブドウ品種を守ることになります。現在、新たにマッジョリーナ仕立てを採用してブドウ樹を植えた畑にも、樹齢100年を超える区画から枝を取って植えています。

Q3. 今から16年前、2006年にワイナリーを引き継いだとのことですので、3人はそれまでのキャリアを捨ててワイナリーの道を選んだことと思います。 家族の伝統そして地域の伝統を守るための決断ですが、3人とも葛藤や苦労があったことと思います。それでも3人で継ごうと決めた姉妹の想いについて聞かせてください。(14:20~)

A3. それまで全く違う仕事をしていました。農学校も出ていないし、醸造に関するバックボーンが全くない状態から始めたので、とても大変でした。ボーカは、1969年にDOCが出来た時には3~4軒のワイナリーしかありませんでした。そこから再度注目されることとなって生産者が増え、現在は12ほどのワイナリーがあります。父が病気をしてワイナリーの存続が危ぶまれた際、私たちも一度はワイナリーの売却を考えましたし、実際にうちを買いたいと申し出ていたワイナリーもありました。しかし、父の信じていたものを手放すことはしたくなく、経験が無く苦労をすることを承知の上でワイナリーを継ぐことにしました。ワイナリーを継いだことで、今まで気付けなかった父の想いや考え方を身をもって知ることが出来ました。父は、まだ「ナチュラルワイン」という言葉が無かった時代から彼が目標としていたことや行ってきたことは、大地を表現する、ヴィンテージを表現する、ブドウ品種を表現することに重きを置くことであり、現在のナチュラルワインのコンセプトに完全に則ったものでした。何十年もの時を経て、父の感じていたことを私たちは今、追体験できており、ワイナリーを継いだことで父をより深く理解できるようになったことは私たちにとってとても幸せなことです。

④まとめ

まだヴィナイオータとの取引が始まって1年程ということもあり、私も今回初めてエレナ&パオラに会うことができました。二人とも本当に素敵な人たちで、ボーカという地域の伝統を守るため、亡き父の想いを紡いでいくために、強い想いと大きな覚悟を持ってワイナリーを継いでいたことがよく分かりました。それまで、漠然としたイメージしかなかったコンティという造り手のワインが、大好きな彼女たちの思いが込もった液体に変わる瞬間でした。まだまだ、うちの造り手の中では知らない方も多い造り手になるので、一人でも多くの人に、彼女たちの想いを伝えて行きたいです。(担当:佐藤)

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