【新入荷】2015年10月その4(Vevey,Ezio Cerruti,Alberto Anguissola,Ferrandes)
今回の旅でトライしたいと思っていたことのひとつに、「旅をしながら、新入荷の文章を書く」というのがあったのですが今現在、旅の9割がたを終え、サルデーニャに向かうヴェネツィアの空港でようやく書き始めることができました(笑)。毎日、その瞬間瞬間が濃密すぎる上に、ない脳みそを駆使してイタリア語で自分を表現しなければならず…彼らとの会話の話題がどんどん深く難解になっていることなどもあり、ベッドに辿り着いた途端に電源が切れてしまう毎日です。もう少し余裕を持って旅をする必要があるようですが、いつ実現することやら…。
それでは10月下旬&11月上旬入荷分ワインのご紹介です!
アルベール ヴェヴェイのブラン ド モルジェ エ ル サル2013年が終売しましたので、2014年をリリースします。イタリアに限らず、ヨーロッパ各地には、ヴァルテッリーナやチンクエテッレのような「大昔に、あのような急峻で作業効率の悪い所にわざわざ畑をつくるだなんて、よっぽどワインが好きだったんだなぁ」では、とても説明がつかない生産地域があります。持ちうる限りの叡智を結集し、身の危険を冒し、何年、何十年、いや何百年もかけて開墾をしてきたのは、ワインが生き抜く上でとても大切な食品のひとつだったことを裏付けるものなのではないでしょうか。今回初めて訪れた町、モルジェとル サルも、また違った形でワインが食品であったことを、僕に実感させてくれました。
イタリアを旅していると、時々だだっ広い農地にブドウがひと畝(1列)だけ植えられている光景を見かけることがあります。それが意味することは、農家が自ら自家消費用のワインを造っているということで、そこから類推するに、ある程度の長さがあるひと畝があれば、1年で一家が消費する量を賄えるということ。残りの土地では小麦、ジャガイモ、野菜などや、牛や豚に与える牧草などの飼料を栽培していたのだと思います。(←これもワインが食品であった事を裏づけるもう一つの要因と言えるのでは?)
自家消費用ならいざ知らず、まさか商品としてのワインを生産する現場で、同様の光景を見ることになるとは、想像もしていませんでした。自ら醸造しているかどうかを問わず、ブドウ栽培を生業(の一環)としているのなら、土地を最大限有効活用するためにも、ブドウだけを植え、畑も一か所に密集している方が作業効率も良いでしょうから…。
<ル サルの畑>
写真左、写真奥に小さく写っているのがブドウの畝。 広大な牧草地の中に、2~3畝のブドウが点在しています。これだけ畝と畝の間が空いている畑も珍しく感じますが、牧草や他の作物とブドウを同時に育てようと思ったら、こうなっても不思議ではありませんよね。
ですが、ル サルで見た光景は、牧草地の中に、ブドウが2-3畝ずつぽつんぽつんとあるだけ…。耕作放棄されて、そういう状態になったのかといったらそうではなく、昔からずーっとこんな感じだったというではありませんか。冬の間を集落にある牛舎で過ごした牛は、新緑が芽生える春に放牧され、草の生長に合わせて標高の高い牧草地へと移動し、夏には標高3000mくらいまで登り、雪が降る前までに、草を食べつつ山を降り、その間に集落の近くにある牧草地では冬に備えての牧草の刈込みを2度終え…。今のように流通の発達してなかった昔ならば、牧草だけでなく、穀物、ジャガイモ、野菜なども栽培していたはずで…やはりワインは食品だったんですね!
ここでブランドモルジェにまつわる小話をいくつか。
この土地にブドウを植えたのはローマ人だと言われていて、恐らく様々なブドウを試した結果、芽の出るタイミングが遅く(遅霜を逃れるために有効)、熟すのも早い(雪が降る前に収穫できる)、プリエブランという品種が土着化した。
標高が高く(一番高いところだと1200m)、土地が痩せているモルジェは、ルサルに比べると畑が密集している。畑は斜面にあり、開墾した際にでた石で石壁を作り、小さな段々畑状となっている。地熱をブドウに感じさせるためと、雪で壊れにくくするために、非常に低い棚仕立てとなっている。それに対しルサルはモルジェに比べると標高も低く(900-1000m)、氷河が運んできた肥沃な土が堆積した土地なため、ブドウ以外の作物と混植していた。土地が肥沃なことと、標高が低いこともあり、モルジェよりは棚も高めに仕立てられている。モルジェの畑のブドウがミネラルやテンションをもたらし、ルサルのブドウが収量をある程度約束してくれている。
ブランドモルジェというDOCのブドウ栽培面積は、合わせて20haほどしかなく、畑の所有者は100人以上もいるそう!!バローロの最大のクリュ、ロッケが30ha以上あることなどと比較すると、いかに小さな生産地域なのかが想像していただけるかと。もともと限られた面積で、財産分与を繰り返すうちに農家1軒あたりの栽培面積がどんどん小さくなっていき…それゆえ、大多数の農家はブドウ栽培だけを行い、収穫したブドウは協同組合ワイナリーに納めている。
協同組合ワイナリーができる前、各農家が自ら仕込んでいた時代には、全農家が同じラベルを使用していて、造り手名のところだけが違っていた。
アルベールヴェヴェイは、モルジェでは数少くなった自家生産自家元詰めのワイナリーで、合計して約2haほどの畑(なんと全体の1割!)を持ち、年間6-7000本のワインを生産。畑では無施肥(近くで牛が肥料を勝手に撒いてくれるので…笑)、ボルドー液以外の農薬を使わず、草刈りも全て手作業(刈り払い機は使います!)。醸造面では、基本培養酵母を使用せず(気象条件に恵まれず、質の高くないブドウの時にリスクを避けるために使用)、温度管理をせずに醗酵(する必要がないのでしょうけど…)。条件の整った年にだけ造られるブランドフラーピは、収穫したブドウを高さのないケースに入れ、ワイナリーの外で雨の当たらない環境下で陰干しし、気温の影響でブドウが凍ったのを確認した日の午前中にソフトにプレスし、そのモストで仕込まれたパッシートとアイスワインのハイブリッドワイン。
今回初めて突っ込んだ話できまして、今後は醸造面で色々実験的な試みをしてくれると思います。本当にやってくれたら、僕自身ちゃんと責任取るつもりです(笑)。
2014年は作柄的にもある程度約束された年でしたので、まとまった本数が入ってきていますが、2015年は従来の半分程度しか収穫できなかったそうで、確実に割り当ては減らされると思います。色も個性も濃いめが多いヴィナイオータの白の中では、醤油を通り越してうす塩顔なブランドモルジェもひとつよろしくお願いします!
「何かにトライすれば、失敗することもあるかも知れない。でも、(失敗を恐れて)何もしない奴は、はなから負けている」を座右の銘としているチャーミングすぎる男、エツィオ チェッルーティからも新しいワインが届いています!!!モスカートで造る、軽快だけど単純過ぎない辛口の白、フォルの最新ヴィンテージの2014年が入荷です。軽快だけど単純過ぎない…書くのは簡単ですが、モスカートのようなアロマティックな品種だとこれが難しい!モストだけでステンレスタンクでの醗酵、皮ごとの醗酵など、色々試した結果、エツィオが導き出した答えは、モストを大樽で醗酵熟成させるというもの。雨が多かった2014年は、収穫時の選果なども厳しくせねばならず、当初仕込む予定だった量の半分ほどの生産量で、ブドウの品質的にも難しいと判断して全量を、2酸化硫黄を添加してボトリングしました。生産量の約半分に当たる1800本が届いています。この価格帯の白ワイン品揃えが慢性的に少ない弊社ですので、それほど長くは持たないと思います。お気をつけください!
そして!!!!!!!!スペシャルなワインも届いています!今年の春に訪ねた際、
エツィオ「ヒサト、お前の意見が聞きたいワインがあるんだよ。まずはお前にって思ってたから、まだ誰にも飲ませてないワインなんだ。まずはとりあえず飲んでみてくれよ。」
と言いながら、バリックから注がれたワインを飲んだらビックリ!
オオタ「おおおおおお、貴腐だ!それも多分ほっとんど全部のブドウが貴腐化した雰囲気!そして辛口だし!!!!シュレールのオンクルレオンの2004を彷彿させる感じ。」
エ「そうなんだよ、もろ貴腐なんだ!実はこれ、リースリング。って言っても、リースリング レナーノ(いわゆるリースリング)じゃなくて、リースリング イタリコ(リースリングと名はつくのですが、正確にはリースリングではないらしい品種)なんだ。友達の苗屋にレナーノ頼んだのに、イタリコ納品してきやがってさ…でも友達だし、突っ返すのもなんだからと思ってこの近くの畑に植えたんだけど、今年初めてまともな量が生ったんだ。でも、本業のモスカートの収穫に追われまくっていたら、その存在を完全に忘れちゃってさ。収穫も終わって、ふうって一息ついた時にハッ!って思い出して、見に行ってみたら、もっさりとカビに覆われてて…速攻収穫して、プレスしてバリックぶち込んだのがこのワインってわけ。ヒサト、お前ならこのワインどうする?商品としてボトリングするか、ボトリングの時期、2酸化硫黄入れるかどうか…。」
オ「俺ならもちろんボトリングする。仕込まれてから、まだ半年しか経ってないけど、もうすでにワインとして凄く安定している気がする。念を入れて、夏を軽く体験させてから、無添加でボトリングするとか。」
エ「オッケー、じゃあそれで!で、名前は?」
オ「あーーーーーーっ、それ俺に聞いちゃう????うちの3人目の生まれ年だし、フォル ア ユーキ!(遊生と言います…)で決まりでしょ。」
エ「いいねぇ!じゃあ、バリックひと樽しかないし、俺の分をちょっと残してあとは全部ヒサトが持ってっちゃってよ。」
ピエモンテの言葉で「馬鹿げたこと」「酔狂」を意味するフォルの兄貴分、天日干しモスカート、ソルもよろしくお願いします!06も時と共にほぐれてきていますし、08は甘いのにグビグビです!
僕のフリウリでの専属マネージャーがスタンコ ラディコンなら、彼はエミーリアロマーニャの担当、恐ろしくキッチリしている男、アルベルト アングイッソラからも色々入荷です!まずはカゼビアンコ2014!色はヴィナイオータ的普通に濃いですが軽やか!内容考えたら、安すぎるワインかと。2500本入ってきているので、すぐには無くならないと思いますが…。
借りている高樹齢のバルベーラ&ボナルダで仕込まれる2種類の赤、カゼロッソ&トレヴィーエの2012年が再入荷です。カゼロッソは、地域の伝統に則り、瓶内2次醗酵を促した柔らかな微微発泡ワインなのに対して、トレヴィーエはスティルワイン…なはずだったのですが、アルベルトが最近開けたボトルは3本中3本とも微発泡…もともと若干残糖のあるワインだったのですが、どうやらボトルによっては2次醗酵を起こしたようです…3年近く後にです…まさに自然の神秘!というわけで、ワインの種類的には“微発泡?”ということでご了承ください。(ちなみに到着直後、弊社で開けたものは発泡していませんでした)
あと、トレヴィーエの2013年も入荷しているのですが、名前が「カルカロット」に変わります。こちらも同時にリリースしますが、こちらで確認する限り、微発泡はしていません。
ピノネーロのトップキュベ、リーヴァ デル チリエージョは2012が届いています。若干内向的ではありますが、果実味よりも熟成感を感じる素敵なワインです。
そして実験的に仕込んだワインも入荷しております。2013年、若干早摘みをしたピノ ネーロをプレス、モストだけで醗酵させベースのワインとし、冷凍保存しておいたモストを添加し瓶内2次醗酵をさせたスプマンテで、澱引きをさせずにリリース、その名もハルサメ!!マグナムのみを200本生産、日本には72本入荷。というわけですので、限定ワインとさせていただきます。開ける際ですが、キッチリ冷やすこと(できるなら立てた状態で)、噴くことも想定し、諸々ご準備ください(受けるもの、ボトルを斜めにしてあける事など…)。2014年からは本格的に生産することになったようです。
パンテッレリーア島のフェッランデスからは、パッシート07と去年仕込んだケッパーが再入荷しました。前回瞬殺してしまった干しブドウも、今年は多めにリクエストしておりまして、準備出来次第出荷してもらう予定です。パッシートの次ヴィンテージのボトリング時期は未定だそうで、次回はケッパーと干しブドウのみの入荷となりそうです。ワインの造り手からワインが届かないだなんて、なんか不思議な気分です(笑)。
文:太田 久人
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