造り手紹介 ブレッサン

これは!!!という造り手に出会わない限り、新しい造り手はやらない!と宣言したのは2012年7月でしたが、2013年の春にドメーヌ ド ミロワールに引き続き、取引を決めたのが今回紹介するブレッサンです!!!

取引することになる経緯も、なかなかにヴィナイオータらしいです。毎回タイトなスケジュールな僕のイタリア旅行、この時はフリウリ(ヴェネツィア ジューリア州+スロヴェニア)では2日半で6生産者を周らなければなりませんでした。(造り手との間にある濃い関係性のため、1-2時間でハイさようなら!という訪問ができず、各造り手宅で半日みっちりが基本なんです…笑)
弊社取扱いではありませんが、毎回必ず訪問している、お節介焼かせたらフリウリでも有数のダーリオ プリンチッチが、
「ヒサト、訪ねてもらいたい造り手がいるんだわ。ブレッサンていって、滅茶苦茶な奴なんだけど、ワインは文句なしに美味しいからさ!!日本への新しいインポーターを探しているらしくて、この前一緒にオーストラリアに行った時に色々聞くもんだから、俺とカンティーナ ジャルディーノのアントニオ&ダニエラが、日本でこの手のイタリアワインでベストなインポーターっていったら、そりゃもうヴィナイオータでしょ!!て話をしたら、是非ともお前に会って、話をしたいっていってるんだよ…。ほんと、とりあえず訪ねてくれるだけでいいからさ!!ていうか、もうお前からフルヴィオ(ブレッサン)に電話するって言っちゃってあるんだよね。」
と、もはや断れない状況にしてくれちゃってました(笑)。

もともとフェイスブック上では友達だったこともあり、そのいかつい風体、歯に衣着せぬ発言等は知っていたので、それ相応の覚悟をして行ったつもりだったのですが…想像以上の男でした。
アーミー(もしくは狩猟)系の服装に身を包み、常に咥えタバコ、自然に対する敬意に欠ける農業&醸造を行う近代醸造界に対しての苦言を呈する際は、センテンス間にイタリア語界に存在するありとあらゆるスラングが織り交ぜられ…まさに怒れる熊のような男でした…。最近では、政治的な発言をしたつもりが人種差別的な発言と捉えられてFBで大炎上したりと、トラブルには事欠きません。
日本では、発言が過激だと言われている僕がドン引きするくらいですから、その凄さは容易に想像いただけるかと。

こう書くと、どえらいファンキーなワインを造るように思われるかもしれませんが、会話の流れから、こんなことも言っていました。
「俺にとっての最大の敵は、もはや(ありとあらゆるテクノロジーを駆使する)大手などではなく、むしろ“自然派”を語り、俺からしたら受け入れがたい醸造学的欠陥を持ったワインを、消費者に“ナチュラルに造られたワインだから”と言い訳しながらワインを売っている、“エセ自然派生産者”なのかもしれない。」
この彼の発言の通り、彼のワインは、あくまでもナチュラルな手段を用いて造られているのですが、醸造する過程での数々の“しない”にも科学的根拠、熟慮が払われている事が容易に想像のつく、全く破綻のない端正なものばかりでした(まるで彼の奥さんのように…美女と野獣を地で行くコンビです)。

発言や行動の過激さ、ドラスティックさは、同時に彼自身の覚悟のあらわれでもあるというエピソードを。

2013年に初オーダーをした時、何種類かの白ワインの現行ヴィンテージが2007年だったのですが、その数か月後に再オーダーのメールを出したら、2007年が終売して次ヴィンテージに切り替わる、それも2010年だという…あれ、08と09は?って普通に思いますよね?

秋に訪問した時に聞いてみたところ、

フルヴィオ「ああ。ブドウに納得いかなかったから収穫しなかった。」

僕「収穫しなかった?醸造しなかったじゃなくて???つまり、そのブドウを売りさえしなかったってこと?」

フルヴィオ「そう。もしも俺がそのブドウを誰かに売ったとして、そいつが“ブレッサンのブドウで造ったワインだ”とか言って、ワインがクソ不味かったとしたらどうすんだ?」

天候、気象条件に恵まれず、ブドウの品質が満足いくレベルでなく、その結果普段よりも若干テンションの低いワインだったとしても、農産物から造るのだから当然のことだし、年の個性を反映していると考えられれば、それでいいのでは?と僕は常々思っていますし、そんな難しい年だったとしても、彼ならそこそこ以上の物が出来上がると思うのですが、彼のプロ意識(誠実さ)、アーティストとしての志の高さが、”ブレッサン クオリティ”に達していないブドウでの醸造を許さないのでしょう。
彼の考えに100%は納得&賛同できませんが、それができてしまう、つまり一切の妥協を排除しようとするその姿勢は、本当に尊敬に値するなぁと思いました。

白ワインのラインナップは、単一品種で造られるものが3種類、リボッラ&フリウラーノ&マルヴァジーアの伝統的なブレンドで造られる白の1種類で計4種、栽培が非常に難しいというモスカートローザ(果皮が赤みがかっているマスカットで、完熟してないと独特の苦みがあり、完熟するとブドウの粒が房から外れ落ちてしまうそう。とあるヴィンテージは、そろそろいい感じかなぁと思って収穫しに行ってみると、ブドウは全て地面に落ちていたということもあったそうです!)でロゼワイン、赤ワイン用の品種は、伝統品種スキオペッティーノ(リボッラ ネーラ)とピニョーロ、そして国際的品種としては、メルロー、カベルネ フラン&ソーヴィニョン、ピノ ネーロを栽培し、単一品種で出す時もあれば、いろいろブレンドして醸造することもあり…僕的にはいまだ謎が多いです!!(笑)

見た目もいかつくて、発言も過激だから、中身も粗野かといったら全然そんなことはなく、無茶苦茶知的で、心優しいフルヴィオ、家業を継ぐ前は小児癌の末期の子供たちのセラピストをしていたそうです。

「俺は、500人以上の10歳にも満たない子供たちを看取ってきた。いろいろキツかったし、人生観も大きく変えさせられたよ。なんにせよ、あの仕事のお陰で、神なんて存在しないと確信するに至ったよ。」

「雨が酷く降っていた日があったんだ。そしたら、イェレーナ(彼の奥さん)が、“散々な日ね”なんていうもんだから、俺の元仕事場である病院に彼女を引っ張ってって、子供たちに会わせたんだ。彼女に、こういう事を“散々な”というんだって分かってもらうためにね。帰りの車で、ビービー泣きながら、“フルヴィオ、あんたの言いたいことは分かったけど、なにもここまでしなくても…”って言われたけど、ついカッとなっちゃってよ…。雨は多かれ少なかれ、人にもブドウにも必要なものだろ?それが、自分にとって都合が悪い時に起こったら悪者扱いかい?恵みの雨なんていう時もあるって言うのに…。それに引き換え、あの年齢で命を落としていく子供たちの病への無力さと、彼らに残された時間の重さを考えたら、多少の土砂降りなんざぁ素晴らしい1日だぜ!!!くらいに思わなきゃいけないと思うんだ。」
独特の言語、感性、優しさを持ったフルヴィオ、僕は凄い好きになってしましました!!!

訪問の最中、僕的には受け入れ難い、幾つかの発言にはきつい反論をし、激論を繰り広げたにもかかわらず、僕の帰国を見計らうかのようなタイミングですぐにメールをくれ、
「来てくれて本当にありがとう。お前と知り合いになれて本当に嬉しかった。・・・(新しい造り手との取引にそれほど積極的でないという)事情があることを聞いた上でも、お前にうちのワインを扱ってもらいたいという気持ちを隠すことはとてもできない。とはいえ、仮に答えがNoだったとしても、友達として、フリウリに来た時には是非遊びに来てもらいたい!」
と言ってくるではありませんか!!
ワインも素晴らしくて、ここまで期待してもらえるのなら、やらない理由はない!ということで、取引を始めることに。

彼らのサイトに日本語のページがありまして、そりゃもう徹頭徹尾彼らの理念、想いが書き綴られていますので、ここでは割愛させていただきます。是非一度ご覧になってみてください!

ほんと、熊みたいなやつですが、絶対噛みつきませんので是非いろいろお話ししてみてくださいね!!!

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桜、桑や野生の梨の木の樽など、オークが最良の答えなのかということも常に疑って、いろいろ実験してます

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ブドウ畑の畝が畑だそう(笑)。イタリアンパセリがこれでもか!と芽を出してました…って畑の写真これしか持ってない!!!!!一緒に行った人、誰か頂戴!!!

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生ハムはフルヴィオ父、ネレオ作。絶品です!!!!

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大の愛犬家フルヴィオ

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