ヴィナイオータかわら版 ~酒井編 その三~
皆さま、こんにちは。3度目の登場となります、農業部の酒井 かえでと申します。名前通りの分かりやすく秋生まれということもあり、やっぱりこの季節が一番好きだよなと年を重ねる度に感じています。ヴィナイオータ本社のある茨城は栗の産地ですので、この時期は栗の木からイガが落ち、道端にごろんと転がっています。
今回は、栗にちなんで『Trinchero / Vigna del Noce Castagno 2012』をご紹介できればと思います。
ひとつ栗と言っても、色んな種類があるのをご存知でしょうか?世界で栽培化されている栗の種類は大きく4つに分かれ、和栗、西洋栗、中国栗、アメリカ栗。日本では野生とは思えないような大きな栗の皮が古墳から発掘されていることもあり、古く縄文時代にはもともと野生採集していた栗をすでに半栽培化して主食にしていたのでは、とも言われています。
いわゆる和栗は粒も大きく渋皮がぴったりとくっついていて、味も繊細なのが特徴です。古代ローマ時代から栽培される西洋栗は粒が小さいものの渋皮は取れやすく粉質、イタリアでもローストや粥、ポレンタ、パン、マロングラッセのようなお菓子など、料理としてもひと工夫。栗は主には木材と堅果(ナッツ)として、昔から世界各地の人々の生活に活かされてきました。
木材としての栗の木は、タンニンが豊富なこともあって耐湿性&耐水性に優れ、重硬で強く耐久性も高いため、かつてはお酒の輸送や熟成のための樽用の木材としても重宝されました。ヨーロッパ各地の発掘現場から出土した樽の材質は、紀元前1世紀にはモミや松などの針葉樹でしたが、1世紀にはブナやクリが加わったそう。昔は栗の木樽も多かったようですが、ヤニが多く木が柔らかくなりにくいため、その後流通が進むにつれてオーク樽へと移り変わっていきます。
さて、今回ご紹介するトリンケーロのVigna del Noce 2012には、裏ラベルに小さく書かれた『Castagno(カスターニョ)』の文字が見つけられるかと思います。イタリア語では『栗の木』を意味し、まさに今回のヴィンテージは栗樽での熟成を行っています。
1920年代に植えられたバルべーラが未だに残る高樹齢区画、ヴィーニャ デル ノーチェ。畑とセラーの間に植わっているクルミの樹に由来して、ヴィアノーチェ(くるみ通り)という通り名が付いている道に隣接しているため、区画の名前にもノーチェと付けられています。代々植え続けているバルベーラを大切に守り、長年使っている大樽での長期熟成という伝統的なワインを造り続けるトリンケーロですが、これはという年のヴィーニャ デル ノーチェのみ栗樽で熟成させています。
オークよりも木目の細かい栗樽はゆっくりと熟成することもあり、液体や香りからは柔らかさと滑らかさを感じることができるかと思います。バルベーラらしい酸とタンニン、アルコールのバランスが取れていて、奥ゆかしい深みが全体を包み込んでくれます。抜栓してから3、4日経つと、さらにほぐれて馴染んでいく。例えば、大きな木のそばにいるような、おしゃべりはそんなにしないけれど、内側に宿している多くの経験と時間の経過をそっと教えてくれる、そんなワインです。
樹齢80~90年を優に超えるヴィーニャ デル ノーチェの区画は、寿命や病気の影響で年々ブドウ樹が減ってきており、それゆえ生産量も減っているはずなのですが、なぜか弊社では前回4月の価格改定時にお値段がぐっと下がりましてお手に取っていただきやすくなっています・・・!
秋の木々と果実を感じながら飲んでいただきたい一本、ぜひ試してみてくださいね。
≪酒井の飲んでもらいたいワン紹介≫
銘柄:Vigna del Noce Castagno 2012 / ヴィーニャ デル ノーチェ カスターニョ2012
造り手:Trinchero / トリンケーロ
地域:伊ピエモンテ州
ブドウ:バルベーラ
希望小売価格(税抜) :6,800円