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2010-08-04

パーネヴィーノ、ジャンフランコからのメッセージ その2

Nel 2008…

…PERO’…nospora!, PERO’ poi il caldo…PERO’ la siccita’…PERO’ dopo e piovuto…
Un alternanza di eventi…PERO’ abbiamo vendemmiato, PERO’ poco, PERO’ e nato GIOACCHINO!
PERO’… gratzias a Deus!

パーネヴィーノ的2008年・・・

そもそも花は咲いてくれないし、そこへきてあの暑さ、水不足、かと思えば雨。
次から次へと事件が起こり…とはいえ、どうにか収穫だけはできた。
まあ、ほんのちょっとの量だけど。

でも、でもでも、なんてったって、無事ジョアッキーノ*が生まれた。

神様!感謝します。

*ジョアッキーノは、2008年11月に生まれたジャンフランコの次男の名前。
サノヨーコ訳

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Tankadeddu 2008 タンカデッドゥ
カンノナウ 50%、モーニカ 25%、カリニャーノ 25%
アルコール度数 12.5%

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タンカデッドゥの説明をするのには、まずここから始めないと。ジャンフランコは、Piscinacadeddu(ピシーナカデッドゥ)と呼ばれている区画に畑を持っておりまして、そこには主に、モーニカとカリニャーノが植わっています。南の赤というと、常に高アルコール、果実味バンバンのボリューミーで飲み進まないワインだとステレオタイプ的に認識されてしまうことに異を唱えたかったジャンフランコは、モーニカとカリニャーノという軽やかな品種(カンノナウに比べると糖度が上がらない)を使って、よりカジュアルなワインを造ろうと考えて生まれたのがPiccade(Piscinacadedduを彼なりに聞こえ良く短くして、ピッカデ)というワインになります。

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2007年10月23日頃の、ピッカデの畑

少し変だと思いませんか?

手前には枯葉と若々しい葉っぱをつけたブドウ、その先には葉っぱの枯れた木々、そしてそのまた先には普通に青々している木々が・・・実は8月に山火事があったんです。

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放火現場

サルデーニャは羊やヤギの放牧が盛んでして、餌となる下草を生やさせる為に意図的に放火したりすることがあるそうです。放牧というとのどかなイメージがありますが、こんなことする人がいるとは・・・普通にショックを受けました。

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ブドウ樹そのものは燃えなかったですが、熱風で枯れてしまったブドウは自分が枯れたことで冬が来たと勘違いをしたのですが、実はまだ8月、暑い、春が来たと勘違いして発芽・・・

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枯れてしまった2007年ブドウのそばに、本当は2008年に出るはずだった実もなっちゃって・・・

話は一瞬脱線しますが、2007年の彼のワイン、Ogu(オグ)と言いまして、サルデーニャ語で、”目”、”芽”、”炎”という意味があります。

猛暑や火事などで、オグ(炎)
生命や再生の象徴としてのオグ(芽)
人や樹が、天災(しばしば人災だったりもしますが・・・)に立ち向かうさまを観察している、自然(神?)のオグ(目)

というわけで、

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なのでした。
上記のように、2008年は天候条件的にも厳しく、収量が少なくなった上に、ピッカデの畑は2007年の山火事のせいで、さらに収量が少なくなったのだと思われます。そこで苦肉の策として生まれたのが、本来スキストス、ペルダコッドゥーラ、マリポーザ、オグの2008年度版に使うはずのカンノナウの、樹齢が若い区画(彼の家/ワイナリーもあるペルダコッドゥーラ地区の)のものをブレンドしたものが2008年のポスト・ピッカデ、タンカデッドゥになります。

Tankaはサルデーニャの言葉で、乾式の石壁でできた垣根を指し、ペルダコッドゥーラの彼の畑がまさに石垣で囲われた状態となっています。なので、TankaとPiscinacadedduのdedduでTankadeddu。dedduは、dedduで”赤ちゃん”なども指し、ワインがジャンフランコにとって、子供のような存在だという意味も込めた、言葉遊びとなっています。

届きたてのせいか、開けた直後は豆まめしいですが、2-3日すると素敵な果実が出てきます。1-2ヶ月休ませれば、開けたてから楽しめるワインになるのではないでしょうか。

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Vignevecchie 2008 ヴィーニェヴェッキエ
カンノナウ 50%、残り50%は様々な土着品種(ムリステッル、ニエッドゥ・マンヌ、カニュラーリ、ティンティッルなど)
アルコール度数 14.5%

Skistos2004,Perdacoddura2005,Mariposa2006,Ogu2007の2008年版はVignevecchieという名前になりました。Ogu以前のワインは、カンノナウ主体で、高樹齢の区画のワインと、若い区画のワインをブレンドしたものだったのですが、樹齢の若い区画(カンノナウ)のブドウはタンカデッドゥに使用したため、2008年はヴィーニェヴェッキエ(古樹の畑)という名前でリリースされました。

タンカデッドゥ、ヴィーニェヴェッキエ、どちらのラベルにもPero’という言葉がたくさん書いてありますが、イタリア語で”しかし”の意味でして、一番上の”パーネヴィーノ的2008年・・・”の通り、あまりにも極端な出来事が連続して起こるは、さらにブドウの収量も少なかったということで、ブドウ栽培家兼ワイン生産者的には踏んだり蹴ったりの年だったけど(年だった、pero’)、子供が生まれるという、人生において最も大切なことがあったわけで、とどのつまり素晴らしい年だった・・・。というわけで、Pero’というサブネームのあるワインになったのでした・・・。

ここで一応、他の彼のワインの名前の由来に関して説明しておきます。

2004年のSkistos(スキストス)は、サルデーニャ語で片岩という意味で、初ボトリングする(2003年までは量り売りをしていて、ボトリングはしていませんでした)にあたって、自分のワインのルーツが、サルデーニャはヌッリという土地、そしてその土壌に多く存在する片岩であると表明すべく、こういう名前にし、2005年は、スキストスはスキストスでもワイナリーと畑のあるPerdacoddura(ペルダコッドゥーラ)というより狭い区画、つまりジャンフランコ・マンカという人物によって醸されることを伝えるためにこういった名前にしました。

サルデーニャという島は、スペインの統治下だった時代の方が長いことや、本土へのアクセスの悪さなど、様々な要因により、昔ながらの文化・伝統が残っています。が、その反面、そのアクセスの悪さと、それに伴う本土への高い輸送費などがネックとなり、小規模なワイン生産者が世に現れづらい土地だったりします。ですので今でも、サルデーニャのワインと言えば、大手のワイナリーのものがほとんどとなります。

サルデーニャを代表する赤ワインとして、Tというワインがあります。有名なエノロゴを迎え、最新鋭のテクノロジーを導入、新樽100%で、生産量も少なくない。物凄くタニックで、硬くて、ほぐれるまでには時間がかかるワイン・・・似たようなワインをミニマムの設備、酸化防止剤無添加でも造れる事を証明し、テクノロジーやエノロゴが大事なのではなく、サルデーニャという土地、気候とそこでできるブドウと、それを生かす術を知っている人が重要なのだというメッセージを込めた、ある意味ドンキホーテ的な挑戦状、それがスキストスとペルダコッドゥーラというワインなのです。

2年も自分の目指すところとは異なるワインを造って、もう十分だとジャンフランコは思ったのだと思います。ワインとは食事の友(いや、食事の一部と言うべきかも)であり、飲み心地こそ最も大切な要素だと彼は考えているので、2006年ヴィンテージからは、それまで彼が造ってきたように、抽出を抑えたものとなっています。なかでも2006年は、ブドウを食べた段階で、普段のカンノナウにはない繊細さみたいなものを感じ、例年の彼の土地のカンノナウがマッチョとでも言うのでしょうか、男性的な強さを持ったワインになるのに対して、2006年のブドウを使って、女性的(母性的)な強さを内包したワインを造れないかと考えて、その彼のイメージに合わせて、マセレーションを若干短くしたりしてできたワインがMariposa、マリポーザになります。マリポーザはサルデーニャ語で蝶を意味し、蝶は女性の象徴でもあり、そんなわけで、

こんなラベルになりました(左マリポーザ06、右ペルダコッドゥーラ05)。

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Alvas 2008 アルヴァス
レタッラーダ、ヴェルナッチャ、ヌラーグス、セミナーノ、ヴェルメンティーノ、マルヴァジーア、ナスコ
アルコール度数 12.5%

ジャンフランコの言葉を借りるなら、白に女装をした赤ワイン。

使用されている品種の1つ、マルヴァジーア(Malvasia)の中を取ってAlvas。同時にAlvasはサルデーニャ語で白を意味します。沢山の品種が使われているので、酵母、酵素、そしてバクテリアもいろいろな種類がいたほうが醗酵が円滑に進むと考え、屋外、コルクの木の下で醗酵を始めます。屋外で始めるのにはもうひとつ理由があるそうで、彼曰く、”ただでさえ沢山の品種が一緒くたになるわけで、人だってそういう状況って大変じゃん?だから、できるだけ彼らに精神的ショックを与えないために、生まれ育った環境に近い温度や光量で醗酵を始めてあげたらいいかなぁと思って”とのこと・・・。そして醗酵の最中、醗酵槽ごと”風邪をひかせないよう”に、徐々に温度帯の低い、光も空気(の循環)もない所(まずはセラー入り口付近に、そして徐々に内部へと・・・)へと運び込み、18日間のマセレーション後、圧搾し、ダミジャーナで熟成、ボトリング。

2007年がより”太陽”や”熱”を感じさせるワインなのに対して、2008年は香り、色、味わいどれをとってもエレガント。

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Girotondo 2007,2008 ジロトンド
ジロ 90%、モスカート 10%
アルコール度数 16-17%

ジロはスペインから来たといわれている黒ブドウ品種で、主に酒精強化した甘口のワインに仕込まれます。当然のことながらジャンフランコは、一切の酒精強化を行わず、醗酵をコントロールしたりもしないので、甘味のほとんどないワインに仕上がっています。2007年が17%で、2008年が16%。

ズバリ大人のワインです。

とんでもなく長くなっちゃいました・・・。

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