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2023-05-21

ヴィナイオッティマーナ2022【造り手セミナー】ラ カステッラーダ


①セミナー動画 (質問コーナー|03:48~)

ヴィナイオッティマーナ2022 ピリオド3 DAY1に行われたセミナー動画です。
今回来日しました、フリウリの偉大な造り手 ラ・カステッラーダからはニーコと次男のマッテオです。
イタリアの北東部、スロベニアの国境近くに位置する、フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州 ゴリツィアのオスラヴィアにあります。ご近所には、グラヴネルやラディコン、ちょっと離れたところでビアンカーラなど、刺激し合える相手にも恵まれ、造り手の思いを最大限に反映したワインを目指しています。
ワイナリーは、ニーコのお父さんが経営していた、レストラン用に仕込んだワインを、ニーコとジョルジョ兄弟が引き継ぎ1985年にボトリングを開始します。自然環境や生態系に悪い影響が出ない様に有機農法を実践、 出来る限り手を加えず土着品種の、リボッラ・ジャッラを始め、複数のブドウを栽培しており、これらのブドウを使って、単一品種のワインや、ブレンドしたワインを造っています。
オスラヴィアの他の造り手、グラヴネルやラディコンと似たような品種、造り方をしていますが、いわゆるオレンジワインらしくない、白ワインとの差をあまり感じさせない、オレンジワインの入門編のような、エレガンスなスタイルを貫いています。

②造り手紹介 (00:22~)

ラ カステッラーダの造り手紹介、詳しくはこちらから。

③造り手への質問と回答

Q.1 フリウリの他の生産者は、90年代~2000年代にかけて、新樽や素焼きの壺を使ったりと色々な事をやっていた中で、ラ・カステッラーダはシンプルな醸造方法を貫いてきた理由は?(3:48~)

A.1 とある時代に採用した選択が、間違っていると感じたところや、ちょっと違うと思うことを修正して今に至っています。
本来ブドウの持つ美しさみたいなものを表現するのに、やるべき事はあまりないと思います。ただ、私たちの年代、自分の弟やヨスコグラブナーは、いわゆる農学校と言われるところに通ったが、そこで教わった事は、ブドウ栽培よりも、牛の飼い方など生活の密接したことでした。当時はワインが生活を支えるほどの大きな役割を果たすとみなされていなかった時代でした。
一家代々でやっていたことをなんとなく、なぜそうするのかよく知らずに、見様見まねで農業をやっていたがゆえに、逆に自分たちが、自分たちで考えてやることができたと思います。
新樽の導入に関しても、世界の流れにのってやってみようとしたが、自分たちがやろうとしていることは、他者がまねできないことであり、そのようなものは必要ではないことだと後から気付きました。
ワイン造りが生業として、生活を成り立たせることが出来るようになったのは、ここ数十年のことです。

Q2. リリース年度の決め方について、2007のシャルドネがすごくおいしくて、なかなか飲めなくて、自宅に何本か寝かせているのですが、飲んでほしいタイミングでリリースしているのか、それとも、もっと寝かせた方がよいのか、飲むタイミングは自分で決めて欲しいと思っているのか、どのタイミングでリリースを決めているのですか?(11:21~)

A2. 飲み頃とかは、非常に難しいと思います。結局人が決めるというよりも、ワインそれぞれのリズムでワインが決めればいいのではと思ってます。
酸素をたくさん取り込んでしまって、良い感じの熟成しすぎた状態というよりも、その手前のものをリリースしたいと思っています。ですが、すぐに飲んでももう飲めるよね。と思うものをリリースするようには心掛けています。

実際、リリースしてから、1年とか2年したら十分に表現力があるレベルになるつもりでリリースしています。繰り返しになりますが、各ヴィンテージに個性(性格)が備わっているので、おおよそ何年というよりも、各ヴィンテージなりの性格(個性)によって開くタイミングは変わってくるので、ワインが決めるべきだと私は思います。
個人的な意見として、濁ったワインは好きではありません。ノンフィルターでボトリングしているが、ワインがしっかり発酵しきった状態、澱が沈んだ段階で、ボトリングしたいと思っています。そのためには、時間をかけて待つしかないので、ある程度寝かしたものを瓶詰めせざるを得ないという事情もあります。

Q3.自分たちのワインで、食卓でよく飲むワインは?また、普段の食事の中で、どのような物に合わせていますか?(17:33~)

A.3 妻(バレンティーナ)は、少ししか飲みません。私は結構飲むのですが、息子(マッテオ)は全体の調和(正気)保つために、基本飲みません、特に、昼は午後の仕事もあるし、真面目なので飲みませんね。
というわけなので、三人のなかでは、私しか飲みません。当然、自分の好み、その時の気分で選びます。
では、どのような物かといえば、比較的古いヴィンテージのワインを飲む事が多いです。古いヴィンテージのときは、みんなであーでもないこーでもないと言いながら飲みます。開けたワインに対して、シニカルな事を私が言うと、妻が、まあまあ、明日また飲んでみたら、なんて、喧喧囂囂としながら、次の日、飲んでみると、妻の言う通り良い感じになっていることもあります。
こんなこともあり、自分たちの造ったワインですが、その中で、進化とか、熟成すべて分かっている訳ではなく、新しい発見や驚きを語らうのが楽しいと思います。何の食事に合わせるか、という考え方ではなく、その時食べるているものでいいと思います。

Q4.ヴィナイオータは、自社倉庫にすべてのワインを入荷し、検品しながら出荷をしています。そんな中、ラベルが貼られてない、ワインが半分しか入ってない、キャップシールはあるけどコルクが入ってない、などなど、他の造り手では色々なパターンのミスがあります。しかしラ・カステッラーダのワインは不良なものがほぼ無いのですが、それはなぜですか? (22:34~)

A.4. 私自身も比較的、生真面目な性格ですが、息子のマッテオはさらに輪をかけて生真面目な事もあるので、不良ボトルとかが無いのはマッテオのおかげだと思います。
コルクがない状態というのは、うちではあり得ません。なぜなら、打栓して、ラベルもキャップもない状態で横に寝かし最低1年は熟成してからラベルを貼り、リリースしているためです。もし、コルクが入ってない場合、中身がこぼれてしまいますからね。
注文が入り出荷するとなったら、寝かせている場所から取り出し、1本1本、ボトルをタオルで拭いて、キャップをします。
ラベルに関しては、最近導入した機械で貼っています。が、たまに二重に貼られたのも出る時がありますが、その様なものは箱には入れず除けています。不良のものは、自分たちで飲む用に使います。
1本1本箱に詰める所まで、最大限の注意を払っているので、不良のものが起こらないのかなと思います。

以前使っていたラベルの紙の質感が好きだったのですが、ラベルの裏にシールを貼り付けてくれる業者が見つからなかったため、ちょっと前までは、ラベルは手張りでやっていました。今は、そこまでやりきれなくなったので、当時のラベルの写真を印刷してもらっているので、昔とは多少ラベルの質感は変わっているのも破れなどが減った要因の1つであると思います。

Q5. 息子さん達と、一緒にお仕事されておりますが、どうですか?また、マッテオさんはお父様とお仕事されておりますが、どうですか?(28:38~)

A.5.マッテオ→まあ大変です、親子で働くというのは大変です。仕事をしている時は、親子の関係というよりも、仕事上の関係となります。
仕事を離れると、親子の関係に戻るのですが、こんな感じの父という事もあるので、まあ大変です。ですが、当然のことながら、情熱とか、残して伝えていく事の大切さとかに関しては、徐々に受け取っているのかなとは思っています。
ニーコ→世代間のギャップとでもいうのでしょうか、、自分みたいな老人は、年を取って行けば行くだけ、古めかしい存在になっていきますし、逆に若い世代の子たちは仕事に楽しさを見出せば見出すほど、色んな事をやってみたいとか、欲みたいなものが出てくるものです。
自分はワインを造ってきてそれなりに経験がある、その経験から、子供達のやることをみている訳ですが、息子たちがやりたいと言ってる事を、すでに昔やっていてあまり良い結果にならなった事があり、お勧めしないと言ったとしても、言えば言うほどやりたがる訳です。
結果上手くいかなくても、責めてはいけないという事もあります。良い悪いは別にして試行錯誤を繰り返しながら、下の世代に受け継がれていくのではないでしょか。3歩進んで2歩下がるみたいな感じですかね。フランスの言葉を借りて言えば「C’est(セ・) la(ラ) vie(ヴィ).」:それが人生! とでも言えばいいでしょうか。

Q.6 お二人にお聞きしたいのですが、ワインを造るにあたって、畑だったり、醸造だったり、日本に来て試飲会でワインの紹介をしたりと、色々な仕事がある訳ですが、そのなかで、一番幸せ、好きだなとを感じる瞬間はどのような仕事でしょうか。(33:52~)

A6. ワインを造るにあたって色々な仕事がありますが、どんな仕事であれこの仕事を楽しめないようなら、この仕事はやめてしまった方がいいと思います。
すべての工程があって、ワインが出来上がります。剪定に関していえば、1か月~1か月半くらいは、ほぼ同じ様な作業をすることになります。ややうんざりする事もあります。でも、当然やらないと次の年の良いシーズンは迎えられなわけですので、やらないといけない時はやります。
もし、うざったいなぁと思って、剪定するために人を雇ったとしても、自分のやり方と違って、イライラするぐらいなら、自分でやった方がよい、と感じる場面は多くある仕事なので、なるべく自分たちでやりたいと思っています。傲りかもしれないですが、自分たちでなければできないと思っている部分はあります。
剪定も繰り返しの作業の一つになりますが、それ以外で、最も気分が沈む工程を1つ挙げるとするなら、ボトリング前の作業です。
ワインを澱引きする為に、タンクからタンクに移したり、それから、ボトリングするワインに対して、ボトルの数が足りているのか、とかコルクがちゃんと届いているのか、とかコルクの状態が問題ないか、とか、ボトリングの機械のネジが外れてたり、壊れていないか、など、やってみないと何が起こるかわからない、ハプニングが一番起きやすい工程なので、自分たちの仕事のなかでは、やりたくない仕事ですね。
それ以外の事に関しては、基本的に楽しむことができます。

④まとめ

ニーコさんとマッテオさんは、イタリア人なのに(勝手な偏見)、非常に真面目で寡黙な印象を受けました。当たり前ですが、こんなイタリア人もいるんだなと、改めて知ることができました。
直接、お話を伺う中でたくさんの驚きがありました。特に出荷前に1本1本手作業でボトルを拭いているというのには、大変驚きました。醸造から出荷するまで、細心の注意を払っていて、そのような人柄がワインに通じる部分があり、納得することができました。とても手間をかけて日本に届けてくれていると思いました。(担当:宮内)

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