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2024-03-26

ヴィナイオッティマーナ2024【造り手セミナー】デ フェルモ



①造り手紹介 (00:00~)

デフェルモの当主ステーファノがイタリアのアブルッツォ州より初来日です!
まずはワイナリーの紹介ですが、ヴィナイオータとの取引は2018年から、イタリア中部のアブルッツォ州、アドリア海に面しているペスカーラから西に30km程、海抜320mの所にワイナリーを構えています。

弁護士として働いていたステーファノですが、とある週末、彼女の実家のあるアブルッツォを始めて訪ねます。すると、美しい土地に魅了されてしまったステーファノ、しかも一族が広大な敷地を所有していることが発覚します。

そんなことから、2008年より奥様の実家で1haの畑を借りてブドウを栽培し始めたのですが、理想とするセラーを造るためには莫大な費用がかかるため半ば諦めて、栽培したブドウは売却していました。

ある日、妻の実家の建物の一つで、誰も中を見たことがなかった扉の鍵を受け取り、54年振りにその扉が開けられると、中にはなんと昔のワインセラーがあったのです!調べてみると1955年に醸造をやめるまで、デ フェルモ家がこの場所でワインを造っていたことが判明したのです!

セラーを発見した翌年、2010年より5トンのモンテプルチャーノを上手したところから本格的なワイナリーとしての活動が始まりました。ワイン以外にも豆や穀物、オリーヴオイルなどをビオディナミ農法で栽培しており、自分達で家畜の糞を堆肥化したりと循環農法を行っています。

②造り手への質問と回答

Q1. 奥さまの実家が広大な敷地を所有していることや、開かずの間にセラーがあったことなど、まるで映画のような話ですが、それらは全部本当のことなんでしょうか(4:36~)

A1. 映画のようだと言われるのはもっともだと思いますが、全部、本当のことです。だだ、それは私にだけ特別なことが起きたというよりも、そういった運命だとか偶然といったことは、多かれ少なかれ皆さんの人生にもあるかと思います。
そういったラッキーなことや、運命的なことが起きたときにそれに対して感謝の気持ちが持てるのかどうか?であったり、起こったことに対してどのように行動するかが人それぞれなんだと思います。たしかに私におきたことは映画のようなレベルのことであったことは間違いありません。
 私が扉を開けたセラーは60年間開かずの扉だったらしいのです。60年ほど前までは一族でワインを造っていたわけですが、どのような理由かは不明ですがワイン造りはやめてしまって、何世代は経過しているわけですがその間に、その扉の奥のことは全く知らない人ばかりになってしまっていたのだと思います。
 そして私がその扉を60年ぶりに開けることになるのですが、このセラーは扉を開けてくれる人を待ち続けていたのだと思います。建物というものはある意味生き物のようなもので、情熱を持ってその場所に魂を吹き込んでくれる人、ワイナリーはブドウを醸す場所であるわけですが、それを情熱を持ってやってくれる人を待ち続けていたんじゃないか?そこへ私が現れた。ということなんじゃないかと思うのです。
 
 扉を開けたのは2007年のことなのですが、この時の瞬間は今でも鮮明に覚えていて、今でもその写真を見るとザーと鳥肌が立つのですが、私は偶然というものはなくて、あの時は、何かが自分をそこへ連れてこられたような、全てが繋がったような感覚になりました。もともと、食べることが大好きで、妻の実家でビオディナミでブドウ栽培や、オリーブオイルなどを作り始めていたころで、ある日扉を開けたらセラーがあるわけです。ああ、これは私にワインを造れって言われているんだな。と感じました。

Q2. 170ヘクタールという広大な敷地でブドウや、オリーブオイル、豆や穀物を作られているそうですが、スタッフは何人でやってらっしゃるのでしょうか?(12:56~)

A2. ワイナリー説明でもありましたが、最初は1ヘクタールのブドウ畑を義理の親から借りて始めました。その時はもちろん一人でやっていました。今は家の持つ170ヘクタールのすべての土地を管理しています。フルタイムで働いてくれるスタッフは10人です。あとは、ブドウやオリーブの収穫期などの忙しい時のみのパートタイムを10人くらい雇っています。この時期は、いくら人がいても足りないので、この会場くらいの方がいらっしゃると私もとても助かります。ぜひ、手伝いに来てください(笑)
 この土地で私が仕事を始めて15年ほど経ちまして、一番最初に手伝ってくれた人たちは60代~70代の人が中心で、余生のお小遣い稼ぎ程度で仕事をお願いするような状況だったのです。ただ、今はありがたいことに平均すると30代の人が中心メンバーとなるようなチーム作りができていて、農場というか会社であるわけですが、ある種の若い世代のコミュニティのようなものができていて、自分としても嬉しいし、とても満足しています。
 あとは、フルタイムの10人でやらない仕事もあって、それは外注をしています。小麦の収穫などは、巨大なコンバインで収穫をするわけですが、そのような大きな機械を使わないといけない作業は外注をするのですが、それ以外は基本的にはこの10人のメンバーで回しています。

Q3. ビオディナミで農業を行い様々な食品を作られているということで、クオリティの非常に高いものを目指していらっしゃるようにお見受けしますが、ワインづくりや農業でご自身が大切にしていることはどういったことがありますでしょうか(19:20~)

A3. 経済的な採算面から言えば、ワインだけを造っていた方が楽です。逆に小麦のようなもので採算を採るのは非常に難しいと感じています。ただ、ブドウだけを栽培してワインだけを造るというのは、農業をする上で不十分なんじゃないかと考えています。

ワインを造ってお金を得て、そのお金で食べ物を購入すればいいのかもと思いますが、もしもお金のことを考えないとすると、私たちは、ワインだけで生きているわけではありません。パンも食べるし、パスタも食べる。オリーブオイルや野菜も必要です。生きる上で必要なものを少しずつでもいいので自分たちで作る。それが農業というものだと思います。
いわゆるクオリティワインと言われるような、そういう世界の話をするならば、いいブドウを栽培して、いいワインを造ってということだけをしていくと、ヴィニュロンと呼ばれるような存在になって、まつりあげられてしまい、どんどん地に足がつかない状況になってしまうと思います。私は、そういうふうになりたいと思わないし、地に足をつけた仕事をしていきたいと思ったときに、自戒も込めてブドウ以外のものも栽培して複合的な農業をやっていくことが必要だと考えています。

農法に関しても私がやっているのが仮にバイオダイナミクス農法と言われるものだとして、ただ、それは栽培法であるとか手法(メソッド)で語られることが多いのですけど、私は、自分がどうありたいかであったり、自分が大地を間借りして農業をやるときに、自然とどのようにコンタクトを取りたいか?と思ったときに、ある種のスピリチャルなマインドというか、親和性というか、自分の精神のあり方として、そのような方法を選ばさせているのだと思います。

Q4.(会場からの質問)170ヘクタールの農場をやっていらっしゃるということでとても驚いたのですが、そこで生産されるものについての価値を伝えるのは、つまり買ってくれる人を見つけるのは、同じくらい大変なことだと思いますが、どうされていますか?(29:10~)

A4. ワインでお話しますと、じゃあボトリングした瞬間に自分の仕事は終わりかと言うとそんな訳はないですよね。おっしゃる通りでして、製品化して販売するところまでが仕事かというとそんなことはなくて、当然のことながら、その意味や価値を伝えること。つまり、先ほどは偶然とか運命のお話をしたところですが、これも同じような話で、私がヒサトに出会ったことも偶然ではないと思っています。ヴィナイオータのスタッフがデフェルモがどのようなことをやっているのか伝えてくれているのでしょう。
逆に、消費者レベルの方たちでも、私たちの生き方やプロジェクトにちゃんと反応してくれる方々がいらっしゃって、当然、ここにいらっしゃる皆さんもそうだと思うのですが、一定の高いレベルでの好奇心や注意をはらっている人たちが、さらに他の方に伝えてくれる。また、世代を超えて子供に伝えていってくれる。そう考えますと、この仕事には終わりはないんですね。

③まとめ

実を言いますと、今回のセミナー担当が、当日体調を崩してしまい、急遽、私がピンチヒッターで打席にはいったので、事前に打ち合わせができず申し訳ないとステファーノに伝えたところ、「心配ない。大丈夫だよ。」と優しい笑みを浮かべて握手をしてくれました。
1ヘクタールのブドウ園から始めた農園ももう170ヘクタール。10人以上の若者を雇用するジェントルマン、ステファーノが見ている先は、世代を超えて大事にすべきことは何なのか?を見据えています。ワインだけでなく、彼らの取り組み全体を今後も見ていただき、パスタやオイルなどもお使いいただくと食卓の楽しみも増えるのかもしれません。(桑原)

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