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2022-08-02

ヴィナイオータ かわら版 ~水野編その七~

久しぶりにかわら版がまわってきました。何を書こうかと悩んでいたのですが、ここ数日、モヤモヤと考えていたことがありましたので、まずはそのことに少し触れたいと思います。

最近、『ナチュラルワイン』という言葉を見かけることが多くなったように思います。まるで、ナチュラルとそうでないものを二分するかのような言葉。この言葉は一体何を指しているのでしょうか。

化学肥料や農薬を使用していないこと、培養酵母を使用していないこと、亜硫酸を使用しない、または最低量の使用に抑えていること、、、私は、造り手が畑で除草剤を使用することも、培養酵母を使用することも、ワイン造りにおける選択肢の一つでしかなく、その選択肢単体でワインを分類してしまうのは危険なことのように思います。

人の介入なしではワインは生まれません。大切なことは造り手が、数多ある選択肢の中から何を選んで(何を考えて)ワインを造ったか。そして目の前にある液体が素晴らしいかどうかではないでしょうか。年によって状況が異なれば、例年以上に人為的な介入をしなければならないこともありますし、その逆もあることでしょう。その場合、ある年は『ナチュラルワイン』で、ある年はそうではないものとなるのでしょうか。考えれば考えるほど、『ナチュラルワイン』はただの言葉でしかなく、その言葉を信じすぎることで、見えなくなってしまうものは多いように思います。

しかし、ここまで偉そうなことを書いておきながら、私はなるべく人の介入を少なくしたワイン(生産者)のことを贔屓してしまいがちです。それは農薬や培養酵母などの人為的な介入を行わない、もしくは最小限に抑えることは、葡萄(ワイン)に膨大な時間をかけて世話をしても、場合によっては収量の激減や、ワインとして売れないものになってしまうリスクを常に孕んでいる為です。

私はこのリスクを背負ってでも、自らのワインを造る『人』に尊敬の念を抱かずにはいられないのです。そして、今回紹介するのは、そんな尊敬する生産者の造るワインです。

【Luigi Tecce / Taurasi Poliphemo 2013&Taurasi Ris. Puro Sangue 2013】

ルイージ テッチェの造る、二つのタウラージ。その裏ラベルには造り手の矜持ともいえる、強い意志表示があります。

培養酵母の使用 NO
酵素の使用 NO
乳酸菌の使用 NO
タンニンの追加 NO
除酸 NO
清澄 NO
濾過 NO
アラビアガムの使用 NO

アラビアガムを除き、表示義務のない項目を敢えて表記しているのは、これらを行ったものは自分のワインではないという主張であるとともに、ある種の覚悟を示すものであるように思えます。

2017年は酷暑の影響もあり、醗酵がスムーズに行われず、仕込まれた全てのワインが揮発酸の発生により、全量廃棄となる直前でした。(太田の提案により、オルフェオとしてリリースされました。)

その年の全てが無に帰すと言っても過言ではないこの状況に、彼は言葉では表せない程失望したに違いありません。しかし、そんな経験をしても揺るぎない矜持が、彼の造るワインをより色濃く輝かせ、私を魅了してやまないのです。

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ポリフェーモは樹齢85年程の、この地域の伝統的な仕立て(ラッジエラ アヴェリッネーゼ)の畑。古樹由来の、凝縮感とスケールの大きさを感じます。

対して、プーロ サングエは樹齢15年程の比較的若い畑。ルイージ自身が開墾、植樹し、より凝縮したブドウを産することに主眼を置いてコルドーネ スペロナートで仕立てています。こちらは凝縮感の中に若々しさを感じるフレッシュな果実と、がっしりとした骨格を感じさせる酸が特徴的です。

どちらのワインからも圧倒的な凝縮感と野趣あふれる香りが感じられます。素朴でいて、洗練された印象を感じる、相反する要素を持ち合わせた液体。どちらも間違いなくタウラージを代表するワインの一つで、飲み手の心に何かを感じさせる力が宿っています。

それぞれ1.5ha程度の畑から生まれる貴重なワイン。大切に飲んでいただけると幸いです。

 

≪水野の飲んでもらいたいワイン紹介≫
銘柄:Taurasi Poliphemo 2013 & Taurasi Ris. Puro Sangue 2013 / タウラージ ポリフェーモ2013 &タウラージ リゼルヴァ プーロ サングエ2013
造り手:Luigi Tecce / ルイージ テッチェ
地域:伊 カンパニア州
ブドウ:アリアーニコ
希望小売価格(税抜):7,200円

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