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2018-07-03

【新入荷】2018年7月 その1(Davide Spillare、Podere Le Boncie、Barbacarlo、Ezio Cerruti)

出張に出ると当然のことながら色々な方に出会うわけですが、中にはオータ(ヴィナイオータ)の仕事に対して多大なる敬意を払っていることを表明してくださる方もいて、非常に光栄な気分になる一方で、オータに対して敬意を通り越して恐れ(怖れ?)のようなものを感じている方も時々いらっしゃり、少々戸惑ってしまう事があります。立場上、自身の考えを披瀝する場面も多いですし、駆使する言葉もストレートだから(口が悪い?)なのか、達観しているかのように思われ過ぎてしまっている気が…。

コンプレックスをそこそこに持ち合わせ、それを無意識下で反骨心みたいなものに変えつつ僕は生きてきたのだと思うのですが、無いものねだりや他者と比較することに何の意味もないという自明なことを、そのコンプレックスのおかげで強く認識できたというのはあるのかもしれません。変な例えになりますが、オータはオータの人生を通してオータだけが登ることができる“オータ山”という山の頂を目指しているだけで、オータが今いる場所が標高何m(=他者から見てそれが高いのか低いのか)で、それは何合目(=どの程度成し遂げたのか)にあたるのかも、生きている間に山頂に到達できるか否かも、そしてその山自体の高さもさして重要ではなく、登り続ける(挑み続ける)という行為だけに意味があると、とある日思い至ったのかと。

自然という予測不能で予定調和の存在しない、とてつもなく高い山に敢然と立ち向かう登山家(造り手)たちの近くに身を置く上に、困難に直面することに対して基本的にポジティブで、リスクを愛してやまない僕自身の性格性向も相まって、過激な登山ルートを選びがちというのはあるかもしれません(笑)。選んだルートが困難であればあるほど、1回目のトライで成功することなどまずありえませんし、攻略法をありとあらゆる角度から検討しなければいけませんので、結果として人一倍失敗し、いっぱい考えてきたのだと思います。

ヴィナイオータに関しても、業界で働いた経験どころか社会人経験もない状態で立ち上げた会社ですから、最初から上手にできた事も良い結果など出たこともないのが当たり前という状況の中、暗中模索&無我夢中でやってきただけなので、仮にヴィナイオータが今できているように思われていることに対して“その秘訣は?”と聞かれても、“数々の試行錯誤と失敗の賜物”としか答えられないんですよね(笑)。

そんな未だ登山途中なオータですが、“一切失敗せずに登山に成功する方法”など存在しないこと、“千里の道も一歩から”ではありませんが登り続けなければ目標の標高(合目)に到達することは絶対にできない事、自分の足で自らの決めたルートで進むから登山は楽しいのだという事、そして何回もの失敗の末の成功だからこそ喜びもひとしおなのだという、自明なはずなのにとかく忘れがちな事を今後も熱苦しくお伝えすることで、1人でも多くの人が“人生”という名の、その人しか楽しむことのできない山の登山に積極的に挑んでくれるようになれば良いなぁと思ってみたり…。

なんのこっちゃ?って感じのイントロになってしまいましたが、次回はそんな風に熱苦しくやってきたことによる余波と、その余波に対して感じている責任という話をさせていただく予定です…。

それでは7月最初の新入荷案内行きます!

昨今は人としても醸すワインも進境著しい感のあるダヴィデ スピッラレのワインが届いております!
他者のワインに対してネガティブなことは絶対口にはしないけど、絶賛することも滅多にないあのパオロ ヴォドピーヴェッツが「ダヴィデの2016年のワインは本当に美味しい。いや、本当に美味しいよ…。」と相変わらずの射るような眼光で言っていたので、後日そのことをダヴィデに伝えたのですが、胸に手を当てて深々とお辞儀をしていました(笑)。

2015年に引き続き2016年も、素晴らしい品質のブドウに恵まれ、ワインも非常に素直、もうサクサク行けちゃう感じです。ヴェッキエ ヴィーニェ2016だけ限定ワインとさせていただきます。余談ですが、2016ヴィンテージからラベルも一新、前よりも少しだけ垢抜けました(笑)。

それと、セラーに残っていたビアンコ ルーゴリとロッソ ジャローニの2015年も少々届きました。そこそこな本数が入荷しているのですが、一瞬で終わることが予想されます。ご注意ください!

改めまして各ワインのご紹介をしますと…。
L1(エッレ ウーノ):ガルガーネガ95%、ドゥレッラ5%の微発泡性ワイン。瓶内2次醗酵を促すための糖分として陰干ししたガルガーネガのモストを使用、酵母添加も一切行わない。
医療界(?)的にはL1は腰の第1椎骨を指すようで、このワインを初醸造した年にトラクター事故を起こし、椎骨を骨折、一歩間違えば…という目に遭ったダヴィデ、自戒の意味を込めてこの名前にしたそう(笑)。750mlと1.5L(マグナム)が届いております!

ビアンコ クレスタン:平地の畑で収穫されたガルガーネガを使用。モストだけの状態で、ステンレスタンクで醗酵。

ビアンコ ルーゴリ:丘陵地帯にある畑のガルガーネガ。7割はモストだけの状態でステンレスタンクにて醗酵熟成、残り3割は5日間の皮ごとの醸し醗酵、木樽で約10カ月間醗酵&熟成、それらをブレンドした後にボトリング。

ヴェッキエ ヴィーニェ:ダヴィデのお祖父さんが植えた、樹齢60年超の畑のガルガーネガ。5日間の皮ごとの醸し醗酵、木樽で約10カ月間醗酵&熟成。

ロッソ ジャローニ:主に平地の畑で獲れたメルローを使用。

トスカーナのレ ボンチエからも新しいヴィンテージのワインが入荷です!
2006ヴィンテージから造られるようになったトラーメの妹分的存在の5(チンクエ)ですが、今回入荷の2015年でなんと10ヴィンテージ目…。「トラーメにするにはギリギリ落第(10段階評価で5)」という、鬼母ジョヴァンナ(笑)からの命名にもめげることなかった、素直で健やかな子です。
2015年は太陽に恵まれた年だったということもあり、より外向的な性格となっています。

に対して、母似なのか美しくも若干神経質なところのある姉トラーメは2014年が届いています。
夏の酷暑&乾燥に苦しむことの多いジョヴァンナの畑ですが、雨が多いことはさほどのストレスにならないようで、2014年という雨がちな年であっても、品質的にも収量的にもそれほど問題がなかったそうです。2014ヴィンテージは、例年以上に凛とした雰囲気のある子かと。どちらも十分な本数が入荷しておりますので、ジャンジャンお使いくださいませ!!

ついにこの日が来てしまいました…。戦う農民にして愛すべき頑固じじい、リーノ マーガ翁率いるバルバカルロのワインが、昨今の各種マテリアルのコスト高と何年も続いているブドウ不作による減産を受けて、現行ヴィンテージだけでなくバックヴィンテージものも大幅な値上げが2018年からされることに!!!!!

実は…数年前から、現行ヴィンテージの値上げは進んでいたんです。ヴィナイオータが初めて取引した2003ヴィンテージと今年購入することになる2016ヴィンテージでは1.5~2倍ほどの価格差があるのではないでしょうか。場所によっては直立の状態では登ることができないくらいの斜度があり、天候に恵まれた年であってもわずかなブドウしか収穫のできない畑から生まれるワインとしては、もともとが安すぎたのだと思います。

「偉大なヴィンテージはすぐに売り切れる。そうでないヴィンテージが売れ残るのは、消費者がちゃんとワインのクオリティを見極める事ができる証だ。」とリーノは言い、どんなに古いヴィンテージでも値上げをしてこなかったため、現行よりも20年以上古いワインの方が圧倒的に安いというようなウルトラ逆転現象が起こっていました。で、弊社としては現行ヴィンテージをド赤字な値付けにする代わりに、バックヴィンテージで少し厚めな利益を頂くという手法を採っていたのですが、もうそれも叶わなくなりました…。

2年前までは、もっとバックヴィンテージの在庫があったはずなのですが、今回のオーダーのために在庫状況を確認してみると、終わってしまったヴィンテージもちらほら…。現行ヴィンテージの極端な減産と、もしかしたらようやく時代がリーノに追いついたのか、彼のワインへの引き合いが途端に強くなり、一気に売れていったのかもしれません…。

世界が彼のワインを正当に評価してくれるようになったのならば、それは僕にとっても非常に喜ばしいことなのですが、最終消費者のことを考えると、ドラスティックな値上げは非常に心苦しくもあり…。

現在販売中のバルバカルロ1996,2000,2011,2012、モンテブオーノ1996,2011,2012の中で再入荷予定があるのは2012の2ワインだけで、他にも古いヴィンテージが色々入荷するのですが、今までお出ししていた価格の何割増しかになることは避けられません。

というわけですので皆さん、お急ぎください!どれも在庫薄になってきています!!

でも、新価格になってもバルバカルロを見捨てないでくださいね(笑)。
見捨てられた暁には、既に社運を賭けた仕入れをしちゃっているヴィナイオータの運命さえも…(恐)。

チャーミングすぎる男エツィオ チェッルーティの醸す、ヴィンテージの個性も余すことなく表現されている稀有な甘口ワイン、ソルの2009年が終売しましたので、2010年をリリースします!

彼が熟したと判断したタイミングで剪定し、枝がブドウ樹から切り離されブドウの房も宙ぶらりんになった状態で天日干ししたモスカートを圧搾、樽で3年以上の時間をかけてゆっくりと醸されたワインになります。屋根のない畑で天日干しするわけですから、当然のことながら風雨の危険に常に晒されていて、ヴィンテージによっては貴腐菌が付いたブドウがまあまあな割合でできたりします。そんなヴィンテージは、貴腐がしっかり付いた房とそれほど付かなかった房を分けて醸造するのですが、2010がまさにそんな年。アルコール度数的にはどちらも15%強で大差はないのですが、残糖は貴腐Ver.の方が多くなっています。とはいえ、貴腐由来の金属を思わせるような風味が甘味をきっちりマスキングしてくれていたりします。是非飲み比べてみてくださいね!辛口モスカート、フォル&リフォルも絶賛販売中です!

左:パッシート 右:パッシート・ボトリティス(貴腐)

文:太田久人
109 135 143 199 192 nuovo2018.07.03

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